5-5 清めの儀と礼装
龍神ちゃんの家?部屋?から出て湖から上がったらあのグラマラスなウィンディーネが実に良い笑顔で立っていた。
「ありがとうございます」
……何がだ?ここに来てくれてなのか、龍神ちゃんをベッドに寝かせてくれてなのか、それ以外の何かなのか。
「では試練の説明をします。歩きながら話しますのでついて来てくださいね」
「はい」
白に青のラインの入った神官の着てそうなローブを翻し、緑がかった水色、明るい浅葱色の髪を振り、歩く。
「氷精さまが受けられる試練は私たちの中で昇華と呼ばれるものでそれに一人で行わなければならない。昇華に使う一般的な礼装ではなく、特殊な礼装で行うというこの二つの制約があります」
はーん?あ、そうだ。氷精でもわかるんだけど名前言っといたほうがいいよな。
「アクアといいます。自己紹介が遅れました」
「はい。アクアさまですね。私はクオラルと言います。えっと、説明を続けますね」
「はい」
「昇華の内容についてですが、まず水龍の渦と呼ばれるこの街、シ・アンロメアと隣接した湖、大霊湖の南部に存在する渦潮の底にて三日間滞在し、現れる水龍を倒し青色の宝石を50個集めるのが昇華の内容となります。物を持ち込むのは禁止なので装備品やインベントリの荷物はこちらで預かります」
ここの湖の南部の渦潮の底に行けば良いんだな。それだけならウィンディーネであれば誰でも可能だし、水龍を倒すのも恐らく簡単だろう。……簡単、だろうか。装備品ないんだもんな。
「三日間渦潮の底にいるだけで良いんですか?」
「はい、しかしあそこは迷宮化しており常に変化を続けます。滞在するだけでも辛いと思いますよ」
「迷宮ですか」
迷宮っていうとランダムダンジョンを思い浮かべる。
多分ダンジョンになってるんだろうな、水龍の渦・底って感じの固定ダンジョンに。
「まずこの試練を行う人数は基本18人ですのでこれを1人で行う、その上あのような礼装を着てでは……危なくなったら中断しても構いませんので」
「わかりました」
死んでもデスペナショボいし危なくなってもやめないけどな。ゲームモード変えたせいでいつの間にかデスゲームになってたら笑う。
「……着きました」
その部屋にはエルフの巫女がたくさんいた。礼装と思われるものは……あれか?黒色のローブがかけられている。
「アクア様、装備を外させてもらいますね」
えっ、名前教えてもないエルフの巫女に名前呼ばれたんですけど。
そんなことに驚いている間にガントレットが外され、剣が外され、ベレヌスが、ああそれ多分俺じゃないと外せないんですよ。ベレヌスを外して鎧を脱がされ、靴を脱がされ、髪留めが外されて、ワンピースを脱がされる。
およそ20秒の出来事である。かなりの速度で剥かれたな。
「お身体をお清めします」
巫女さんに手を繋がれて違う部屋に移動。もしや風呂か、ここ脱衣所だったのか。
肌襦袢一丁でよく見ると肌が透けてる巫女5人に引き継がれて体を洗われる。
あ、待って、急に服剥かれたせいで麻痺してた感情が落ち着いてきたせいでヤバい。恥ずかしい。
ニコニコしながら見つめないでください。
VRエロゲーで女に裸見られるのは慣れたがそれ男の体だから、今女だから、無理!腕で胸と股間を隠そうとするが腕握られて洗われてるから隠せるわけもなかった。
白い髪をシャンプーらしき柔らかい匂いの液体で洗われたのち、神聖な雰囲気のする香油で丁寧にずっとしてもらっていたくなるような手つきで洗われた。美容院のシャンプーって感じ。
そして雪のように白く霜が降っているような肌を結構無遠慮に触られ、撫でられて洗われる。実にくすぐったい。
こちらも石鹸で洗われたのちに神聖な香油を塗られてる。
次は?風呂入るの?ああ、先に流すのね。そうだよな、香油つきっぱなしだもんな。若干慣れてきたけどやっぱ恥ずかしいぞ。
ばしゃーっと水を被って香油を流す。今更だけど香油って風呂出た後に使うんじゃないの?トリートメントとかとは違うよね、オイルだもんね、これ。
俺使ったことないから知らないけど。
やっと風呂に入った。
「潜って10分ほど待っていてくださいね」
「はーい」
10分潜るってあたりがウィンディーネにしか無理な要素だよな、獣人・魚は水中に酸素なかったら5分しか息持たないらしいし、種族特性で延長できるようだけど。
……そういや裸なのに体見えてるんだな、NPCだからなのか?しかし妙に精神面がうおおおおお!巫女エルフの濡れ透けきたあああああ!とか、アクアの肌、白!?これはヤバい、鼻血モノだ!って興奮してる。体の方はドキドキしっぱなしです。あとちょっとだけ本音を出すと体洗われた時、ちょっと気持ちよかった。
うん。ゲームモード変更にあった倫理フィルタ解除の影響だよね、これ。
性感遮断が仕事してない、自分の体見てドキドキする、エルフ巫女のR15ではちょっと表現してはいけない部分がチラチラ見える。約1名はモロに見えてる。
これは……ネカマを後悔する時が来てしまったのか。小説でちょくちょく見るTS異世界転移とか転生ってやつになってしまっている。
男だった俺が女の体に戸惑う的なアレだよ。
服や立ち振る舞いはネカマで慣れてる。っていうか立ち振る舞いは行儀よくして歩き方とかは戦い慣れで歴戦の風格出てるらしいから特に変ではない。はずだ、誰にも指摘されなかったし。
生理現象はウィンディーネなのでほぼ無い。その他諸々も体を水にすれば大丈夫。
ウィンディーネは多分本気で木の股から生まれるとかそういった自然発生的な生まれ方をするだろうから生植についても関係ない。
あ、意外と大丈夫っぽい。
「もう上がっていいですよ!」
「ん」
ザバァと風呂から上がり、体を優しく拭かれる。
今気づいたんだけど香油の時といい今回といい操水で落とせると思うんです。拭くのが習わしなんだろうか。
ビクって体跳ねるのとくすぐったいのが嫌なので神経を遮断する。実際の体は水なのでこういった細かい部分も操れるのだよ。
それでも恥ずかしさは消えないのだけれど。
次は礼装に着替えさせられる。
え、なにそれ。紐パン?しかも黒。まあいいけど。次はサラシ?……違った、まさかの黒いブラジャー。
それするほど胸無いんですけど、最小設定のトップとアンダー差7.5cmのAAカップだぞ。
目視できる程度にはあり、触ったら一応柔らかいな程度にしかないからいらないと思うんです。
寄せて上げたらもったいないからいらないんですけど。
ウィンディーネだから垂れるとかないだろうし。
次は黒キャミソール、なんか大きい気がする。
次に藍色のハーフパンツというには短いな、ホットパンツってやつかこれ。ベルトついててキュッと締めた。つまりちょっと大きいな、それにつけた瞬間体が軽くなった気がする。
その次に黒いフード付きローブ。足の方が開いてる。
そして黒ハイソックス。
最後にローファー……なにこの魔法使いの生徒みたいな服装は、あと太もも丸見えだがローブで隠れたり隠れなかったりする。
なぜこんなにも黒ばっかなのか、礼装って喪服か何かなの?
思わず着せてくれて今もなお肩に手を置いている巫女の顔をジト目で見る。
「か、」
「か?」
「可愛いぃいい!」
「あ、はい。ありがとうございます」
抱きしめられ、顔を上気させて小声で叫ばれた。
……アクアが可愛いのは知ってる。
なんでこんなにも黒が多いのか理由を聞きたかったが想像はつく、死神の巫女だっていうのが影響してそうだ。
勝手な予想だけど普通だったらこの神殿やらこの人たちの服と同じ青と白であるはずだ。
青と白ここまで前面に押し出しておいて昇華の礼装だけ黒っていうのはおかしい気がするし。
「アクア様、こちらをどうぞ。樹の加護を確認する魔道具です」
「樹の加護?ですか?」
カードを手渡された、樹の加護ってなんだろ。ところで抱きついて頬に顔グリグリしてる巫女さん引き取ってくれませんかね。
「ステータスとも呼ばれるものです。ではインベントリ内の物をこちらに入れてください」
「あ、はい」
差し出された標準サイズの白い鞄に水やらポーション、氷の部屋と敵のドロップアイテム、食事を入れる。
これでインベントリは空っぽだ。
「このカードは入れなくても?」
「はい、試しに使ってみてください」
カードに魔力を込める。魔道具はだいたい魔力込めれば使えるし。
ウィンドウが出た。見た目は……外で見たのと同じか。
€==≦ステータス≧========;
LV.51 name.アクア
ウィンディーネ・光・氷精種
Job.双聖剣士:救恤
HP:52/52 MP:87/87
STR(力) :152
DEX(器用):48
VIT(耐久):60+263
MND(精神):166+78
INT(知力):57
AGI(速度):107+40
LUK(運勢):128
BP:0
∥--スキル--------∥
[聖剣術:ホーリーウィンドlv73]使用不可
[聖剣術:セラフィナイトlv50]使用不可
[二刀流]
[神聖魔力][回復魔法の熟練]
『種族特性:水操lv58』『種族特性:水探知lv54』
『種族特性:冷凍lv63』『種族特性:水纏lv45』
【死神の加護】MND基礎値を2倍
【特殊神聖魔法:魂の浄化lv22】使用不可
【神聖魔法:レベレイション】使用不可
(双聖剣術:イルミナル・イリスlv49)使用不可
(双聖剣術:ヴァルキリーレイドlv39)使用不可
(聖剣術:デュナミスヴォーチェlv36)使用不可
(聖剣術:ヴァルキリーライズlv44)使用不可
(聖盾術:エクエシンシアlv5)使用不可
(氷精霊魔法:フェアリーバロンウィッシュ・氷lv15)使用不可
(氷精霊魔法:アイスヒールlv56)派生可能 使用不可
(氷精霊魔法:スピラルリッパーlv71)使用不可
(特殊神聖魔法:死の服従lv4)使用不可
(特殊神聖魔法:付与lv30)使用不可
(武術:パリィⅡ lv18)
(修羅道lv11)
(MP自動回復lv21)
(聖剣の担い手)(白兵魔導)
∥--装備----------∥
≪胴体≫『昇華の礼装・アクア用』 (近接攻撃ダメージ倍率×0.2 (パリィ時STR-100 DEX-75) 種族特性以外のスキル使用不可 パッシブスキルは効果あり 非常に壊れにくい)
≪腰≫ 黒神のホットパンツ (VIT+263 MND+78 AGI+40 被ダメージ-15% 常に浄化が発生し続ける 不壊)
≪下着 胴≫黒神のキャミソール (好感を抱かれやすくなる 透けにくい 常に浄化が発生し続ける 不壊 装備枠に含まない)
≪下着 胸≫黒神のブラジャー AAカップ用 (トップとアンダーの差を増幅させる 常に浄化が発生し続ける 不壊 装備枠に含まない)
≪下着 股≫黒神の紐パンツ(パンチラ時に好感度大幅上昇 魅了・強 常に浄化が発生し続ける 不壊 装備枠に含まない)
≪靴下≫黒神のハイソックス(蒸れない 目を引きやすい 常に浄化が発生し続ける 不壊 装備枠に含まない)
≪足≫黒神のローファー(蒸れない 足場から発生する悪影響を無視する 常に浄化が発生し続ける 不壊 装備枠に含まない)
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……は?なにこの性能は。このホットパンツなにこれ、下着類も装備枠に含まない癖に効果ついてるんだけど。これ終盤の装備だと思うんだが。
胴装備の礼装はスキルを使用不可にした上に近接戦闘能力を低下させるのか、これ着て戦うのはちと辛そうな。ヒールが使えなくなるっていうのが痛い。
水中にいればHP自動回復が少しだけど発生したかな、それでも辛いが。
「あの……このホットパンツとか下着って」
「龍神様がくれたんだ、サイズは合わせたはずですが、合いませんでしたか?」
「いえ!ちょっとただの服とは思えない力があったので……」
龍神ちゃんがくれた。黒神、つまりは死神様、ってことは……龍神が作ったか、死神様の服だったか、何かだな。
「今から試練に向かいますか?それとも今日は休んで、明日行きますか?」
「休んでもいいんですか?」
「ええ、服は脱いでもらわないといけませんし、明日また体を清めなくてはいけませんが」
だったら今日なんで強行したんだ……リハーサルか何か?サイズ合わなかったら合わせ直すとかありそうだな。
「じゃあ、明日からにします」
「わかりました。皆!」
ササっとローブを脱がされ、瞬く間に全部剥かれた。
そして黒色のネグリジェに変えられて部屋に案内された。
……一寸の光も通さないように巫女さんたちに周りを囲われて移動したが、人に見られる恥ずかしさなんかより息がつまる方が問題だった。
∥--装備----------∥
≪胴体≫黒神のネグリジェ (VIT+254 HP自動回復3s6800 非常に安眠できる 微妙に透ける 常に浄化が発生し続ける 不壊)
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#==武具詳細ステータス==========
黒神シリーズ
レアリティ:神話級下位
神代の防具
変なコーディネートだと性能が大幅に低下する。
黒神、死神の着ていた服。主色は黒色が多く、稀に紺色と金色が混ざっている。
神気の影響を受けて性能が大幅に強化されている。持ち主とともに成長するのではなく既に完成された装備である。
死神の認めた存在でないと装備に込められた神気を制御することができず、肉体が消滅し輪廻に還ることになる。
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