82 夜の海には危険がいっぱい
いつもありがとうございます。
余裕が出てきたら小ネタ劇場も復活したい。
軽い夕食を摂った後、みんなで連れ立って海岸へとやってきた。
ちなみに残念ながら水着ではなく魔法少女姿だ。
新しい装備の試運転と調整の為なんだが、それが出来るのが工房地下に作った鍛錬場を除けば海岸もしくは海上しかこの近くにはない。
そしてついでに昼間の面倒ごとを早く終わらせるなら鍛錬場では都合が悪い。
「さて、それじゃあ新しい装備で模擬戦をしてみようか」
そう言って皆に振り替えると、そこにはなぜか水着姿の皆が居た。
「……どうして水着姿?」
「月明りに照らされた水着姿って魅力的に映るかなって思ってね」
「人魚姫に間違われるのを期待」
そう言ってポージングする先輩組。
ちなみにいつの間に水着に着替えたかと言えば、変身魔道具の新機能だ。
事前に登録することで魔法少女姿以外にも数パターンに着替えられるようにしておいた。
しかも収納している間にクリーニングまでされる便利機能付きだ。
かくいう俺はと言えば、みんなの水着姿をしっかり視界に収めつつ、海岸のはずれにある灯台を指さした。
「一応言っておくと、昼間の奴らがまだ監視してるからな」
「デバガメとは許せないわね」
「無断でしかもタダで覗き見とは許せない」
それじゃあお金払ったら良いんだろうか。
と馬鹿なことを言っている間に魔法少女の衣装に切り替えてしまった。
いや、残念とか思ってないから。
「……じゃあ仕切り直していこうか」
「リュージュ、残念そう」
「ごほっ。あーあー。えー今回のターゲットは……」
ゴォーーーーー!!
俺の言葉を遮るように上空に大型輸送機が飛来してきた。
さらに俺たちの真上に静止したかと思うと、後ろのハッチが開いて次々と何かを投下していく。
「もしかして爆弾!?」
「ううん、爆発はしてないし違うみたい」
落ちてきた全長2メートル超の金属の塊は、ギシギシと音を立てつつ、その形状を変えた。
その姿はまさに、
「ロボットだ」
「良かったねシリカ。希望してたものが来たよ」
「うーん、可愛くないから没ね」
構造的に無人であろうその機械は、動力を魔石に頼っているらしく、チカチカと魔力の光を発しながら俺たちを取り囲んだ。
さらにそこから、今度は背中にブースターパックを取り付けた人達が飛行してロボットたちの後ろへと降り立った。
フルフェイス+全身をガチガチのメタルスーツで包んでいるけど、体形からみて全員女性のようだ。
その中の一人がヘルメットを外しながらロボットの間を抜けてきた。
出てきたのはプラチナブロンドのヨーロッパ風の美女だった。
「こんばんは。驚かせてしまったかしら。突然ごめんなさいね。
時間があまりないものだから急いでしまったわ。
私たちは国連対モンスター対策班よ。
単刀直入に言うと私たちはあなたたちをスカウトに来たの。
自覚は無いようだけど、大した武装もなく魔将級の魔物を撃退出来る魔力に加え、実戦経験も豊富。
さらに突然の襲撃にも臆することのない気概の強さ。どれをとってもあなた達の力は既にップクラスよ。
その力は世界を救うために使うべきだわ。そうでしょう」
「は、はぁ」
突然出てきて熱弁をふるう彼女の勢いに付いていけず、ため息のような返事を返す。
「あの、その話とこの物々しいロボットたちは何か関係があるのですか?」
「もちろんよ。
スカウトするにあたって、しっかりあなた達のメリットも理解してほしいし、やはり言葉だけでは私たちの実力は伝わらないでしょう。
だから私たちの技術力の一端を知ってもらおうと思って、最新鋭の魔導機を連れてきたの。
私たちが今着ているスーツだって、あなた方が着ている衣装よりも格段に性能は上だわ。
あなた方の実力と、私たちのバックアップ体制があればより強大な魔物、それこそ魔王級だって相手取れるようになるわ」
「魔王級ねぇ」
そういえば昼間の連中も俺の事を魔王の幹部だとか言ってたし、この世界はよっぽど魔王を渇望しているんだな。
ただ実際問題として魔王もピンキリなんだけど。
前の世界だと、実戦派の魔王は確かに強かったけど、内政派の魔王は軍隊としては強大なものを作り上げていたけど、本人はそんなでもなかった。
まぁ一番の問題はこの木偶の坊じゃあ、盾にしかならない気がするんだけど。
そう思いながら近くの一体をコンコンとノックしてみる。
バシュッ
「あっ」
嫌な音がしたと思ったら、とたんに機体の魔力光が消えて停止してしまった。
もしかして壊れたのか?あれで?
そう思ってオロオロしてたらキッと鋭い殺気が飛んできた。
「やっぱり。あなたが魔王だったのね!!」
いや、違うからね。
当て馬その2。
初期の魔法少女服は確かに貧弱でしたが、改造された今となっては圧倒的な性能を持っているので、あの言い分は間違いだったりします。