99 これからの事を話し合おう
俺に最敬礼の姿勢を取る二人を宥めて席についてもらい、改めて打ち合わせを再開する。
「アルファ達は当時まだ生まれていなかったから伝説上の話だとは思うけど、過去に次元を移動する力を持った魔神がそっちの世界に居たのは知っているね?
で、色々あって俺と当時の仲間たちで戦いを挑んだ結果、魔神はこっちの世界に逃げてしまったんだ。
その結果、魔神自体は何とかなったけど、それまで魔法の魔の字もなかったのに中途半端に魔法や魔物が生まれてしまった。
この中途半端ってのが面倒でね。
そういうしわ寄せは、なぜか俺のところに回ってくるんだ」
「なぜかって、あれだけのことをしていれば当たり前じゃないかしら」
「そうよね」
先生たちの視線が冷たいけど、ひとまず無視だな。
「ごほんっ。だからまぁ、中途半端をやめて、正式に魔法を学べる場や交流できる場を創れば良いじゃないかと考えた訳だ」
「なるほど。それで私たちを呼んだという訳ですな」
「そういうこと。
いきなり無差別に行き来出来るようにしてしまうと混乱を招くだけだからね。
天空都市なら自衛能力もあるし野心を持った人も居ないし、なにより自力でこうして移動して来れるしな」
流石に普通の島を丸ごと移動させると、自然環境や生態系に影響を与えかねない。
俺がこっちで作った人工島だって一歩間違えれば海流が変わって海洋生物に被害が出る可能性がある。
もっとも、元から世界中のゴミが流れつく場所だ。
今でこそ魔力に惹かれて来ているが、島を創る前は魚の1匹も泳いではいなかった。
「海上に創った島。あそこを第1の交流拠点としようと思う。
今はまだ何もないけど、これから居住区や海洋発電プラント、港湾設備に空港を作って自由に人の行き来が出来るようにする。
後は学校とか研究所とかもあった方がいいだろうね。
そこでここの住人との交流を図り、ここに招待しても問題ないと判断した人たちから順次受け入れていくことにしよう」
「ふむ。しかし大丈夫ですかな?
この世界も1枚岩という訳ではないのでしょう?
利権を求め、各国が争いを始めないでしょうか」
「そのあたりは当分、天空法、つまりこの島のルールを適用して喧嘩両成敗にすればいいよ」
「喧嘩を吹っ掛けた側も吹っ掛けられた側も揃って島外追放ですな」
「そう。その後の事はきっとルミナさんが所属している組織が何とかしてくれるはず」
「そこで丸投げされても困るんですけど」
「でも、国連ってそういう組織ですよね?
まぁ、仕事だけ押し付けるのも申し訳ないから、海上の島の監査役に任命しましょう。
そうすれば多少自分たちに融通が利かせられますし」
「……それ結局仕事が増えてるだけじゃない。しかも間違いなく私にその面倒な役回りがくる気がするわ」
「まぁまぁ」
ルミナさんには貧乏くじを引かせてしまう事になりそうだけど、ここまで首を突っ込んだ代償に大出世してもらおう。
それから更に細かいルールなどを話し合っていると、次元門に新たな反応があった。
「どうやら来たみたいだね」
「そのようですな」
「え、来たって何が?」
「ほら、あれ」
窓から指し示した先には、次元門を抜けて来た船団が見えた。
恐らく避難していたという島の住民が乗っているのだろう。
4隻の大型飛行船は町のはずれの港に到着すると、わいわい騒ぎながら人?が降りてくる。
「もしかしてと思ってたけど、物語に出てくる亜人もいるのね」
「一応亜人という表現は差別表現に当たりますのでご注意を」
「あっ、ごめんなさい。じゃあ何と呼べばいいのかしら」
「私たちの事は地人族です。他は広義で獣人族、森人族、魚人族、翼人族、巨人族、小人族などが居り、更にそれぞれ血統などにより呼び名が変わります。
分からない場合は素直にどの種族かを聞いても不敬には当たりません」
「そうなのね。
そういう常識も知らないと争いの種になりそうね」
と、早くもこの城も騒がしくなってきた。
みんなも騒ぎを聞きつけて戻って来たみたいだ。
部屋の中からでもドタドタと廊下を走る音が聞こえてくる。
「鞍馬くん。見てみて!
森の中でコロちゃん見つけたから連れて来たよ~」
「ワンっ」
「ああ。コロも大きくなったからね。
家の裏庭じゃ狭くなってきたから昨夜のうちに転移陣を設置しておいたんだ。
コロも広い方が好きだろ?」
「ワンワンっ」
嬉しそうに尻尾をバタバタ振るコロは既に2メートルを優に超える。
向こうの家だと扉を潜るのもギリギリだったからな。
こっちなら巨人族が通ることを想定しているから何もかもが多きめに設計されている。
お陰で家の中も自由に走り回れて嬉しそうだ。
「さて、後はあれだな」
外に向けられた俺たちの視線の先には、これまでの数十倍の戦闘機によって空が黒く染められていた。
恐らく海上も大量の船舶が押し寄せていることだろう。




