11.呼び出しとあんぱん
読んで頂きありがとうございます♪
登場人物が増えて行くと個性を出すのが難しくなりますね。
今日の裏話
「先生。時間稼ぎよろしく」
昼休みになり、今日もあの学食に行こうかな、と思ったところで放送が入った。
ピンポンパンポン♪
おぉ。やっぱりこの音なんだな。
っと、へんな所で感心してるとまた奇異の目で見られてしまうか。
『生徒のお呼び出しをします。
1年3組鞍馬龍司くん。1年3組鞍馬龍司くん。
魔法科準備室の央山先生の所まで来てください。
繰り返します。……』
って、俺か。
担任の央山先生ってことは2時間目の時のことが関係あるんだろうか。
ま、とにかく行ってみるか。
ただ、魔法科準備室ってどこだろう。南野さんなら知ってるかな。
「なぁ、南野さん」
「なっ、なにかな」
「?」
隣の席の南野さんに声を掛けたらビックリされてしまった。
……別に急に声を掛けたって感じでもなかったはずなんだが。
いつの間にか、また何かしでかしただろうか。
「えっと、魔法科準備室ってところに行きたいんだけど、どこにあるか知ってる?」
「あ、ああ。えっと。それなら3階の突き当りにあるわ。プレートも出てるし行けば分かると思う」
「そっか。ありがとう」
おっかしいな。昨日に比べると随分余所余所しい。
それにこれが今日初めての会話だな。
やっぱり何か怒らせるようなことをしてたのか。後で謝っておいた方がいいかもしれないな。
そう思いながら、魔法科準備室の前にやって来た。
コンコンッ。
「鞍馬です」
「はい、どうぞ」
「失礼します」
挨拶をして中に入ると、どこにでもありそうな事務室に央山先生が一人座っていた。
先生は俺を席に案内すると頭を下げた。
「鞍馬君には申し訳ないことをしてしまったわ。ごめんなさい」
「んえ?えっと、なんの話ですか?」
「2時間目の法学の時間。あなたの適正をクラスみんなの前で確認してしまった事よ。
あなたならきっと凄い結果になると期待してたんだけど、まさか無適正だなんて。
そのせいで他の子達から不当な扱いを受けていないかしら」
「あぁ。大丈夫ですよ。心配しないでください」
なんだ。何かと思ったらその事か。
外山も言ってた通り、モラルの低いクラスだとイジメ対象になったりするってやつだな。
「でも」
「俺は自分に特定の適正が無いことは知っていましたし、今日の事が無くてもいずれ知られるでしょう。
なら、まだ転校生補正が効いてる今の方が良かったんだと思います」
「それならいいのだけれど。
学園生活はどうかしら。他の子たちとは仲良くやっていけそう?」
「はい。南野さんや外山とかは仲良くなれましたし、二人ともクラスのムードメーカーみたいな所があるので、すぐに他のみんなとも馴染めると思います」
それから多少雑談をして、時計を確認したらお昼休みはあと20分。
「お話が以上であれば、お昼を食べに行きたいのですが」
「そうね。折角のお昼休みに呼び出してごめんなさいね」
「いえ。それでは失礼します」
この時間からだと購買で何か買って食べるか。
あ、そういえば東館の学食はイメージ通りの学食だって言ってたし、購買もかな。
そんな期待を持ちつつ、東館の購買へ来た。
ヒューーー
「……」
遅い時間なのもあって購買は閑散としていた。
ただ蝗の群れが通り過ぎたあとだとでも言うかのように、食料品関係の棚はほぼ空だった。
ぎり何とか、あんぱんが1個あったので手に取る。
「あっ」
「ん?」
隣から短く声が聞こえた。
振り向くと俺より20センチは小さい女の子が手を伸ばしている所だった。
(……下級生?あ、いや。俺が1年なんだからそれはないか)
最後のあんぱんを俺に取られてしゅんとしてしまっている。
んー、そうだな。俺は別に1食くらい抜いても大丈夫だしな。
「あー、よかったらいるか?」
「え、でも……」
「実は俺、あんまりあんぱんは好きじゃないんだ。
だから君に譲るよ」
好き嫌いなんてある訳ないからそこは口から出任せだけど、そう言った方がこの子も受け取りやすいだろう。
「ありがとう」
女の子の手の上にあんぱんを置くと、はにかみながらお礼を言われた。
ちょうど良い高さにある頭を思わず撫でそうになるのを、なんとか堪える。
相手の年齢が分からないし、そもそも初対面の相手の頭を撫でるのはNGだろう。
転生前なら孫とかに良くやっていたんだけどな。
「はい、どういたしまして。じゃあな」
「うん。このお礼は後で必ず」
なかなかに律儀なお礼を背中に受けながら俺は教室に戻った。
そして最後のメインキャラの登場でした。
身長140センチ前後、体重40キロ無いくらいです。
詳しい絡みは次回以降に。
「パパありがとう。今度はダイヤが欲しいな」