51.試験と試験
無事に50話を突破してブックマークも順調に増えている。
皆さんありがとうございます。
間抜けな小劇場
「抜き打ちテストを始めるぞ~」
「先生、聞いてません!」
「言ったら抜き打ちじゃないだろうが」
期末試験初日の朝。
いつもと違って教室内はピリピリとした空気で満たされていた。
ある人は教科書を読み返し、ある人は暗記帳とにらめっこをしている。
他にも友達と問題を出しあっていたりしてる。
「おぉ~」
こういうのを見ると、やっぱり学生なんだなって改めて思える。
ちなみに、南野さんはというと。
「ぶつぶつぶつぶつ……」
「南野さん?」
「待って、今話しかけないで!」
「あ、うん」
これはそっとしておくしかないな。
そして遂に試験開始の時間になる。
「はじめ!」
ぺらっ。カリカリカリッ。
試験官の合図に合わせて試験用紙が捲られる音と、ペンが走る音だけが教室を支配する。
ちなみに、俺はというと。
「(赤点さえ回避出来ればいいしな)」
という軽い気持ちで居るので、分かるところだけを埋めていく。
これだけでも多分60点は越えられるだろう。
お陰で他の生徒ほど熱意も焦りもなかった。
そうして3時間目の法学の試験。
答案の1行目の文言を見て俺の手が止まった。
『本試験には最後、記述形式の問があります。こちらは3年間を通じて1度だけ回答してください』
どういうことだろうか。
俺は途中の問題を後回しにして、最後の問題を確認することにした。
『問:あなたの心に残る子守唄を覚えている限り記載してください』
……なんだこれ。子守唄?少なくとも魔法学とは全く関係ないようだが。
ただまぁ、これを書いたからと言って特に問題があるとも思えないし、やるか。
うーん、子守唄、ねぇ。
聞かされた記憶は無いから、俺が子守の時に唄ってたのでいいか。
『ひっとつや~。ひ~とつ幸せ、さがしましょ~♪
ふったつや~。ふ~たり笑顔で、こんにちは~♪
……』
確か「しあわせ数え歌」ってタイトルだったかな。それも書いておくか。
それにしても懐かしいな。
最後に唄ったのはキリナの娘が生まれた時だったか。
あの子はだいぶヤンチャだったからキリナも苦労してたな。ふふっ。
っと、しまった。
思い出に浸ってたら残り時間が半分を切ってる。
法学の点数が低いと央山先生に怒られるからな。急がないと。
そうして何とか大きな問題もなく3日間に渡る期末試験が終了した。
プシューと隣の南野さんの頭から蒸気が立ち上っている気がする。
「南野さん、お疲れ様」
「うん、お疲れ~。何とかやりきったよ~」
「ははっ、その感じだと赤点は大丈夫そう?」
「うん。鞍馬くんや葛西先輩に教えてもらったお陰だね。
よぉし、鞍馬くん、今日は皆も誘ってカラオケに行くよ!」
そう勢い込んで行った南野さんだったけど、ホームルームの先生からのお達しで、また後日になるのだった。
「全くさ、魔物も空気読めって話よね」
「まぁまぁ、魔物で気晴らしが出来ると思えば良いんじゃない?」
「あ、それもそうか」
そう言って笑うサンシャインを筆頭に俺達は北地区の廃工場跡へ向かっていた。
「二人とも。情報ではかなりの魔素が確認されているらしいから油断は禁物よ」
「「はーい」」
「でも最近の私達ってかなり強くなってますよね。
もう上位種の群れが現れても大丈夫なんじゃないですか?」
「そういう油断が大怪我につながるわ。
それに鼻を伸ばすのはコロちゃんに有効打を当てられるようになってからにしなさい」
「うぐっ。コロちゃんは別格ですよぉ」
そんな話をしている間に目的地に到着した。
そして討伐対象の魔物もすぐに見つかった。
「なにあれ」
「おっきいですね」
「ゴーレムもしくはジャイアントって所かしら」
「身長約7メートル。まさに大人と子供って感じね」
皆が言う通り、巨大ゴーレムの魔物がこちらを睥睨していた。
あ、でも見かけ倒しだな、これ。
これならみんなの実技試験にちょうど良さそうだ。
「じゃあみんな。今回はみんながどこまで魔法を使いこなせるようになったかテストと行きましょうか」
「ぎゃあ~、リュージュ、テストとか言わないでよ」
「あ、ごめんごめん。でもちょうど良いかなって思って。
お誂え向きに敵も4体居るし」
「え"」
俺の言葉を聞いたかのように、工場の影から新たに3体のゴーレムが姿を現した。
元々1体を4人で倒そうかと思ってたのですが、弱い者いじめが酷くなりそうだったので増員です。
「10点零、10点零、10点零。シリカ選手、優勝です」
「あの、その審査員って誰ですか?」
「ロリコンの魔物です」




