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とりあえず何とかなった

ジークの金の眼が鋭く光る。

その眼には確信めいたものがあった。


「勇者といい、クンロウ族といい、貴様には不審な点が多い。……極めつけは教会の事を知らぬほどの無知。なぁ、ダンナよ。いったい何を隠している?」


鋭い眼光に威圧され続けるも、どことなく哀愁のような感情も含まれていて、寂しさが感じられる。


「何も言えぬか……。我を友と言ってくれた、それすらも嘘だったというのか?」

「ジーク……」


なんかスマン、それは半ば冗談だったんだ。

今更そんなこと言えるわけないし、どうするか……。


取引すると決めたからには協力関係は変わらないが、このまま黙っていても空気が悪くなる一方。ならば、一旦この場は嘘でやり過ごせばいいのだが……、それはダメだと直感が告げている。


今のジークにはその場の嘘が通用しない、かといって真実を打ち明けるにしても、ダンジョン攻略を目的としている以上、このまま言っていいのか悩みどころだ。


待たせれば待たせるほど、ジークからの重圧はより強くなっていく。見兼ねたクゥリルが前に出て庇おうとするが、俺はそれを止めさせて拒む。


「旦那様?」

「……はぁ。わかった、正直に言うよ」

「真か?」

「ああ。できれば言いたくはなかったんだが……。まぁ、友にそこまで言われればな」


冗談だったとはいえ、この年にもなってできた友だ。俺も応えてやるのが筋だろう。


「そうか!」


先ほどまで感じられた哀愁感が消え去り、今度は歓喜まじりの威圧となる。いや、威圧は続けたままなのかよ。

妙に生暖かい威圧を受けながらも、渋々と答える。


「俺はこの世界の人間じゃない。教会の言うところの、人類の敵……ダンジョンマスターが俺の正体だ」

「ダンジョンマスター、だと!? ……嘘、ではないようだな。我はてっきり、太古の時代から蘇った古代人かと思ってしまったぞ」

「はぁ? そっちの方が無理あるだろ……。 むしろ古代人って何だよ」

「知らぬのか? 国ができるより以前、古から存在する遺跡といのが世界中にあるのだぞ。そこには今ある文明より高度なものが数多く存在しており、中には生き物が培養されていたと思われる遺跡もあってな。まだ発見はされていないが、古代人がいても何らおかしくないぞ」


古代遺跡はあるのか。あー、あれか。多分それ、管理者(色々やらかしたヤツ)が残したやつだな。世界の発端を聞いた身からすると正体が分かるが、古代人とか行きつく先が突拍子もないなぁ。でも、あながち間違ってもいないし、そのロマン心は何となく理解できる。


「待て、そうなると何故勇者と共にしている? あれは明確にダンジョンを消す為の者であろう。それに、ダンナのダンジョンはどこにあるのだ? ダンジョンマスターとダンジョンは切っても切り離せない存在だろうに、今ここにいても問題ないのか?」


一転変わって質問攻め。別に答えてもいいが、その前に威圧を何とかしてほしい。


「待て待て。答えるから、まずはコレを解いてくれ。息苦しくてたまったもんじゃない」

「む? ああ、すまない。どうやら興奮していたようだ」


ジークが視線を外すと、威圧されていた空気が消えてなくなる。


「ふむ。覇者の影響は受けぬが、こちらの方は効くのだな。ダンジョンマスターとは言え、生き物と言うわけか。なるほど、なるほど」

「覇者とは違うやつなのか、一体何なんだ?」

「我と目を合わせ続ければこうなるのだ。まぁ、龍人特有のものだ。気にするな」


龍人? 見た目は普通の人だけど、実は違ったのか。

あっ、そうか、思い出した。何か昔にも似た感じたのを味わった覚えがあったけど、後輩君のダンジョンにいたドラゴンの竜の咆哮(ドラゴンシャウト)だ。つまり、ジークは人の姿をしたドラゴンっていうことだったんだな。


「何だ? そんなにジロジロ見つめられては流石に恥ずかしいぞ」

「いや、龍人って言うからには、ツノとかウロコとかあるのかなって……」

「もしかして我を只人と思っていたのか? 龍人と言っても、今はもう血も薄れ、見た目も只人と変わらぬから仕方のないことか。だからそんなに見つめても何もありはせんぞ」


……損した気分だ。無駄にマッチョなのが余計にそう思う。


「それよりも。早く教えぬか、我と貴様の仲なのであろう!」

「はいはい。じゃあ、勇者と知り合ってここに来る羽目になった経緯をまとめて説明するよ……」


それから、のぼせる寸前まで答え続けた。

結局ダンジョンマスターだからってなんてことはなく、敵対する意思がなければ好きだけいてもいいとか、むしろこの国に永住しろとか言って、今まで以上に気安く接してくる。


浴場から上がってからも質問が続くものだから、嫉妬したクゥリルが間に入って威嚇したり、それを見たアンリが慌てて止めようとして逆に無礼なことをしていたが、ジークは全て笑って許していた。


多分この状況で一番大変だったのは、屋敷の主である、ここの領主だろう。

ジークを前にした時も貴族然とした対応を崩さなかったのもあるけど、何より奴隷であるはずの俺や、身元もわからないようなクゥリルにも丁寧に接していた。


会話こそしなかったが、普通の貴族ならジークと対等に話しているだけで諫言の一つや二つは飛んでくると思う。当の本人が何も言わないってのもあるが、それを黙って見てるだけでもヒヤヒヤしていたはずだ。


今日も色々あった……。

無意味にダンジョンに向かっては帰り、クゥリルに再会できたと思えば騒動が起きてるし、兵がやって来るわ豪邸に招かれるわで慌ただしくなる。ようやく癒しの時間が訪れたと思えば、また一騒動。


風呂に入ってスッキリしたはずなのに全然疲れが取れてない。

これは寝る前にも撫でて癒されるしかないな。

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