40.魔法甲子園
いつもありがとうございます。
本章は極力高校っぽいネタをかき集めてきています。逆にいえば次章はもう……
前書き後書き小劇場
「お願い、私を甲子園に連れて行って!」
天体観測を行った翌朝。
北山が難しい顔をしながら俺の所へやって来た。
「鞍馬、頼みたい事があるんだ」
「どうした、そんな改まって」
「実は、今度の甲子園大会に助っ人として参加して欲しいんだ」
「ちょっとまて。北山って剣道部だよな」
「ああ」
「甲子園って、野球じゃないのか?」
「は?んな訳ないだろ」
詳しく話を聞くと、どうやら甲子園とは名ばかりの学生オリンピックのようなものらしい。
人数の多い部活の場合、各種予選大会が行われた後、甲子園競技場で決勝大会が行われるそうだ。
「でも剣道部なら人数それなりに居るよな」
「それがなぁ。先輩たち、先に自分たちだけでエントリーしちまったらしいんだよ」
「てことは1校1エントリーって訳でも無いのか」
「そうだ。で、1年は鞍馬も知っての通り4人しか居ないから1人足りないんだ。ただの数合わせでもいいからさ、頼むよ」
はぁ。
まぁ本気で出たいみたいだし名前くらい貸してあげるか。
「……本気で数合わせでいいんだな」
「っ!ああ」
「ちなみに試合形式は?」
「5対5の勝ち抜き形式だ。
あと予選会は代表1名でのトーナメント戦で、そっちは俺が出ることになってる」
良かった。大会の流れ自体は普通っぽい。
「じゃあ、予選会で北山が勝ち抜けたら出番があるくらいか」
「そうなるな」
「防具とかは借りられるのか?」
「それくらいはな。先輩のおさがりで悪いけど予備はある」
なら問題ないかな。
と思ったところで、南野さんが声を掛けてきた。
「なになに?何の話?」
「今度の甲子園大会で剣道部の助っ人を頼まれた」
「甲子園か……って、もうそんな時期なんだね。
ねえ、北山君。剣道部の試合って遅くても夕方までだよね?」
「ん?ああ。地区大会の予選は平日の日中を使ってやるし、決勝は来週の土日だ」
「なら、天文部の活動にも支障ないね」
「って、意外とすぐなんだな」
「まあな。今日がエントリー締切日で、明日明後日で対戦表の作成、来週月曜から予選開始だ」
いったいどれくらい参加するのか知らないけど、なかなかに弾丸だ。
キーンコーンカーンコーン
チャイムと同時に先生が入ってきて、その場はお開きになった。
「ホームルームを始めます。
今日の連絡事項ですが、まず来週から始まる甲子園大会についてです。
運動系の部活動に入っている人はそちらからも連絡が行っているかと思いますが、来週1週間は全校をあげて甲子園の応援を行うことになりました。
なので授業はありません。
後ほど、各種目がどこで行われるかを張り出しますので、それぞれ応援したい、または興味のある所に行ってください。
入場時に出身校と名前のチェックがあり、どこにも行っていない生徒は欠席扱いになりますので、注意してくださいね」
学校全体が休みになるのか。
そう言えば昔も甲子園地区大会で準決勝に進出したりすると、学校全体で応援に行く、なんて話も有ったか。
「あと、鞍馬君と南野さんは昼休みに天文部の部室まで来てください。
連絡は以上です」
そう言って先生は朝のホームルームを終えて教室を出て行った。
そして早速と言う感じで南野さんが声を掛けてくる。
「昼休みだって。なんだろう」
「そうだな。話の流れ的に考えると甲子園がらみな気もするけど。
あっちの方でも大会があったりするのか?」
「ううん。聞いた事ないよ」
「そっか。まぁ昼休みになれば分かるか。先生の雰囲気からして悪い事ではないだろうし」
そうして昼休み。
俺たちが部室に行くと既に他の人達は全員集まっていた。
「あ、来たわね。では。
南野さん達は知らないと思うけど、甲子園大会には裏種目があるの。
と、これだけ言えば分かると思うけど、魔法使いの大会よ」
「先生、どうして裏種目なんですか?」
「それは各学園で活動している魔法使いが誰かは一般には公開していないからなの。
専門学校になればほぼ全員、魔法の素質が高い生徒ばかりだから公表しているけどね」
ふむ。魔法使いだって理由で何か事件でもあったのか?
「先生。魔法使いだと知られると何か問題があるんですか?」
と、俺の疑問を南野さんが聞いてくれた。
「ええ。今でこそ誰でも魔法が使えるようになって来たけど、以前ね、魔法使いを正義のヒーローを越えてどんな奇跡でも起こせる救世主みたいに考える人が居たの。
その結果『魔法が使えるのに何でうちの娘の命を救ってくれなかったんだ』とか、酷い時だと『お前たちも魔物の一種なんじゃないか』なんていう人が現れたの。
その謂れのない誹謗中傷から子供たちを守るために、公表は控えようって事になったらしいわ。
もちろん、今では魔法使いだって知られてもそんな事にはならないから安心して」
「そうだったんですか」
藁にも縋りたい人から見たら、魔法を使える人が奇跡の代行者に見えたんだな。
以前も聖女に死者の復活を嘆願しに来た人が居たっけな。
「と、話を戻すけど。あなた達5人でエントリーをしておきましたから。
これを機会に鞍馬君の教えてくれた訓練法の凄さを世界に発表しようと思います」
なるほど。
試合云々よりもそっちがメインなんだな。
毎度ながら色々と混ざり合っています。
ちなみに作者は学生時代、甲子園はテレビでしか見たことがないです。
「ごめん。忙しいからナビ見て行って」