92 種明かし
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
m(_ _)m
とどめを刺された四聖獣の肉体は光の粒子となって消えていった。
よしこれでやりたい工程がだいぶ進んだ、と内心喜んでいたら、サンシャイン達、特に先生の表情が芳しくない。
「先生、なにか心配事ですか?」
「心配事というか、ねぇ。
リュージュ君。私の勘違いでなければ、四聖獣ってかなり高位の存在なんじゃないかしら」
「ええ、そうですね」
仮にも各属性を司る精霊の王と言っても過言ではない存在だ。
位階で言えば上から数えた方が早いだろう。
「そんな存在が、いくらリュージュ君のお陰でパワーアップしたとはいえ、こんなに簡単に倒せてしまっていいのかしら」
「あぁ、そのことですか」
何のことはない。手ごたえがなさ過ぎたのか。
俺は特に隠すことでもないので種明かしをすることにした。
「みんなが相手したのは、四聖獣ではあるんですが、その中でも最弱の状態でしたから。
分かりやすく例えると、生まれたての赤ん坊、始めたてで経験値ゼロのど新人、空腹で満足に跳べないウサギ、そんな感じです。
本来なら1体1体がコロと同等かそれ以上の実力を有してますから、皆の実力では何もできずに瞬殺です」
実際、四聖獣が本来の実力を発揮できたなら。
青龍は水弾を放つどころか大津波を発生させてこの島を転覆させようとしただろうし、周囲を飛び回るレインを手で叩き落とそうなんて馬鹿な動作はしなかったはずだ。
玄武だって穴に落ちるどころか海に落ちたって動じることは無いし、何なら海底を隆起させて足場にするくらいの芸当はやってのける。
白虎だって朱雀だって、あの程度の攻撃では蚊に刺されたくらいにしか感じなかっただろう。
「俺としてももう少し頑張ってくれた方がこの後が楽だったんですけど」
「この後?そういえばリュージュ君は何をやろうとしているのか、そろそろ教えて貰ってもいいと思うんだけど?」
「そうですね。うん、皆にも手伝ってもらってますし」
見回せば、みんなが期待と不安が入り混じった目で俺を見ていた。
俺はこほんと一つ咳をしてから説明を始めた。
「今俺がやっていることを一言で表すと、異世界との交流拠点を作っているんです」
「交流拠点?」
「そう。魔神の件でも認知されている通り、この世界とは異なる世界が存在してて、そっちでは魔法は一般常識です。
まずはその異世界とこっちの世界をゲートで繋げる。
それによって向こうに住んでいる人達を気兼ねなく、とまでは行かないまでも、呼ぶことが出来るようになります。
ただ、最初は言葉も通じなければ文化も違うから色々と問題が起きるでしょう。
そこでここが活きてきます。
俺はこの後この場所に人工の島を作って、そこで二つの世界がお互いを知るための拠点とする予定です。
形としては学園都市みたいな感じですね。
そうすればこちらの世界としては魔法の知識を得ることが出来るし、向こうの世界はこちらの発達した科学や技術を学ぶことが出来る。
あと、その副産物として世界中で発生していた魔物の被害も抑えられるし、俺たちに向いていた監視の目も逸らすことが出来る。
まさに一石二鳥でしょ」
「はぁ」
皆から呆れたようなため息が出る。
「なんか、物凄く簡単に言ってくれてるけど、そんなことが可能なの?」
「正直、簡単じゃないよ。昔は魔神クラスでなんとか出来たような芸当だし。
だから今回こうして皆に手伝ってもらったんだ」
単純に空間に穴をあけて向こうと繋げるだけなら話はもっと単純だった。
でも今回は穴をあけた後に安定して行き来が出来ないといけない。
その為には周囲の魔素をろ過して属性ごとに分ける必要がある。
そこで四聖獣の登場と相成った訳だ。
「四聖獣を呼び出して倒すことで、周囲の魔素がだいぶ結晶化された。
後は黄龍の力を利用して世界を繋げれば第一ステップは完了だ。
流石にあれの相手は皆だと厳しいからそこで見てて」
そう言いながら俺はまるで散歩するかのように黄龍の元へと歩いていく。
『GRUUUU』
「またせたな。じゃあ始めようか」
『GRAAAッ』
黄龍の叫びによって天空から無数の雷が降り注ぐ。
耳をつんざく雷鳴が俺達の戦いのゴングとなった。