21.それぞれの特訓風景1
ここからは3回に渡って魔法少女達の特訓風景です。
前書き後書き小劇場
「実況中継、解説は私、鞍馬龍司。解説は北山友彦でお送りします」
Side 南野 陽子
陽子は上機嫌で家に帰ってくるなり自室に飛び込んだ。
もう早く今日教えてもらった特訓をやりたくて仕方なかったのだ。
「これで魔法が上達すれば、もっと活躍して皆を助けられるようになるよね」
鞄を机に置くと、今日貰った魔球を手に取った。
「よおし、やるぞ!すぅ~~だはぁぁ」
深呼吸と共にベッドに倒れこんでしまった。
まさかの1発KOであった。
ピロリンッ♪
「お、メールだ。誰からだろう、って鞍馬くんだ。なになに」
『南野さんの事だから気合入れすぎて倒れてないか心配でメールしてみた。
もしそうならお風呂に入って気分を落ち着けるといいよ』
すごい。まるで私の事を見ているかのようなタイミングだ。
そんなに私って分かりやすいかな~。
『メールありがとう!!
すごい、よく分かったね!
いままさに倒れちゃってました(^o^;)
お風呂入りながら練習したら効果的かな(`・ω・´)』
『それはダメ。溺れる未来しか見えない』
『えぇ~そんなこと……あるかも汗。
でもお風呂入ってリラックスするのは夜しか出来ないし、それ以外の時はどうしよう?』
『そうだな。子供に教える時は、お母さんに抱きしめてもらったり頭撫でてもらったりするんだけど』
『私はそんな子供じゃないです~』
『かと言って俺が南野さんの頭を撫でるのもな』
『そ、それは絶対ダメ!』
う~。鞍馬くんって同い年のはずなのに時々お兄ちゃんっぽい雰囲気を出すんだよね。
今日だって凄い知識が豊富だったし。落ち着いてるし。
『じゃあ、南野さんは一度、線香花火をイメージしてやってみるといいかもな』
『線香花火か。わたしあれ好きなんだ~。花火の最後は絶対あれがないとダメだよね!!』
『そうだな。それは俺も思う。
で、話を戻して。深呼吸する時に花火の玉を落とさないように慎重に魔力を動かしてみて』
『うん。なら明かり消してやった方がいいね』
っと、脱線しちゃった。
でも線香花火をする時のようにそぉっとそぉっと。
「~~~だはぁ」
思わず息を止めちゃった。
ううん、意外と難しいな。皆は順調なんだろうか。
Side 東 水希
水希は夜、お風呂に入りながら水の蛇口を開けたり閉めたりしていた。
「水道の蛇口って事は、今の私はこう、ちょろちょろっと流れている感じなんだよね。
それを全開にすると、えいっ」
一気に水量が増す蛇口を見てあわてて閉める。
「こんな勢いで魔力を流したら、私なんかじゃすぐ干上がっちゃうよね。
この辺りの調整が難しいかも」
そんな事を何度か繰り返しているといつの間にか結構な時間が過ぎていたらしく、心配したお母さんが声をかけてきた。
「水希~。いつまで入ってるの。のぼせるわよ~」
「はーい。もうすぐ出ま~す」
お風呂から上がってパジャマに着替えてから教わった特訓方法を始める。
っと、その前にさっき気になったことを鞍馬君に確認しておこうかな。
そう思って携帯を開き、今日追加された連絡先にメールを送る。
「(あ、よく考えたら男の子の連絡先って家族を除けば鞍馬君が初めてかも)」
そんな事を考えてドキドキしている内に返信が来た。
送ってから1分しか経ってないのにすごい。
それで返信の内容は……
『最初は加減とか気にせず全力全開でOK。
やりすぎくらいが丁度いいよ』
短く2言。
やっぱり男の子って、文章短いのかな。
そう思いながら言われたとおり全力で魔力を流してみる。
「うぅ、でも全力出したらどうなるんだろう。倒れちゃったりしないかな」
そんな事を考えていたせいか、放課後の時よりちょっとは多く流せたかなってくらいで止まってしまった。
ふと携帯を見るとメールが届いてた。あ、また鞍馬君からだ。
『このメールを見てるのが全力出して倒れた翌朝なら良いんだけど。
もし上手く全力が出せなかったなら明日の放課後にレクチャーするよ』
どうやら私の考えることくらいお見通しらしい。
もしかしたら鞍馬君も同じ経験があるのかな?
『鞍馬君も最初は全力出せなかったりしたのかな?』
『俺じゃなくて知り合いがね。
俺の場合、最初から全力出さないと色々いけなかったから』
『色々?』
『そこは話すと長くなるからパスで』
『あ、踏み込んだこと聞いてごめんなさい』
『全然。謝る必要はないよ。
それで、全力の出し方だけど、今日のところは噴水で水が飛び出すのをイメージしてみて。
某遊園地にあるのとか、観光地にあるやつ』
『某遊園地ってあれかな……うん、やってみるね』
遊園地かぁ。最近行ってないなぁ。鞍馬君は行くのかな。……誰と?
っていけない。特訓に戻らないと。
今のところ鞍馬はちょっと気になる男の子ポジです。
そして最大の問題は家族構成どうしようか。
「北山さん、どうですか」
「着替えシーンが欲しいですねぇ」
「……ともくん、何してるの?」
「ビクッ」