5.自分の家には自重しません
新規連載記念継続中です。
ifの世界の小劇場
「さあ秘密基地を作るぞ」
放課後。
俺は街へと繰り出してきた。
何をしに来たかと言うと、家探しだ。
というのも、この世界には昨日送り出されてきたばかりだから寝床も決まって決まっていなかった。
ちなみに昨夜は学園の裏手にある小さめの山の中で野宿していた。
冒険者時代は頻繁に野営してたから久しぶりで懐かしかったんだけど、流石にこの世界でそれを続ける訳にもいかないだろう。
「……にしても、こっちに来ると空気が不味いな」
多分さっきから大量に走ってる車の排気ガスのせいだな。
これなら山の傍で探すか。
そう思ってUターンすることにした。
「あの、お客様のご要望を全て叶えると、こちらになるのですが」
案内してくれた不動産屋の人が怪訝な顔をしていた。
それというのも俺達の目の前には築ウン十年のボロボロの一軒家があった。
地震が起きれば即崩れてしまいそうだ。
でも俺の要望通り、庭も広く家の裏はすぐに山だ。
「ええ、確かに依頼どおりの物件ですね」
「それと、お連れしておいてなんですが、こちら貸し物件ではなく売り物件になります」
「なら改築とかも自由に出来るんですね」
「え、ええ。まあ」
「ならここでお願いします」
「……分かりました。それで失礼かと思いますが、ご予算の方は大丈夫ですか?」
ん?あぁ、なにをそんなに心配してるかと思えばそういうことか。
確かに今の俺はしがない学生だしな。金を持っているようには見えないか。
でも実際にはそのあたりは何の心配も無かったりする。
ちらっとアイテム空間の中を確認すると、現金で1億円、銀行口座にもかなりの額が入っていた。
どうやら神様の粋な土産の1つらしい。
なので不動産事務所に戻った俺は即金で契約を巻いてきた。
本来は色々手続きで時間が掛かるんだけど、交渉して即日入居させてもらえるようにもした。
「さて、じゃあやりますか」
家の前に戻ってきた俺は、腕捲りして敷地の中に入った。
まずはまだ明るいし庭の手入れからかな。
周囲に人の気配が無いのを確認してから、庭に手を付く。
『農地改革』
昔、飢饉が定期的に起きていた時代に開発した魔法で、魔力を送り込んだ範囲の土地を自在に作り替える事が出来る。
もちろん影響範囲などは術者の能力に比例する。
この魔法の良い所は、土魔法の訓練にはうってつけだってのと、初心者でも比較的発動しやすい所だ。
この魔法の普及のお陰で10年くらい土魔法ブームが起きたっけな。
閑話休題。
俺の魔法によって、雑草だらけの庭がズズズっと微振動を繰り返して雑草はどんどん抜けて一ヵ所に集まり、地中の石は砕かれ、ついでに大量に埋められてたゴミを分離分解して土に戻しておく。
一部鉄とか銅もあったのでインゴットにして回収しておくか。後で使えるだろう。
この世界に来るまでは、転生したら魔法やスキル、アイテムは全部リセットだと思っていたけど、実際には肉体は再生成されたけどそれ以外はほぼそのままで、アイテムもアイテム空間に入ったままだ。
流石に肉体に依存したスキルの多くが使用できないけど、そこは今後の訓練次第だろう。
時刻は夕方18:30。
日が暮れて暗くなってきたので、塀や母屋など、外からも良く見える部分に手を加える事にした。
「塀は、周りの家に似せたデザインにすればいいか」
これも土魔法と錬金魔法の応用で修復していく。
「ついでだから各種結界も張っておこう」
対物対魔、隠蔽、防音、探知、警報、認識阻害など諸々の結界を張っていく。
「ついでだから四つ角に基地局も作るかな」
興が乗って、灯籠型の対侵入者用の迎撃システムも組み立てた。
よし、これで軍隊が攻めてきても、ドラゴンがブレス攻撃をしてきても大丈夫だろう。
「この調子で家の方も今日中に終らせるか。
ついでに裏山にも手を加えても怒られないかな。
今日野菜が不味かったし、自作するか。
あ、でも、そうすると平地が足りないから空間拡張もしてしまうか」
そうして全てが終わった後、やり過ぎたなと後悔するのだった。
色々とご都合主義をまき散らす回。
別に今後ドラゴンが攻めてきたりはしません。きっと。
「もちろん自爆機能付きだ!!」
男の子ですから。