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5-7 昇華 中断 死神

 

 死神様がグスグスと泣き続ける龍神ちゃんを抱きしめて撫でること30分。


 やっと泣き止んだ。

 見ていてほんわかする光景であったし、青く輝く尻尾が死神様に巻きついて意地でも離さないって感じが良かった。


 実に、良かった。動画を撮れないのが惜しくて仕方ない。脳内フォルダに全力で焼き付けたので後で記憶データを出力して動画に変えておきたいと思う。


 ……俺、あっち側、日本に戻れないんだった。絶対あっち側の俺はアクアと記憶同期した時に動画に変えるだろうからあっち側の俺が羨ましい。くそう。


「……レティ、行こ。いっぱい、いっぱい、あったんだよ」


 俺や神殿の巫女達と話す時のツンツンとしたお嬢様風の声ではなく、甘えた年相応というか見た目相応の声で小さく囁く。

 その小さな声もこの生命の存在しない世界ではよく響いた。


 ……死神様の真名がアレティモルらしいからそれの略称か、レティって。


「レティがいなくなってから。人を堕落と依存から救ってから。すごく永くて、寂しくて」


 少々興味深い事言ってますね。死神様の偉業とか何も知らないからその堕落と依存から救ったっていうのは興味が湧くが、今は、な。


「……うん。ごめんね。会いに来れなくて、恨まれてるかもって思うと怖くてさ」

「そんなこと……!」


 黒い少女が青く、蒼く、死神様の闇の中でも悠然と輝く蒼い髪を指で梳き、龍神ちゃんの涙で赤くなった瞳を穏やかに見つめる。


「ヴィーが、メアが教えてくれたから大丈夫。もう怖がらないさ」

「…………うん」

「でもやっぱり仕事がね」

「……は?」


 ……へ?死神様は茶化すように穏やかな笑みからニコニコと子供のような無邪気な笑顔に切り替わった。

 っていうか龍神ちゃんの声が怖い。は?(威圧)だったよ、重低音だったよ、空気が歪んで衝撃波が起きたよ。


 俺はいつの間にか纏わされてる死神様の闇で大丈夫だったが……


「最近は堕子(おちご)も増えてるわけだし、私が頑張って輪廻を」

「……この」


 何もなかったこの場所に水が生まれ、精霊が生まれた。


「支えないと子供達が……ってどうかした?」


 次に魔力が生まれ膨れ上がった。水は消滅した場所を埋め尽くすように広がり巨大な湖となった。それでもなお余りある水は天から降り注ぎ、雷を伴い降り注いだ。


「バカぁあああああ!!!」


 その次に生み出されたそれら全てが集まり一本の槍と化し、黒い少女を襲った。


 なお俺ことアクアはあまりの規模と蒼く怒れる童女にビビって呆然とそれを見つめ、巻き込まれたのだった。



 死ぬ。死んじゃう。巻き込まれたことをやっと自覚し、全力で水を操ろうとして何の手応えも得られなかった。力を入れているという感覚すらない、水の支配権が全く奪えない。そりゃあ相手は龍神ですからね、神ですもんね。


 そんなことを考えてジタバタしていたが、……その水と雷が俺に何の影響も及ぼしていないことに気づいた。

 よく見れば闇がアクアを護っている。全てを遮断して消滅させ続け、アクアを保護しているのだ。その闇は。


 ほっと息を吐き、息を吐こうにもまず空気がないのでその動作だけに止まったが。まあ一息ついて周りを見渡すと闇を纏わずにいる死神様が見えた。傍目からはダメージがあるようには見えない。


 どちらかといえば、その首を龍神ちゃんが掴み、ガクンガクンと見ているだけでむちうちになりそうなほどに揺すっている方がダメージ大きそうだ。


 分身してみえるほど揺する速度が速い上、揺する度に振動が伝わってくる。

 とても力強い。


 ところで俺っていなくていいよね。完全に巻き込まれてるだけだし、あとは神様お二方で……っといきたい。

 まあ現状無理だし、言い出すタイミングとしてはあのグスグス龍神ちゃんが泣いてる時がちょうどよかったんだけど、脳内フォルダに保存するのが忙しくてその事に思い至らなかった。


 とりあえずボケーっとその様子を眺めていよう。

 ……そろそろ敵を切り刻みたい、攻撃の尽くをパリィしたい。といった禁断症状が出始めたのでできれば早くしてほしい。




 2分後、天に昇り続ける海と雷は地に落ちて消えた。


 それまでの間、声は聞こえないが龍神ちゃんがわーわーきゃんきゃんと吠えて文句を死神様に言ってるのが脳内再生された。想像がつき過ぎて困る。


 龍神ちゃんがズビシっと死神様に指を突きつけ何もない胸を張る。


「もっと色々言うことあるんだからすぐあたしのところ来なさいよね!ふん!」

「はいはい」

「絶対よ!」

「はい」

「ふん!」


 声ではぷりぷり怒りながらもその顔は嬉しそうだった。


 くるりと反転し、丈の短い黒ワンピースからかぼちゃパンツを覗かせて一瞬で飛び去る。

 ソニックブームは起きていないが、視認できる限界くらいの速度だったのでマッハ30は確実に超えてる。消えたと思ったら遥か彼方にいたし。


「……アクア」


 死神様が振り返り、満面の笑みを浮かべる。本当に綺麗だな、この子。今では希少となってしまった黒髪ロングの黒目の日本らしい美少女。侍とか戦国とかの時代劇系和ゲーなら黒髪黒目ばかりだが、そこでくらいしか見れない。


「なんでしょうか?」

「君のおかげでみんなとまた会えたんだ。すごく感謝してるんだよ?」

「……へ?」


 ほとんど何もやってないよな、俺。俺が会ってないとダメとか?


「君が彼とヴィゾヴニルと会ってくれたから私は知ることができた。もし君がいなかったなら、私は現界を目を向けることもなく輪廻の浄化に勤しんでいただろうね。異界の管理者(運営)が決めた運命だったとはいえ、君と会えたのは幸運だったよ」


 よくわからないが役に立てたらしい。信者にとってこれほどに光栄なことはないだろう。俺を信者と言って良いのかは微妙だが、役に立てたなら何よりだ。


「一緒に帰ろ。手を」


 言われるがままに手を伸ばす。奇しくもその姿は死神の神像と同じく、微笑んだ少女が手を差し伸べる姿と同一であった。






もう一個投稿しきってないのがあったので投稿、そのうち再開したいとは思う。

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