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普通の高校はどこですか!?  作者: たてみん
第2話:魔法少女育成計画!?
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30.苦い記憶

いつもありがとうございます。


放課後に部室に集まるのもだいぶ習慣化してきた気がする。

そしていつものように北見先輩の言葉から話し合いは始まる。


「今日の議題は昨日の振り返りもあるけれど、聞いてほしい話があります」


いつもよりどこか緊張感を含んだ先輩の雰囲気に、意気揚々としていた南野さんと東さんの背筋が伸びる。


「話と言うのは去年起きた事件の事。

陽子も水希も知らないと思うけど、あなたたちの1年上には先輩部員が2人居たの。私の同期も2人居たわ。


事件が起きたのは去年の11月10日。暗く冷たい霧雨の降る日だったわ。

先輩方、先生を含め総勢8人でいつもの巡回に出ていたの。

後から考えたら、予兆はずっと前から出てたんだと思う。だってあまりにも静かだったのだから。

巡回の後半。特に何事もなく今日も終わるだろうって思い始めた頃、私たちは川原にたどり着いた。


最初、そこも特に問題ないって判断して今日はもう帰ろうとUターンした時だった。あいつらは現れたわ。

姿は昨日の魔物と同様、4足の獣型だった。

その中で1体だけ一回り大型の上位種と思われる個体が居たけど、それ以外は数が多いだけでいつも通りだったから、その上位種にだけ注意を向けておけば問題なく勝てる。そう思ったのが最大の間違いだった。


あいつらは猟犬のように統率の取れた動きを見せたわ。

まさに私たちは狩られる側だった。

当時は魔力の扱いが先週以上に拙かったから、1撃で倒せる魔力を有しているのが私の同期と後輩1人ずつしかいなかったわ。

だからどうしてもその2人が攻撃の要になるのだけど、あいつらは彼女たちの攻撃後の隙を執拗に狙ってきて、また、フォローに入ろうとしたほかのメンバーの妨害までしてきたわ。

結果、打開策も見えず、じわじわと私たちは傷つき動けなくなっていった。


そして、アタッカーの2人が膝をついた所で、それまで後ろで見ていただけだった上位種の魔物が腰を上げたわ。

そうなるともう、防戦一方で私がそいつの攻撃を防ぐことでギリギリ全滅を遅らせるような状態に陥ったの」


そこまで話し切って北見先輩は小さく息を吐いた。

顔色も良くないし、当時を思い出して相当辛いのだろう。


「えっちゃん先輩。それ以上はもう」

「そうです。無理しないでください」


堪らず南野さん達が声を掛けるも、北見先輩は首を横に振って話を続けた。


「ありがとう。でも最後まで話させて。

そしてそれほど時間も掛からずに私の盾も壊れて、もうダメだって誰もが思ったの。

でもその時に、先生が本来使ってはいけない危険な魔法を使ってくれたの。

そのお陰で私たちは一命を取り留めて、魔物たちも消滅させることが出来たわ。


何とか命からがら学園に帰ってきた私たち。

でもあまりの恐怖からか、私の同期と後輩は、怪我が治ってすぐに天文部を離れ別の学校へと転校していってしまったわ。

いつかまた会えれば良いのだけど。


そして残った私たちにも困った事が起きていたの。

私はその時の傷が原因で魔法を発現出来なくなってしまったわ。今できるのは魔力強化だけ。

先生も変身すら出来ないほど、魔力が弱まってしまったの。

幸い葛西先輩は大丈夫だったんだけどね」


そうか。北見先輩が魔力を魔力のまま武器に纏わせて戦っていたのはそれが理由だったのか。

それに先生も。


「あの時に、今と同じ力があれば、とか、龍司がいてくれればって思うと悔しく思うわ」

「先輩、さすがにそれは」

「ええ、無いものねだりなのは分かっているわ。わかっているけど、どうしても、ね」


部室の中に重い空気が漂う。

本来なら先生がこの場を何とかすべきなのかもしれないけど、先生も当時のことを思い出して俯いてしまっている。

ただ、今この場には、空気を吹き飛ばしてくれる元気印の南野さんがいてくれる。


「先輩、特訓しましょう!」

「陽子?」「南野さん?」


バンっと机を叩いて勢いよく声を上げる南野さんにみんなが驚きの声を上げた。


「先輩たちが過去辛い思いをしてきたのは分かりました。

でもそれこそ今なら鞍馬くんが居てくれます。

昼間少し話したんですけど、鞍馬くんが言うには私たちはまだまだ強くなれるそうなんです。

だから強くなって二度とそんな目に遭わなくて済むように特訓しましょう!」

「そ、そうです。私も頑張りますから」

「水希まで……」


後輩ふたりが立ち上がった事で、重くなっていた部屋の空気が少し緩和された。

そう、今日の昼休みに受けた相談っていうのが、それだった。

もっと強くなりたいって。強くなって皆を守れるようになりたいって。

でも。


「ふたりの気持ちは嬉しいわ。

確かにあなた達なら強くなれると思う。でも、魔法の使えなくなった私は」

「それだって鞍馬君なら治せるんじゃないかな。どう?」


その言葉を受けてみんなの視線が俺に集まる。

期待と懇願が混じり合う視線に、俺は首を縦に振るのだった。

あ、ご都合主義により死者は出ていません。

元はそっちルートもあったのですが、こっちの方が後々効いて来るので。

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