55.試合後インタビュー
無事に10万文字突破です。
最初の作品では10万って途方もない数字だった気がしますけど、なれると早く感じますね。
お前は何を見てきた小劇場
「監督、今回のバント攻勢はまさに神業でしたね」
控え室へと戻った俺達に、早速とばかりにインタビュアーがやって来た。
「みなさん。第1試合お疲れ様でした。
いやぁ凄かったですねぇ。サンシャインさんとレインさんの電光石火の一撃。
あれを見た瞬間、会場中が静まり返りましたもの」
「いやぁ、それほどでも」
「ありがとうございます」
褒められて嬉しそうに頭の後ろに手をやるサンシャインとおずおずとお礼をいうレイン。
「最初、一般校からの参戦ということで、まず勝ち目はないだろうと考えられていましたが、
結果は真逆。誰もが予想もしていなかった圧勝となりました。
その強さの秘密をお聞きしてもよろしいですか?」
「は、はぁ」
ぐいぐい来るお姉さんに、たじろぎ始めたサンシャイン。
まぁもうちょっと様子を見てても良いかな。
「ずばりお聞きしますが、皆さんが使われている魔道具。
あれに秘密があるんじゃないかと睨んでいるんですよ。
旧式と見せかけて実は最新式の超機能が隠されているんじゃないかと。
その点、どうなんでしょう。
あ、もちろん具体的な内容までは言わなくても結構ですよ。
まだ試合は続きますからね」
「超機能って言われても、ねぇ」
「特に何もないと思うんだけど」
「ですが、それだと北野魔法学園の生徒達の攻撃が効かなかった事の説明が付きませんし、不可視のフィールドを展開していたとか、空間系もしくは時間系の魔道具を使ってたんじゃないんですか?」
「いいえ。私達が使っている魔道具って変身できて武器に変形できるだけだよね」
「うん。私もそうだと思ってるし、そう使ってるよ?」
「いえ、ですが……」
的外れな質問で混迷を極め出したインタビューに先生が待ったをかけた。
「まぁまぁ。強さの秘密は大会中はどうしても言えない部分がありますから、子供達にそれを考慮して話せというのは酷でしょう」
「で、では。やはり何か秘密があるんですか!?」
「どうしても知りたい場合は優勝した後に私の方からお伝えします」
「そ、そうですか。分かりました。
あと、今回の試合では動きを見せなかった、ウィンディさんとシリカさんは初戦はいかがでしたか?
前回の大会では1回戦敗退でしたが、今回の大会に向けてだいぶトレーニングを積んできたんじゃないですか?」
そう言ってマイクをウィンディに向けるお姉さん。
それに対し、頬に手を当てて考える仕草をするウィンディ。
「うーん、そうね。大会の為に頑張った記憶は無いかしら」
「私達の敵はあくまで魔物ですから」
ウィンディの言葉にシリカが補足を入れる。
裏のないその言葉にお姉さんも何も言えないみたいだ。
「さ、最後にそちらの大将を務めた子に話を伺ってもいいでしょうか」
と、俺に話が飛んできたか。
先の戦いでは俺も何も活躍していないんだけどな。
「なんでしょう」
「女性に比べ男性は魔法力で劣るというのが通説です。
それなのに男性のあなたが大将を務めているのには何か訳があるのでしょうか?」
「それはリュージュがいちば……」
「大将以外の方が自由に前線に出れますからね。
俺は皆が気兼ねなく戦えるように後ろに控えているだけですよ」
サンシャインの言葉を遮って、当たり障りのない説明をしておく。
俺は大会中、前に出るつもりはないし、これで問題ないだろう。
「なるほど。
試合後の疲れているところ、対応頂きありがとうございました」
俺の答えに満足したのか、挨拶をして出て行くお姉さん。
扉が閉まったところで、ようやく皆の緊張が取れた。
「ふぅ。緊張した~」
「インタビューなんて初めてだもんね」
「ほんとほんと。私変なこと言ってなかった?」
「大丈夫じゃない?」
「そうね。いつものサンシャインだったわ」
「……」
「せんせい?」
出て行ったインタビュアーの背中を睨むように見ていた先生がハッとなってみんなを見た。
「あ。ごめんなさい。そうね、問題なかったと思うわよ」
「んー、なにか心配事ですか?」
「そうじゃないの。本当に何でもないから気にしないで。
さぁ、2回戦は午後からだから、今の内にご飯を食べておきましょう」
「「はーい」」
そうして連れ立って控え室を出るみんな。
その後姿を追いながら先生が俺に耳打ちした。
「(さっきのマイク、鑑定の魔道具だったと思うのだけど、どう思う?)」
「(そうですね。でも装備していた魔道具の性能くらいしか測れなかったと思うので大丈夫ですよ)」
「(そう。やっぱり。……これは少し注意が必要ね)」
まったく、無事に大会が終わってくれればいいのだけど。
ちなみに普通1回戦を勝った位じゃインタビューは来ません。
せめて1日目を勝ち抜かないと。
「あれ、そういえば試合中、監督はどちらに?」
「も、もちろんベンチに居ましたよ。(出番ないんだけど、しくしく)」