28.戦い終わって
いつもありがとうございます。
戦闘描写もそうですが、心の機微っていうのもなかなか伝えにくいですね。
学園に戻る途中、レインが無事に目を覚ました。
「ん、あれ。ここは……」
「あ、レイン、起きた?良かった~。
さっきは助けてくれてありがとう!
どこか痛い所はない?お腹すいた?のど渇いてない?」
「えっえっ?ちょっとまって」
矢継ぎ早にお礼と質問を投げかけるサンシャイン。
寝起きで状況が把握しきれてないレインはあたふたしてる。
見かねてウィンディがサンシャインの肩に手をやって宥めた。
「落ち着きなさい、サンシャイン」
「う、うん」
「さて、簡単に今の状況を説明すると、魔物は一部逃げられたけど無事に撃退して、学園に戻っている最中よ。
レインはサンシャインを庇って魔物の攻撃を受けて気を失っていたから、こうしておんぶして運ばれているってわけ」
「そうだったんですね。みんな無事で良かったです。
サンシャイン、もう大丈夫だから降りるよ」
「良いから良いから。そのままゆっくりしてて」
ちらっと俺を見るレインが若干恥ずかしそうにしてる。
まぁサンシャインの気が済むまで我慢してもらおう。
それに俺的には2人よりもシリカの方が心配だ。
いつも積極的に話すタイプではないんだけど、さっきから無言で俯いたまま。
ウィンディに目配せすると曖昧に頷かれたから今はそっとしておいて欲しいってことなんだろう。
部室に入ると央山先生が俺達を待っていてくれた。
レインの服装のダメージとシリカの顔色を見て状況はある程度理解したようだ。
「まずは全員無事に帰ってきてくれて良かったわ。
レインさんも怪我はしていない?」
「はい、大丈夫です」
「そう。どちらかというと問題があるのはシリカさんね。ウィンディさん、大丈夫だった?」
「あ、はい。少しだけ我を忘れて魔物に突撃しただけで、すぐに魔物の方が逃げていきましたから」
「そうでしたか」
「……」
未だ俯いたままのシリカを先生がそっと抱きしめて頭を撫でた。
「大丈夫。シリカさんは良くやったわ。
今回もあなたのお陰でみんな無事に帰ってこれたのよ」
「そうですよ、先輩。あの時、すぐに先輩が突撃してくれたお陰で、私もレインも無事だったんですから」
「そうね。あの時はあれが最善の動きだったと思うわ。
だから自分を責めないであげて」
「……うん」
みんなからも励まされたお陰で、少しは持ち直したみたいだな。
これなら明日にはいつも通り元気になっているだろう。
と、思ったところで、シリカが顔を上げると同時に俺を見た。
「リュージュならあの魔物が隠れていたの、気付いてたんじゃない?」
「ああ、まあ、そうですね」
「ならなんで!」
シリカはさっきまで落ち込んでいたのが嘘のように怒りをあらわにしていた。
先生が抱きしめていないと飛び掛ってきていたかもしれない。
それでも俺は努めて冷静に答えることにした。
「みんなにはあの状況が必要だと思ったからです」
「必要って。1歩間違えればレインが大怪我してたかもしれないのよ!?」
「それについては大丈夫です」
「何が大丈夫なの?レインが傷ついても平気だって言いたいの!?」
「そうじゃないです。今なら怪我、しないですから」
「意味分からないわ。現にレインは……あっ」
激昂していたシリカの視線がレインの肩を通って不安そうな顔を見て止まった。
「……ごめんなさい」
「いえ、シリカやみんなが怒っても無理ないと思います。
その点に関しては俺も特に説明しませんでしたから」
「理由を聞いてもいい?」
「はい。えっと、どういえばいいかな。
俺は、みんなを応援したいって思ってます。
出来るだけ安全に多くの経験を積んで欲しいとも。
その中には今回のように、魔物の奇襲や、仲間が傷ついた時の対応も含みます。
あとは勝ち目がない敵から逃げる経験や、逆に逃げれない危機的状況などですね。
また、安全であっても、それに慣れては欲しくないんです。
例えばもし何があっても怪我1つしない無敵状態だと分かっていたら、普段ならしないような無茶をしそうじゃないですか。特にサンシャインとか」
「って、私!?」
「確かにね~」
「ありそうです」
「うん、それは同意」
「うぅ、みんな酷いよ~」
涙目になってるサンシャインはそのままに話を続ける。
「そういう訳で俺の目が届く範囲で活動している今がチャンスなんです」
「つまりリュージュが居る間は、私達は無敵だと言いたいのね。
それが本当だとして、私達はもう聞いてしまったから、今後は通用しないんじゃない?」
「そうですね。なので、今後は俺が施す守りは最後の砦とします」
「つまり?」
「みんなの身体は守っても服までは守りません(色々問題があるので下着だけはギリギリ守るようにしておきますが)。
なので、最悪戦闘中に素っ裸になる可能性があります」
「それは、乙女の危機ね」
「そんな事になったら恥ずかしくて戦えません」
「……リュージュのエッチ」
「わたしも露出趣味はないかなー」
「なのでみんな、やられないように最大限注意しながら頑張りましょう」
言ってて俺の評価がぐんぐん下がってる気もするけど、まぁいっか。
「はぁ。教師としては怒るべきかもしれませんが、命の危険には代えられないですものね。
はい、ではみなさん。残りの振り返りと次回への対策についての話し合いはまた明日行いましょう。
今日は疲れたと思いますので、家に帰ってゆっくり休んでください」
そうして俺達は先生の号令で家に帰るのだった。
魔法少女ものにありがちな、どんなにダメージをくらっても服しかボロボロにならない仕様です。
なお、本作は18禁ではありません。なのでぽろりはありません。
ほらそこ、残念とか思わない!(えっ、私か!?)




