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普通の高校はどこですか!?  作者: たてみん
第5話:[魔王降臨ルート]そして普通は書き換えられた
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96 天空都市へようこそ

ドラゴンに咥えられた籠は俺たちを載せて優雅に飛んでいく。

上を見上げて気嚢があれば気球で遊覧飛行している心地だったろう。

現に今も籠の周りには風よけの障壁が張られていて実に快適な乗り心地だ。

そうしていると籠が天空の島よりも高い位置へとやってきた。


「あ、島の様子が見えてきたよ!」

「ホントだわ。綺麗な街並みね。あの奥のはお城かしら」

「建築様式はヨーロッパに近いみたい。街の明かりは見えないわね。みんな寝ているのかしら」

「街の奥に森に丘までありますよ。薄っすら光っていて幻想的な光景ですね」


島の中央から若干逸れた場所に城もしくは宮殿と思われる建物があり、その正面に広場と噴水、更にその周囲に石造りの街並みが広がっている。

ベルサイユ宮殿とかをイメージすると、雰囲気は近いのかもしれないな。

時間的にはすでに深夜なので街の中に人の姿は見当たらない。

明かりがついているのは宮殿と噴水のみだ。噴水は恐らく俺たちが目印にしやすいようにライトアップしてくれているのだろう。

街の反対側。そちらには森が広がっている。

その中央は他よりも高くなっていて丘と勘違いされたようだが実際には巨大な木が枝を伸ばしているだけだ。

その周囲にある泉からの光で森全体が照らされている。

どれもこちらの世界ではお目にかかれないものばかりだな。

そしてドラゴンは宮殿前の広場に着陸すると静かに籠を地面に置いた。

俺たちが籠から降りて辺りを見渡していると、役目は済んだとばかりにドラゴンは飛び去っていった。


「送ってくれてありがとう~。……行っちゃった」

「忙しかったのかな?」

「時間が時間だし、早く帰って寝たかっただけかも」

「まさかね」


そうして飛び去ったドラゴンを見送っていたら、宮殿から誰かがこちらへとやってきた。

びしっとした執事服にモノクル眼鏡に白髪の紳士。まさにザ・執事といった感じの人だ。


『ようこそいらっしゃいました。異界の方々』


そう言って恭しく首を垂れる。

あー、このまま言葉が通じないのは不便だな。

なので俺はアイテム空間から適当な魔石を取り出してサッと加工した後、執事に投げ渡した。

更に幾つか出して皆にも配る。


「これは……」

「翻訳の魔道具。それを持っていれば聞こえてくる言葉を自動で翻訳してくれるはずさ」

「それは大変助かります。では改めまして。

ようこそ。天空都市クルムへ。

私はこのクルム宮殿の執事長をしております、セバースと申します」

「クルム宮殿!? それってまさか……」


全員が一斉に俺のほうを向くが、俺は素知らぬ顔でやり過ごした。


「ささっ、皆様。主がお待ちでございます。

お疲れのところ恐縮ですが、どうぞこちらへ」


そう言って宮殿へと案内してくれるセバースさんに付いていきながら、気になったことを訪ねることにした。


「ところで、街に人が居ないように感じるのですが、皆さんどちらへ?」

「よくお気づきになられましたね。

今現在、この街には宮殿に住んでいるごく少数しかおりません。

この次元の穴、次元門ですか。これが安全かどうかが定かではありませんでしたからね。

街の皆様は一度避難して頂いております。

我々であれば多少危険があっても十分対処出来ますからね。

今回で大した危険がないことが確認できましたので、明日の朝には飛空艇に乗ってこちらへと渡ってくるでしょう」

「なるほど。そうだったんですね」


まぁそれもそうか。

向こうの世界としても次元門なんて初めてだろうし。

あらかじめ連絡を送ってなければ危険を冒して通り抜けようなんてすぐには思わないよな。


宮殿の中に入り、奥のひときわ大きな両扉の前に立ったセバースさんはコンコンっとノックをすると、特に返事を待たず、扉を奥へと押し開いた。


「では皆様。どうぞ。奥で主がお待ちしておりますので」


そう言って一礼したセバースさんは、静かに横の通路へと消えていった。

って、俺たちが入るのを見届けないんだな。まぁいいけど。


「じゃあ行こうか」

「「はい」」


俺はみんなに一声掛けてから、半開きになっていた扉を押して部屋の中に入った。

入った部屋は、曰く謁見の間なのだろう。かなり広い。

明かりは数本の燭台に灯る蝋燭のみなので薄暗かった。

そして部屋の奥に大きめの椅子があり、そこに大柄な男性が座っていて、更に両サイドに男女が1人ずつ立っている。

表情は残念ながら椅子の後ろの燭台が逆行になっていて見えない。

その男性がおもむろに立ち上がった。


「よくぞここまで辿り着いた、勇者よ。

我は魔王クルマルファである!!」

「「!?」」


魔王の呼び名を聞いて、全員の顔に緊張が走った。

……俺一人を除いて。



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