29.一夜明けて
いつもありがとうございます。
本当は明日投稿しようと思ったけれど、勢い余って投稿してます。
「龍司、昨日はごめんなさい」
朝のホームルーム前、北見先輩が急に教室に来て俺を廊下に連れ出したかと思ったら、頭を下げられた。
「えっと、先輩?何か謝られるようなことありましたっけ」
「昨日のこと。龍司は私たちのことを考えてくれていたのに、怒鳴ってしまったわ」
「それでしたら、俺の方にも落ち度はあったのでお互い様ですよ」
「ううん。それだけじゃないの。私があんなに怒ったのは私のトラウマのせいだから」
ああ、なるほど。
昨日レインがやられた時の反応から薄々そうじゃないかと思ってたけど、北見先輩は以前にも仲間が傷ついた場面に遭遇したことがあったんだろう。
「それについては少し長くなるし、相談したいこともあるから、放課後に部室で話すわ」
「他のみんなが聞いても大丈夫なんですか?」
「ええ。先生や葛西先輩は知ってるし、たぶん1年のふたりも知っておくべきことだと思う」
「分かりました。ならまた放課後に」
北見先輩と別れて教室に戻ると、南野さんもすでに登校してきていた。
「あ、鞍馬君。おはよー」
「おはよう、南野さん」
挨拶を交わして席に座ると、ずいっと俺の方に顔を寄せてきた。
「(鞍馬君、昨日から考えてたんだけど後で相談に乗ってもらっていい?)」
「(その様子だと魔法少女関係?)」
「(うん、だからここではちょっとね)」
「(わかった。じゃあ昼休みにでも)」
「(そうだね)」
と、そこまで話したところで外山も登校してきた。
「おっす、鞍馬。南野さん」
「ああ、おはよう外山。今日は嫁は一緒じゃないのか?」
「いや、理沙はそういうんじゃないから」
「誰も内川さんのことは言ってないけどな」
「うっ。それは、あれだ。よく前から同じようにからかわれているから、ついだな」
「あー、それはあるだろうな」
ふむ、ならそんなに冷やかさない方がいいか。
やり過ぎると意固地になって、敬遠することになりかねないからな。
「ところで今朝のニュース見たか?」
「ん?どれのことだ?」
「ほら今度、聖女様が来日するかもしれないっていう」
「ああ、あったな」
「やっぱ奇麗だよな~。こう、後光が差してるっていうの?」
「いや、それはただの光の加減だろ」
「いやいや、んなことねぇって」
とそんな雑談をしているうちに、朝のチャイムがなってお開きになった。
2時間目が終わった後の休み時間。
トイレの帰りでボーっと歩いている東さんを見つけた。
「東さん。そのままだと階段でこけるよ」
「えっ、あ。鞍馬君。おはよう~」
「東さんは眠そう、というか、魔力鍛錬をしながら歩いてるのか」
「うん。私みんなより弱いから足を引っ張らないように少しでも頑張らないといけないから」
「そんなことはないと思うけどね。昨日だって1番に反応できたのは東さんだったし。
あれが無ければ今後の活動も大きく変わっていたしな」
「そう、なのかな」
まだまだ表情が暗いな。考え込んで思い悩むタイプなんだろう。
ふむ。東さんは実力よりも自信を付けてもらう必要があるかもしれないな。
「南野さんが伸び伸びと動けてるのも東さんのサポートのお陰だし、周りもしっかり見て動けてるし、魔力に無駄はないし」
「え、や。そんなこと、ないと思うけど」
「大丈夫だから、自信もっていいと思うよ」
「そうかな。うん、ありがとう」
よかった。少しは元気になってくれたかな。
「東さんたちが望んでくれるなら、俺もできる限り協力するし、一緒に頑張っていこう」
「あ、うん……って次の授業始まっちゃう。またね」
若干顔を赤らめて足早に行ってしまった。
少し過剰だったか?まぁ嘘は言ってないし大丈夫だろう。
みんな色々と思う所があるんです。
葛西先輩の出番が少ない?きっと後輩に先を譲ってるんです。