16.ミーティング
昨夜書いてみたエッセイが思いのほか反響が大きくて、びっくり中です。
この作品も楽しんで読んでもらえるといいのですが。
前書き後書き小劇場
「さぁ敵のアジトに乗り込むわよ」
部室に入ると既に他のメンバーは全員集合していた。
時計を見ると集合予定時間の5分前だから俺が遅れたわけではないだろう。
入ってきた俺を見て南野さんが嬉しそうに声をかけてくれた。
「鞍馬君、来てくれたんだ」
「まあな。役に立てるかは分からないけど、無理の無い範囲で頑張るさ」
「うんうん。鞍馬君は落ち着いてるから、1人で飛び出していったりしなさそうだね!」
「陽子ちゃんは最初浮かれすぎて飛び出していったもんね」
「そ、そんなこともあったね」
東さんの突込みが入る。
まぁ初陣で気持ちが高ぶるのは分からなくはない。
ただそれが新兵の死因の3割を占めるというだけで。
そこで時間になったのでミーティングが始まった。
「さて。今回からは新規に鞍馬君が活動に参加します。
最初は何かと不慣れな部分があると思いますので、葛西さんフォローをお願いします。
「分かりました」
「今日のルートは幾つか魔素が濃くなっている地域が確認されていますので、その地域の巡回です。
無事何もなければ学園に戻ってきて解散になります。
ここ数日は魔物の活動が活発化していますので、十分注意してください」
「「はい」」
先生の言葉に全員がしっかり反応している。
これは期待以上に統率が取れてたみたいだ。
と、そこで先生が俺を見た。
「鞍馬君にやって欲しいことですが、今回は全体を観ることに専念してください」
「観る?」
「そうです。鞍馬君は無適正ですから戦いには不向きでしょう。
その代わり、1歩引いた所から全体を見て気になったことを教えて欲しいんです」
「あの、先生。なぜそれを俺が?」
そう訊ねると先生がじっと俺を見つめながら、魔力を飛ばしてきた。
これは……鑑定魔法のなりそこない?いや感知魔法か。
何がしたいのかはよく分からないけど、キャッチボールよろしく投げ返してみたら、先生は「ふふっ」と笑った。
「やっぱり。昨日、初めて会った時に私が鑑定魔法を使ったのに気付いていたわよね。
しかもそれをあえてレジストしなかった。
さらにそのお返しに私に対して鑑定魔法を使ったんじゃないかしら」
「あれ、ばれてました?先生に被せて使ったからばれてないと思ったんですが」
「あの時は分からなかったけど、その後の紹介で私のことを話したから分かったわ」
「なるほど」
あの時は確か、完全にレジストするのも違和感を与えるかと思って、当たり障りの無い情報だけ公開したはずだ。
特に魔力保有量とかは先生を基準に1/10に偽装しておいた。
「あ、一応言っておきますが、普段から誰彼構わず鑑定魔法は使ってませんから。あの時は使われたから返しただけで」
「ええ、分かっているわ。
ただ、そんな芸当が出来るのは私を含めてこの学園には居ないの。
恐らく鞍馬君は前に住んでいた所で身に付けたんだと思うけれど。
つまりね。あなたは魔法に詳しくて魔物への造詣も深いんじゃないかと私は見ているわ」
「なるほど。それで俺を勧誘したってことですね。
でもそれだけで俺の能力を期待するのは早計ではないですか?」
「そうね。だからこれから1つテストをしてみようと思います。
そのほうが皆も納得すると思いますし」
テストか。俺まだこっちの世界の常識が分かってないけど大丈夫か?
皆は海外から引っ越してきたって思ってるだろうけど、実際には異世界だしな。
そんな心配を他所に先生がお題を出した。
「問題の内容は難しくないわ。今日の巡回ルートを当ててみて。
ヒントはこの学園の近くで魔素が濃い地域よ」
それを聞いてガタッと南野さんが立ち上がった。
「せ、先生。魔素の濃さなんて測定器がないと分からないじゃないですか」
「そうです。鞍馬さんはまだこっちに来て間もないですし測定器を使っても数日かかります」
「だそうだけど、どうかしら」
南野さんと東さんが心配そうな顔をしている。
対照的に葛西先輩はにこにこ見守りモードで、北見先輩は謎のグーサイン。
俺としては測定器なんて無くても魔力感知である程度は分かるんじゃないかなって思うけど。
「今日ここに来るまでに感じた魔素の濃い地域は、南西側にある公園とその向こうの川の近くです。
学園の北側はまだ地理に疎いので具体的に表現しにくいですが」
俺の回答に南野さんだけじゃなく、先生まで驚いている。
あれ、これはまた何かやらかしたか。
「えっと、鞍馬君。ひとまずその公園で正解よ。
でもまさかもっと遠い場所が出てくるとは思わなかったわ」
公園までは直線距離で約500メートル、川は2キロくらいか。
魔王の中には5キロ先から魔弾を打ち込んでくる奴も居たからな。
意識すればそれくらいまでは把握できる。
さて、これでテストは合格らしいのでいよいよ活動開始だな。
鑑定魔法などは無属性に該当する為、主人公が使えること自体は疑問視されません。
ただ、その精度などは異常と認識されてしまいますが。
そしてようやく次回に魔法少女が出ます(また一瞬ですが)
「先生、ここ俺の家なんですけど」




