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天才発明家

「一時的にだが私オージン・グレイヴォルフが銀牙騎士団騎士団長の名において、この場を取り仕切らせてもらう。いいですね?」


確認するように見回しながら問う。今のオージンさんに誰も逆らうような真似をせずに静かにしている。


ようやくオージンさん主導の元、話が進められることになった。なお、そこの公爵令嬢にほど遠い所長は正座を強要させられているが、反省しているようには見られない。

むしろ、釣られて正座しているアンリが公爵令嬢の分まで反省をしているようだ。


「では改めて、自己紹介含めて説明してもらおうか」

「は、はい! ボクはアンリと言います。家名はありませんが、その、女神に選ばれし勇者、です」

「それで、その勇者は何の目的があってこの国にやってきたんだ? 教会に頼まれて密入国しに来た、と言うわけでもないのだろう?」

「ええと、それには色々ありまして……」


言葉を濁してハッキリしない。

隠し事をする感じではなく、どちらかと言えば何から説明すればいいのか、言ってもいいことなのか迷っているように見て取れる。

大方俺がダンジョンマスターというのを言い淀んでいるのだろう。


「どうした? 何か言えない事情でもあるのか? ……殿下のことなら気にしなくても大丈夫だ。後で私から言っておこう」

「あー……多分それ、俺の方から言ったほうがいいな」

「む? そうなのか?」

「さっきは話の途中で邪魔されたけど、ぶっちゃけると俺はダンジョンマスターでアンリはそんな俺達と一緒に来たんだよ。それで、途中でジークと知り合って、半ば強引に協力することになった」

「は? 待て待て。殿下についてはわかった。しかし……うーむ……」


暴露した内容が内容なので、オージンさんは混乱をしているようだ。それでもジークについては理解を示している時点で色々察せる。


「ダンナ殿がダンジョンマスター? クゥ殿の番いではなかったのか? いや、そもそも勇者とダンジョンマスターが相容れるものなのか?」

「話せば長くなるが、まぁ説明すると――」


かくかくしかじかと、多少端折りながらも説明した。

説明している間も隣で辛そうに正座をしている所長は何も反応を示さないという事は、既に色々と聞き及んでいるというわけか。


「よ、よし。大体理解した。……つまり、君たちは手違いでこの国に来てしまったから、ファグ村に戻るため、殿下に協力しているというわけだな」

「簡単に言えばそうなるな」

「殿下については予想できるが、まさかこんな事態を招くとは……。やはり、あの時止めるべきであったか……ハア……」


オージンさんは思い返すようにため息をついている。考えることを放棄せず、何とか飲み込もうとするさまは苦労人の貫禄が滲み出ていた。


「では、次は所長の番です」

「え、ワタシモ? だいたいその人が言ったことぐらいしか聞いてないヨ?」

「……-初対面ですよね? せめて挨拶だけでもお願いします」

「モウ、仕方ないネ。ジークも隠しておきたいならちゃんとしてホシイ……~~ッ!」


ああ、急に立ち上がるから……。


「ナ、ナンノこれしき……。ワタシはニーベルゲン公爵家が誇る天才発明令嬢……ソウ、かの有名な天才発明令嬢リースヒルト・ツヴァイ・ニーベルゲンとはワタシの事ネ!」


足がしびれてまともに立ち上がることができてないにも関わらず、令嬢としての矜持なのか身悶えしながらも何とか口上を述べる。けど、天才発明令嬢とか言われても困る。なんて反応すればいいんだよ。


「どうやら驚いて言葉も出ないようネ!」

「いや、それ以前に発明令嬢って言われても知らないから」

「エッ!? ウソ! ジークから何も聞いてないノ!?」

「何も。……あっ、もしかしてジークが持ってた魔道具を作った張本人?」

「そうヨ! その天才発明令嬢ヨ! クフフ、アナタ達はジークの友人という事で、ワタシのことは特別にリースと呼んでもいいネ!」


一度も天才発明令嬢と聞いた覚えはないが、やはりというか愉快な人ではあったな。


「色々と説明不足ですよ……。補足として言っておきますと、この方はダンジョン研究を総括している責任者であり、ジークフリート殿下の正妻でもあります。私としては、何故この人がと思いますが……」


正妻? え、つまりジークの嫁ってことだよなソレ。……まさか、結婚していたのか。


「あれ? でもさっき名乗った時はニーベルゲンって名乗ってましたけど、ジークフリードさんと結婚しているなら、家名も変わているじゃないんですか?」

「いい質問です、アンリ殿。疑問に思うのも仕方ありませんが、今殿下には色々と問題を抱えておりまして、故合って婚姻はなされておりますが未だに正式には認められていないのです」

「ああ、そういや覇者に選ばれたからか。何か愚痴を言っていた気もするな」

「ええ、ソレが理由です。できれば公の場では口になさらないで下さい……」


もう馴れた感じで注意をしてくるが、ほとほと呆れているようだ。おそらくジークの性格からして、ほかにもこの秘密を暴露しているのだろう。


「さぁ、ワタシからはモウ何も言う事はないネ! ワンワンのダンチョーサン、速いところ終わりにしてジークにでもなんにでも後で当たるといいネ」

「わかりました。この件については殿下を問い詰めることにしましょう。一応最後に言っておきますが、責任者として報告書は忘れず提出してくださいね……」


終わりにしたいのはオージンさんも同じだろうか、もはやテンションは地に落ちている。それと比例するようにリースのテンションは上がり、


「ソレじゃあ、早速アナタ達について調べさせてチョーダイ!!」


再び俺たちのことを観察し始めるのだった。

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