85 ほんの短い休憩
日本に帰ってきて、あっという間に1週間が過ぎた。
その間、夜に3回ほど魔物討伐にみんなで出動した以外何も起きず、強いて言えば監視の人員が増強されたくらいか。
今日は夏休みの間にある登校日だ。
昔はこの登校日に何の意味があるのか疑問だったけど、補習最終日の翌日。つまり補習を受けていた生徒の終業式と、付き合わされた先生を労う日を兼ねているらしい。
俺たちの担任の央山先生は担当外だったらしいけど、この後にある先生方の打ち上げに連れていかれた。
そして俺たちはいつものように部室に集まっていた。
「涼し~。やっぱ部室は落ち着くね~」
「うん、最近はどこに行っても監視の目があるからね」
「自宅の周りとかプライバシーにかかわる部分は鞍馬くんにお願いして排除してもらったけど、外を歩いているだけで複数の視線を受け続けるのは疲れるわね」
「このままじゃおちおちデートも出来ないわ」
「「誰と!?」」
そんな雑談をしながらまったりする。
こういうゆっくりした時間の使い方も学生の醍醐味だよな、なんて考えながらお茶を啜る。
「そういえば、休み明けから転入生、というか留学生が複数人来るらしいよ」
「それってやっぱり」
「うん、各国というか各組織からの調査員だろうね」
「えぇぇ~、そんなのが来たら校内まで居心地が悪くなるよ」
央山先生情報では、現時点で既に20人の留学生が来ることが確定していて、恐らく今後も増える見込みとのこと。
学校側としては、正規に申請されたものを無碍に断ることが出来ないらしく。実際には多額の寄付金があるなど大人の事情があるんだろう。
ただふと思うのは、そんなに大勢来るなら留学生だけで1クラス出来るな。
「留学生なんて1人2人なら珍しいイベントってことで楽しめるけど、多すぎるとちょっとな」
「鞍馬くんの場合、楽しいかどうかなんだね」
「まぁ大した実害があるとも思えないしな。
ただ予想できる未来としては、その全員が天文部に押しかけてくることになるだろう」
「わ、そうなると文系最大規模の部活動になるね!」
「天文部始まって以来の快挙ね」
「部費も申請し放題かしら」
とまぁ無駄に盛り上がってみたものの、絶対に騒動の種でしかないのは明らかだ。
「つまり、新学期が始まる前に対策を行っておく必要がある訳ね。
龍司の事だから何をするかはある程度考えているのでしょう?」
「はい。2つプランを考えています。
そのうちの規模が大きい方は皆にも手伝ってもらう予定です。幸い得意属性が分かれていますしね」
本当は全属性いてくれると尚良かったけど、先生含め5属性が揃っているので非常に助かる。
更にクラリスさんも呼べば6属性、残り1属性は俺が受け持てば行けるだろう。
「そういう訳で、新学期が始まる前に済ませたいから、来週にやってしまおうと思うんだけど、みんな予定は空いてる?」
「もちろん大丈夫よ」
「あ、それなら早めに宿題終われせておかないといけないよ。陽子ちゃん」
「うっ、確かにまだ半分以上残ってる」
「じゃあ、今週は鞍馬くんの家に集まって宿題を終わらせるということで」
「意義な~し」
と、口を挟む間もなく、俺の家で勉強会が決まっていた。
まぁ、みんなならよくうちに来てるし良いんだけど。ただ、
「俺は一足先に会場作りに行ってるから勉強会はテレビ電話で参加するよ」
「ん。じゃあ、龍司が居ない間に家の探索を進めとくわね」
「おーい」
まったく、このどうでもいい感じの会話が改めて平和な世界だなって感じる。
願わくばもう少し穏やかな日々が続くように一汗流してくるか。