69.旅行へ行こう
今週の更新が遅くなりがちになりそうです。
あっという間に夏休みまでの残りの日々が過ぎ去り、今日は待ちに待った旅行に旅立つ日だ。
最初の待ち合わせは午前9時に空港のロビーで、なんだけど、8時55分現在、まだ南野さんと東さんが到着していなかった。
「2人には連絡って取れてるんですか?」
「ええ。南野さんが寝坊してちょっと遅れそうですって。
さっき来た連絡では空港行きの電車には乗れてるから到着予想時刻は9時15分ね」
「そうですか。やっぱり出発時間を30分早く伝えておいたのは正解でしたね」
チェックインの時間などを考えても10時集合でも間に合う。
でもみんなには遅くても9時半には空港に着いてないと置いていくからなって伝えておいた。
そうしないとギリギリに滑り込もうとして間に合わなくなる人が出てくるからだ。
そして先生の予想通り、9時9分に2人が汗だくになりながら到着した。
「はぁ、はぁ。おまたせ~」
「すみません、遅くなりました~」
「おはよう、2人とも。時間には余裕があるから、まずは汗拭いて」
そう言ってハンドタオルと水を渡す。
「ありがとう、鞍馬君」
「どういたしまして。
クラリスさんからは、準備が出来次第、1番搭乗口に行くようにって言われてるんだ。
みんなお手洗いとかは大丈夫?」
「「大丈夫(です)」」
みんなで連れ立ってまずは身体検査のゲートに向かう。
係員に旅券を見せると、簡単な検査機を通過するだけで通れてしまった。
更には。
「神門学園、天文部の皆さんですね。
わたくしは皆様をクルム島までご案内する為に遣わされました、マルサと申します。
今日一日宜しくお願いいたします」
専属の案内人まで付いていた。
マルサさんは北欧系の顔立ちをした、20代半ばくらいの女性だ。
立ち居姿は凜としていて、ザ・仕事が出来る女性って雰囲気を醸し出してる。
彼女の案内で俺達は1番搭乗口へと向かう。
そのまま外に出て、中型のジェット機へと案内された。
「さあ、どうぞ皆様。
中にお入りになり、ご自由に席を決めて下さい」
「ということは、もしかして貸切!?」
「はい。そもそもこの機体は聖女クラリッサ様のプライベートジェットです。
本来であればクラリッサ様が乗られる予定でしたが、皆様により快適な旅を、ということでこうして手配させて頂きました」
「そうだったんですね。着いたらお礼を言わないと」
そして中に入ると席数は全部で30程度。
各席はかなり余裕を持って配置されており、エコノミークラス症候群とは無縁であることが窺える。
さらに機体後方には仮眠室まで数部屋あるそうで、完全に横になることも可能だ。
「機内食やお飲み物も各種ご用意してありますので、気兼ねなくお申し付けください。
ただ、流石に離着陸の時は万が一に備えて着席とシートベルトの着用をお願いします」
マルサさんはどうやら道案内だけじゃなく、添乗員も兼任するようだ。
そうして機体は静かに滑走路を移動して離陸した。
「飛行機が離陸する時ってもっと振動とか引力とか感じるものだと思ってたよ」
「ほんと。窓から外が見えてなかったら、飛んでるなんて信じられないもの」
「ふふふっ。本機は高度な魔法技術により、常に周囲に結界を張っているのです。
そのお陰で天候や乱気流の影響を最小限に抑え、常に快適に過ごせるようになっています」
「へぇ。流石聖女様専用機だね。
あの、他にも何か凄い機能があったりするんですか?」
南野さんがそう聞くと、待ってましたとばかりにマルサさんが話し出した。
「ええ、もちろんです。
この機体は世界初の魔道エンジンを2基搭載し、最高速度はマッハ10を超えます。
更には胴体についている補助エンジンを利用することでホバリングおよび高速旋回まで実現しているのです。
また、機体の装甲も特殊な合金を使用しておりまして、魔力を通すことで通常の物理兵器ではそうそう傷を付けることすらかなわない頑丈さを誇ります。
先日の特異点発生時も現地へと急行する際に使用されましたが、魔将級と思われる魔物の魔法を受けつつも見事クラリッサ様を無傷で降ろすことに成功しています。
他にもですね……」
「あ、あははは……」
マルサさんは相当この機体が好きなのか、途切れることなく話し続けている。
俺も彼女に話を振るときは気を付けよう。
マルサさんはミリオタという訳ではなく、好きなものには滅法目がないだけです。
容姿は敏腕メイドをイメージしてもらえれば大体あってると思います。