71.旅にハプニングは付きものです 後編
今回は鞍馬が飛び出していってしまったので他者視点です。
思わず癖でさん付けしてしまいますね。
それもありかも小劇場
「はーはっはっはっ。今回から主人公交代よ!!」
マルサは慌ててエアロックを閉じると、窓から鞍馬の行方を追った。
「……どこ?飛行速度から考えて、この方向だと思うんだけど」
そう呟いた矢先、窓の外、すぐ目の前に人が浮いていた。
「鞍馬様!?まさか飛んで……」
窓の外の鞍馬はマルサに笑顔で手を振ると、反転し一瞬にして機体後方へと消えていった。
あまりの事に座り込むマルサを見つけたサンシャイン達が慌ててマルサの元に駆けつけた。
「マルサさん。何かあったんですか?」
「ああ、皆様。いえ、大丈夫です。少々信じられないものを見てしまっただけなので」
「信じられないもの?」
その言葉にピンと来たのか、シリカは辺りを見回して鞍馬が居ないことに気が付いた。
「マルサさん、龍司はどこですか?」
「それがその……彼は先ほど襲撃してきた魔物を放置できないと言って外に……」
それを聞いてサンシャイン達に理解の色が浮かぶ。
全員が「彼ならやりそう」という共通の解に至っていた。
「マルサさん。彼なら大丈夫ですよ」
「そうですよ。あの人が魔物にやられるのを想像できないですし」
「むしろさっきエンジンが止まったって聞いて『なら代わりに俺が飛ばします』って言うのかと思ったくらいだし」
「あ、それ私も思った」
「鞍馬くんなら出来そうですよね」
そう言って笑い合う少女達。
その姿からは今が非常事態だという事を忘れてしまいそうになる。
そんな彼女らを央山先生改めクロノスが引率していく。
「はいはい、みんな。時間が無いわよ。
こっちへいらっしゃい」
「「はーい」」
そして副長が準備した非常ケーブルを、まずはサンシャインとレインがそれぞれ持つ。
軽く目を瞑りながら体内で魔力を練ってからケーブルへと送り込む。
「(……いつもより固い。多分魔石に比べて伝道効率が悪いんだ)」
「(それに気をつけないと発散率も高そう)」
2人の魔力はケーブルを通り、すぐさまエンジンへと供給された。
「!?エンジン出力回復。やったぞ!」
「良かった。これで墜落は免れたぞ」
喜ぶ機長達。
それとは対照的にマルサは内心畏怖の念でいっぱいだった。
「(なんなのこの子達。
クラリッサ様がVIP待遇で丁重にお持て成しするようにと言った時は、どこかの高官の子供かと思ったのだけど違う。
ひとりひとりがクラリッサ様に並ぶほどの魔力を持っているなんて。
それにケーブルに魔力を通すなんて、普通は専門の技師でもない限り無理なのに)」
そんなマルサの驚きを他所に、5分ほどで交代するサンシャイン達。
シリカとウィンディもサンシャイン達同様、いやそれ以上の魔力効率で魔力の供給を開始している。
「最初難しいかなって思ったけど、慣れてきたらだいぶ楽になったね」
「最初はエンジンの魔力が枯渇気味だったからじゃないかな。
後半は消費されずに循環する魔力量も増えてたし」
「そうだね。それもあるかも」
そういって笑う姿からは、つい先ほど大量の魔力を放出した疲労などは見受けられなかった。
そして更に数分後。
「ただいま~」
「あ、おかえりー」
まるで散歩から帰ってきたかのように気軽に挨拶をしながらコックピットに戻ってくる鞍馬。
魔法少女の皆もそれが当たり前かのように応えている。
「龍司、お土産は?」
「シリカ先輩、さっきの今でそんな大したものがある訳無いじゃないですか」
「ということは……」
「これくらいです」
そう言って取り出したのは手に乗るサイズの雪だるま。
ご丁寧に目や口、あと胴体にボタンのように青い石が嵌め込まれている。
「ふふっ、かわいい」
「って、それ。エベレスト水晶じゃないですか!?」
青く光るそれは、このヒマラヤ大高原でしか取れない希少な青みがかった水晶だ。
採掘するには極寒の中、更に氷と雪を掻き分けて地面を掘り、それでも見つかるのは極わずかと言われる宝石。
あれ一粒で数十万はする代物。
それがまるで道端の石ころのように扱われているのを見て、マルサの常識は崩壊寸前だった。
「くくく、鞍馬様!」
「ん?あ、それと機長。魔力タンクの損傷、直して置きましたので、みんなの魔力鍛錬が終わった頃に俺の方で補充しておきます。
なので、予定通りのフライトをお願いします」
「……あ、ああ。分かった」
機長達も既に「そんな馬鹿な」といいたい所をぐっと堪えて、操作盤に表示される情報から彼の言い分が間違いない事を確認すると、
どこか畏れるように操縦に集中するのだった。
鞍馬の方の話は書いてもいいのですが1話に満たないボリュームになるし、
早く水着が見たいので飛ばします(こっちが本音?)
「どうやって次の主人公決める?」
「やっぱ美女コンでしょう。皆さんに投票してもらえれば……」
「じゃあ、私達の写真を張り出さないとね」