表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
普通の高校はどこですか!?  作者: たてみん
第5話:[魔王降臨ルート]そして普通は書き換えられた
99/103

98 マイマスター

翌朝。

俺たちは揃って食堂へと来ていた。

この島の住人のアルファ達も一緒に朝食を囲む。


「こういうお城の食堂って言ったら無駄に長いテーブルの両端に座るイメージだけど違うんだね」

「無駄……あれは晩餐で多くの来賓があった場合にはちゃんと全部使われるんだよ。

今使ってるテーブルだって俺達10人が余裕を持って座れるんだから十分広いしな」

「それもそっか」


そう言いながら南野さんがサラダにフォークを突き刺した。

朝食のラインナップは、サラダと果物、目玉焼き、白パン、スープとどちらかというと西洋の食事に近いものだった。

まぁ、野菜と果物はこちらにあるものとは若干違うみたいだけど。



「どれもこの島で取れる食材なのですが、お口に合いますか?」

「ええ、実に美味しいですね」

「どことなく鞍馬くんの家の野菜に似てる気がする」

「それは恐らく魔力含有量のせいだな」

「ほう?」


セバースさんの耳がピクリと動いた。


「鞍馬様はずいぶんと魔法の造詣が深いご様子。

こちらの世界は魔法技術についてはそれほど発展していないようですが、どなたに学ばれたのですか?」

「誰にと聞かれたら、時の魔女にかな」

「時の魔女!?ほんとうに居たのか。てっきり空想上の人物だとばかり思ってたぜ」

「実際には放浪癖持ちかつ方向音痴なだけなんだけどね」


時の魔女というのは、向こうの世界でも10指に入ると言われる魔法使いだ。

その逸話には、一瞬にして死の海を干上がらせた(海中に転移して驚いて魔法を発動させた)とか、砂漠を一夜にして緑の大地にした(暑い喉乾いたと言って地殻変動を起こした)などなど幾つもある。

しかしその所在を知る人は誰も居らず、彼女が通った後を追うように現れては後始末をして謝っていく少年(昔の俺)を見て魔女の存在が囁かれた。

懐かしいけどあまり思い出したくはないな。


「さて、この後は自由行動で良いかなって思ってるんだけど、みんなはどうする?」

「あ、それならこの島の観光がしたい!」

「いいね。街並みもこっちとは違ってたし、森にも行ってみたいな」

「それなら今日は森に行かれるのが良いでしょう。明日になれば街の皆も到着するでしょうしね。

レア殿。皆さんを案内して頂いてもよろしいですかな?」

「良いわよ。私もこっちの世界の話を聞きたかったし、食べ終わったら早速行きましょう」

「はーい」

「鞍馬くんは?」

「俺は今後の事で話があるからここに残るよ。明日は一緒に回れるんじゃないかな」

「そっか。じゃあ、珍しい動物とか居たら写真撮ってくるね」


そうして皆は食事を終えると、連れ立って森に向かっていった。

残ったのは、アルファとセバースさん、それとルミナさんと央山先生か。


「先生は行かなくて良かったんですか?」

「向こうはレアさんが引率を引き受けてくださるようですし、これでも鞍馬くんの先生ですからね。

生徒が頑張ってるのに遊び呆けてる訳にはいかないわ。

もちろん、席を外した方が良いならそうするけど」

「そうですね。聞かれて困ることは無いですが、口外無用でお願いします」


俺たちは応接室に場所を移してお茶を入れつつ、話し合いを始めた。


「さて。まずは俺の要請に応じてくれてありがとう」

「いえいえ。我らは古き盟約に従ったまでのこと」

「それでもさ。本来なら次元門を開けた後、俺一人でそっちに行って皆を説得する予定だったから助かった」

「そう言って頂けると、無理をしてこちらへと渡ってきた甲斐があるというものです」

「……なぁ。それよりもさ。鞍馬はマスターなのか?」


俺とセバースさんが呑気に挨拶をしていたのに耐えきれなくなったアルファが上目遣いで割り込んでくる。

まぁ、彼の性格から言って本当は昨日一番にその話がしたかったのをずっと我慢してたんだろう。

むしろ良く今まで我慢したとほめるべきところだな。

俺はアルファの問いかけに曖昧な笑みを浮かべた。


「それは難しい所なんだよ。そうとも言えるし違うともいえる」

「?どういうことだ?」

「この島と二人を生み出したのは、前世の俺だ。

そっちの世界での俺は確かに死んで、別の世界で別の存在として生まれ変わった。

まぁ、記憶とか全部あるし魂レベルで言えば同じ存在だと言えなくもない。

でも完全に同じってわけでもないんだ。

その証拠に二人に最高優先順位でお願いは出来るけど、命令は出来ないしな」


レアさんは別だけど、それ以外のアルファ、セバースさん他、今この島に今残っているのは昔の俺が造ったホムンクルスだ。

だから創造主たる当時の俺の命令であれば彼らは聞かざるを得ない。

しかし、実際にはそこまでの強制力は発揮できなさそうなので、やはり今の俺はマスターではないということなのだろう。

だけど俺の考えを聞いてアルファ達は笑い出した。


「はははっ。やっぱりマスターはマスターだね」

「『これが最初で最後の命令だ。これ以降、誰の命令にも従う必要はない。お前たちはお前達自身の意思に基づき行動せよ』

私たちが自我に目覚めた後、最初にマスターに言い渡された命令です。

それ以降、私たちはマスターのお願いを聞いて参りました。それはこれからも同じです」


あー、そういえばそんなことを言った記憶があるな。

懐かしい。


「そうだよな。ならやりたいことをやるか」

「そうですな」


顔を見合わせてアルファとセバースさんは頷きあうとおもむろに立ち上がった。

そして俺のすぐ前に来て膝をついた。


「「お帰りなさいませ。マイマスター」」


そう言って満面の笑みを浮かべるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ