78 後はこの世界の問題
書き溜めを放出中です。
今回の内容は、人によっては嫌悪感を覚えるかもです。
ご注意ください。
そこから先はこの世界の歴史として残っているものとそう大きく違いは無いだろう。
話し終えた俺は、この世界に来てから疑問に思っていたことを聞いてみることにした。
「ところで、俺は自分と魔神に関する記憶は弄ったけど、魔法の扱い方などはそのまま残っていたはずだ。
なのにどうしてこう、原始的な鍛錬方法しか残っていなかったり、扱い方が変則的になっているんだ?」
本来なら部室でやっていた様な基礎鍛錬が一般に普及していたはずなのだ。
それなのに、実際には瞑想が中心になってしまっていた。
あれでは自分の持っている魔力+α、多くても1割増しの魔力を扱えるようになるのが精々だろう。
それに対して、俺が普段からやっている鍛錬法であれば、良き師が居れば倍どころか10倍の魔力を扱えるようになっていたはずだ。
「それはその……」
口ごもるクリス。
その顔は困惑というよりも、羞恥の為に赤くなってるように見える。
「お父様の鍛錬法は確かに効果的なのですが、副作用が酷くて。
家族、それも同性の親子か姉妹、もしくは夫婦でしか行えないものでした。
そしてその鍛錬法を授かったのは、巫女と呼ばれる方々のみ。
……今にして思えば全員、お父様の子孫を残すために集められた方々だったのでしょうね。
その結果、一子相伝のような形になってしまい、広く一般的には伝えられなかったのです。
特に昔は魔法に精通している人も皆無でしたし、口頭で伝えても伝わりませんでしたから」
「あーなるほどな」
確かにあの鍛錬法は普通にやると肉体の交わり以上に心、魂と言っても過言ではないレベルで交わってしまうからな。
しっかりとマスターしていない人が教えると危険だったか。
「とすると、先日魔法少女大会で見た魔法と武器を混在させて使っていたのは」
「少しでも弱い魔法を補うための措置ですね。
本物の魔法や魔神の強さを知っている私たちに言わせれば、残念極まりないとしか言いようがありませんが。
それでも何とか日常で発生する魔物への対応は出来るようになったのですから、良かったのかもしれませんね」
言われてみれば。
俺が最初にこの世界に来た時のサンシャイン達の戦闘力を顧みれば、藁にも縋る思いで開発したのかもしれないな。
さて、これで俺から話すことは一通り済んだだろうか。
「お父様はこれからどうなさるお積りですか?」
「聞きたいことは聞けたし、クリス達にも会えたし。
のんびり出来るうちに極力高校生活を満喫しようと思っている」
「それは、そう遠くない内にのんびり出来ない事態になる、ということですか?」
「まあね」
あっけらかんと答える俺に対して、ほかのみんなの表情は暗い。
まぁそれもそうか。
みんなは今この世界がどういう状態になりつつあるかを知っているだろうし、今の俺の言葉からも確信を深めただろう。
ただ問題は、
「特異点の発生による第4次聖魔大戦の発生が先か、人どうしによる戦争が先か」
ここに来る途中にあったマフィアの抗争。
あれは恐らく魔法少女を兵器として欲した人たちだったのだろう。
そしてそれと同じことは世界中で起きている可能性が高い。
というか、間違いなく起きている。
なぜなら特異点の発生と魔法少女とは密接に関係があるからだ。
「もし。もし特異点が発生した場合、お父様はまた世界を救ってくださるのでしょうか」
「いや、そのつもりはないよ」
不安そうに聞くクリスに対して、俺は首を横に振った。
想定外の俺の回答に顔を青くするクリス。
「そんな!?なぜ、ですか?」
「んー、クリスなら、第2次聖魔大戦の特異点が発生した原因について予想が付いているんじゃないかい?」
「それは……もしかしたら、というものなら」
「多分、その予想は正解だ。
特異点を発生させるには強大な魔力が必要なんだけど、当時この世界にその魔力は普通にやったら集められないはずなんだ。
考え付く方法はただ一つ。
ある程度魔力を持った存在、つまり俺の血を受け継いだ人達を生贄にすることだ。
多分巫女と呼ばれた人たちの何割かは歴史から存在が消されているだろうね。その子孫たちも」
歴史の授業を思い出せば、軍事大国と呼ばれる国家を中心に特異点は発生していた。
多分人体実験とか色々やった結果、魔力が暴走したんだろう。
本来なら100年は安定した状態が続いて復興も捗っていたはずだ。
それを壊したのは欲に溺れた奴らだ。
「だからこの世界の特異点はもう、この世界の問題だ。
その報いはこの世界に生きる人たちが受けなくてはね」
俺のその言葉を聞いて、クリスはさみしそうに小さく頷くのだった。
金の卵を産む鶏を殺しても、金は得られないんですけどね。
非人道的な事をした奴らには相応の報いがあるのです。