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ファグ村、ダンジョン攻略完了

本日で書き溜め分終了。

明日から不定期更新となります。

『は……? 嘘っす……。なんで倒されるんすか、ありえねぇっすよ……』

「これで出てきてくれると手間が省けていいんだが、まぁ出てこないよね……さて、どこにいるかな」

「たぶん向こうにいる」


指し示したのは大部屋の奥。ドラゴンの陰に隠れていたがその先には通路が伸びていた。邪魔なドラゴンの死体はアイテムバッグへと入れ、奥の通路へと進む。


たどり着いた先は転生しはじめに俺がいた部屋と同じようなところ。部屋の隅にはダンジョンコアを抱えて蹲っている男がいた。


「ヒッ! く、来るな! 僕はまだ死にたくないっす……!」

「いや、だから話をしに来ただけで、別に殺そうと思ってないよ」

「嘘っす! どうせ油断したところを狙ってコレを壊すつもりっす!」


異様に怖がっているが、そこまで怖がられる理由がわからない。たしかにあのドラゴンを倒したのは脅威だと思うが、話をしてる時点で聞く耳を持ってもいいと思う。


「僕は知っているんすよ、冒険者が汚いことを! 僕らダンジョンマスターをだまして攻略するやつがいるっすって!」


一体誰から何を聞いたんだ。俺の時はそんなことを教えてくれる存在なんていなかったんだぞ。そもそも正面突破で攻略できた時点で騙す必要性がないとか考えてないのだろうか。


「どうする、旦那様?」

「落ち着いてもらうのが一番だけど……ってクゥ、何してるの!?」


クゥリルがいきなり俺の前へ出て、ダンジョンマスターに向かっていく。それと同時に――パパパパパパッっと連続して鳴る発砲音。

いつの間に武器を出したのか、クゥリルが前に出てくれなければ撃たれていたのは俺だった。


「ヒィ、化け物! 受け止めるなんてありえないっす! 殺されるっす!」

「最後まで諦めないのは見どころある。でも旦那様に手を出したからには容赦しない……」


次の瞬間にはスパンと相手の持っていた銃を真っ二つに切り落とし、今にも首を落としてしまいそうな威圧を与えている。


「待った待った! 落ち着いてクゥ! あーもう、そっちも殺さないから落ち着いて! なんで同じダンジョンマスターがダンジョンマスターを殺さなきゃならないの……」

「……え、今なんて言ったんすか?」

「だから、ダンジョンマスター同士なんだから、殺す意味がないってこと。ただ話をしに来たって初めから言ってるでしょ」


そう言うと、途端に気が抜けたようにポカーンとし出した。


「……名前はなんていうんっすか?」

「名前はない。ダンジョンマスターならわかるでしょ、名前がなくなるってこと。……まぁ前世は日本人ではあったし、見た感じからキミも同じ日本人でしょ?」

「本物っす……、本物のお仲間っす!! 初めて会えたっす、光栄っす!」


泣いたり驚いたり喜んだりと色々と忙しいやつだな、クゥリルも何か残念なものを見るような目で見出したよ。


「うう、この2年ずっと一人でやってきたっすけどこんなこともあるんすね!」

「2年かぁ……俺は5年だから先輩ってことになるな、後輩君」

「ご、5年も……。スゴイっす、もうベテランじゃないっすか! じゃあ僕は先輩って呼ぶっすね!」


うーん、なんか喧しそうなヤツだな。でもダンジョンの罠や出てくるモンスターとかは王道で趣味は合いそうだからいいか。

聞きたいこともあるがそれは後で聞くとして、まずは今後のことについて話を進めよう。


「さて、後輩君。俺がここに来た理由って何かわかるかい?」

「え……? あー、もしかしてこのあたりって先輩の縄張りだったりするんすか? だとしたら申し訳ないっす」

「まぁ縄張りと言えば縄張りになるのかな。でもそういうことで来たわけじゃないよ」

「じゃあ何なんすか?」

「単純にダンジョンがあるなら一度は入ってみたかった! それともしかしたら同じ日本人がいるとと思ったから来た!」


あれ、急に黙ったな。でも俺の時はダンジョン作れなかったし、自分で体験してみたいと思うのは普通だよね? あれ、でもダンジョンマスターがダンジョン攻略するのは普通じゃない? そもそもダンジョン作ってない時点で間違えてる?


「そ、そうなんすね……、自分のダンジョンだけじゃなく他のダンジョンまで手を出すなんてスゴイっすねー……」

「…………冗談は置いといて、本題に入ろうか。後輩君はこれからどうするつもりで動いていたんだい?」

「本当に冗談だったんすか? まぁいいっす。もう2年も経ったっすからそろそろ外に出ようと思って、モンスターを使い辺りを探ってたっす。……と、特に何かをしようとかは思ってないっす、だからそんな睨まないでほしいっす!」


何かを感じ取ったのか、クゥリルはまた睨みを利かせてる。後輩君もおびえ切って、「ヒィー」と漏らしているし、これでは落ち着て話をするのもままならない。どうにかするためにもクゥリルをそばに寄せてなだめる。


「どうどう、撫でてあげるから威圧しないで上げて。……それで本音は?」

「たくさんポイント稼ぎたかったっす! 女の子がいたら話し相手になってほしかったっす! こんなかわいい子をつれてるなんて先輩はずるいっす、羨ましいっす!」

「うんうん、欲望に素直でよろしい。だけどクゥは俺の番い……嫁だから駄目だぞー」

「うぇ!?」


まさか信じられないと驚愕の表情をしてパクパクと口を開け閉めしては、俺とクゥリルを交互に見出す。普通のオッサンがこんな美少女とくっついて何が悪い。


「まぁそれは置いといて、俺から一つ提案だ……、もしその気があるならうちの村に来ない?」

「……どういう意味っすか?」

「そのままの意味だよ。今ダンジョン運営じゃなくてこの近くにある村とで暮らしてて、ダンジョンの力で発展させている途中なんだ。そこで一緒に協力してもらえないかなと思ってる。……もちろん協力してくれればポイントも入るし、話し相手もできるよ」

「マジっすか!? やるっす、もちろんやるっす!」


舞い上がって喜びに露わにしている。なんか懐かしいな……前世で部下できた時も昼飯奢ってやるって言えばやる気だして頑張ってたな。まぁブラック企業だったからすぐにそんな浮かれた考えはなくなって濁った眼で受け答えするだけになったけど……。


「……大丈夫なの? 旦那様のことは信じてるけど少し心配だよ」


遠い眼で昔を思い出していたら、クゥリルに小声で耳打ちされた。


「安心してくれ、クゥ。俺の経験上この手のタイプは下手な博打より安定を求めるタイプだ。……まぁ何かがあったらその時はクゥに頼るしかないけど多分大丈夫だ」

「むぅ、わかった。じゃあわたしは村のみんなを説得すればいいんだね」

「頼んだよ、クゥ」


何も言わずともわかってくれるクゥリルにご褒美としてお気に入りのところ(耳の付け根)をコリコリっと撫でてあげる。途中後輩君が、「先輩、見せつけるのはいただけないっすよ! あー僕もこんなかわいい嫁が欲しいっすー!」と叫んでいたが、とりあえず無視して撫で続けた。

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