81 敵を差し置いて進化します
いつもありがとうございます。
俺は部屋の中に入ると、まずぐるっと周りながら装置に故障がないかチェックしていく。
と言っても、今回使うのは初歩的なサポート機能だけだ。
だから外壁が壊れてなくて中央の作業台に傷が無ければ十分だ。
「……よし、問題ないな。
じゃあみんな。魔法少女に変身してもらっていいか?
ついでだし、クラリスさんのもメンテナンスしてしまいましょう」
「「はーい」」
「わかりました」
魔道具を取り出して変身する皆を眺める。
うーん、この変身も時間が掛かりすぎだよな。
もしものピンチに展開するならコンマ1秒を切りたいものだ。
「じゃあまずはサンシャインから行こうか」
「やった!」
「中央の台の上に立って」
「うんっ!」
はしゃぐサンシャインが円形に作られた台の上に立つのを見て、俺は装置を起動する。
ブンッと小さな振動音を立てながら台座から立ち上った光がサンシャインを包み込む。
それを見て更にテンションが上がるサンシャインだけど。
「わぁなにこれ。って、体が動かないんだけど!?」
「空間を魔力体で満たしたから、固めのスープの中に浸かっているようなものだな」
「えっ、それじゃ私これから料理されちゃうの?」
「いや、スープはモノの例えだから。
特に息苦しいとかはないと思うからそのまま動かずに立ってて」
「う、うん」
俺はサンシャインの様子を伺いながら手元のコンソールを操作していく。
まずは衣装の素材の更新だな。普通の繊維から魔力糸へと変換していく。これをするだけでも魔力の伝導効率が数倍に上がるはずだ。
続いて各種付与を行っていく。自動修復とかもグレードアップさせて、物理魔法防御の障壁を自動展開できるようにしておくか。
あとは折角だからデザインも変更してバージョンアップした感を出しておこう。
更に今後の事を考えて新機能を追加する。
ここまでにかかった時間は約3分。
魔力体の光を消して出てきたサンシャインを見て皆からため息が漏れる。
「……かっこいいです」
「見た目もそうだけど、性能も過ごそうね。
でもこういうバージョンアップって露出度が上がることが多いとおもったんだけど、残念ね」
「ネオ・サンシャイン、いや、サンシャインMkIIかな(ぼそ)」
「何を期待してるんですか」
みんな思い思いに言う感想を聞いた感じ、それなりに好感触かな。
ただ、シリカのネーミングはどうかと思う。ロボットじゃないんだし。
「さ、どんどん行こう。次はレイン行こうか」
「は、はい。よろしくお願いします」
そうして全員の衣装のバージョンをアップさせた。
続いて武器だけど、これはみんなの意見を取り入れた方が良いだろうな。
「さて、武器に関してはリクエストあるか?」
「はいはい!わたし、強敵を一撃必殺で倒せるのが良い」
「なるほど。サンシャインには自爆機能を付ける、と」
「ちょ、なんでそうなるの!?」
「だってなぁ」
周りに視線を向けると皆うんうんと同意してくれる。
サンシャインにそんな武器を持たせたら、問答無用で敵陣に特攻してしまいそうだ。
「レインは何かあるか?」
「私は、今のスピードを活かせるものだと嬉しいです」
「なるほどね」
なら武装が大きくなったり重くなったりしない方が良いだろうな。
なおかつレインの反応の速さを考えればあれがありか。
「私は弓は嫌いじゃないんだけど、どうしても射ってから当たるまでのタイムラグを何とかしたいわね。
そういう意味では先日の大会の銃器はいいなって思ったわ」
「ウィンディの弓か。速度が上がると今までみたいに曲射が難しくなるけど大丈夫か?」
「難しいってことは練習すれば出来るのでしょう?なら何とかするわ」
であれば、弓に光や時属性の魔力を付与するか。
更に他の属性も加えれば矢の強化にも良いだろう。
「で、シリカは機械化と」
「そう、流石リュージュ。よく分かってる」
「まずは噴射装置とロケットパンチで良いですか?」
「あとは変形合体もよろしく」
「合体って誰と!?」
俺とシリカの冗談にたまらずサンシャインが突っ込みを入れた。
「冗談。巨大ロボットで手を打つわ」
うーん、魔法少女に巨大ロボットか。
出来なくはないんだけど、ちょっと目立つし盛り込みすぎだな。
そんな感じでみんなの意見を聞きながら武装の改造を行っているとあっという間に夕方になるのだった。
こういう強化って強敵に当たって敗走した後にありそうなものですが、気が付けば彼女らを倒せる敵を出そうと思ったら、大災害になるという。




