5-2 人間かAIか、特に変わりはない。
挿絵(地図)があります。
視界が開けた。まず見えたのは緑、そして聞こえたのは悲痛な鳴き声、グギャォオオ!?って感じの竜っぽい鳴き声だ。
もしやヤバい?敵の位置もシアの位置もわからないし、くろいろちゃんは背中にいない。とりあえず飛び立つ。
抜剣して盾を浮かばせて氷を纏う。
空から森を見下ろし、いた。木を倒しながら暴れる黒い飛龍がいる、落ちたのだろう。翼が対になっていない上、体がボロボロだ。
正面を見ればその飛龍の群れと戦う黒い巫女、シア。その背中には誰もいない。
遠くからでも見えるほどに長く轟々と燃え盛る刃を振るえば飛龍は吹き飛ばされ、燃えて、灰になりながら青い粒子になって消えていく。
もう一つの黒い刃で裂かれたものは墜ちてただ無様に息絶えるのを待つことになる。
一言で言えば蹂躙、または虐殺である。
放置しても大丈夫そうだしいろいろ確認していよう。
ウィンドウを使う物は見事全部使えないことが判明しました。チャット、ステータス、インベントリから設定、フィールドマップもコンパスも全てだ。
でもチャットは使えそうではある。ボイスチャットだけどな。
それ以外のスキル、体の動きやら五感、試しに腕切り落としてみたところ……痛くなかった。まあ水と氷でできた身体に痛覚を求めてはいけない。
PvPイベントでシアとやった際に体が水になったので後で調べてみたところ、全部水とか氷の性質を変えて人っぽくしているだけでした。
急所のコアが脳みたいなもので心臓に値するものはない。
腕もいでも純水集めてくっつけて時間経てば治る。気合いというか魔力込めたら早く治る。
伸ばせるし形状も変えれるし色も変えれるからキャラメイクやり直しの課金アイテムは要らないのだ。
体の形状変えるとステータス落ちるっぽいけど。
背後に人型の反応、多分くろいろちゃんなので放置。
「ほっ」
肩に重み、背中にそこそこの衝撃。髪が耳をくすぐってくる。
武器遅延射出で飛ばした武器に乗って空飛ぶってロマン技でしかないはずなのに実用化してるってすごいよね。
最短遅延でも2秒後だから空中で方向転換する場合2秒後どこに向かってるかを計算しなくてはいけない。
くろいろちゃん頭いいんだなって。
「アクア、ごー」
「はーい」
銃声、その一瞬後に左に直視しても眩しくない程度の持続する光。俺たちを狙って外したって感じでもないし、銃声っていうと……音の方向を向く。
痴幼女がいた。迎えに行く。
「すまんの」
「いえいえ」
両手でUFOキャッチャーのようにして持ち上げ、座る場所と足場を氷で作る。マジで氷便利。これだけでウィンディーネにした価値はあると思う。
そしてなんだこの胸は、腕に乗ってるしサキュバスのような格好のせいで直接触れているがやはり柔らかい。体感と目測でEはあると思われ、さらには上向いてるし120cmの幼女なのでとてつもなく大きく見える。
しかし中身が男でも柔らかいものは柔らかい、感動とか興奮より呆れが先行するけどな、俺貧乳派だし。現実では身長160cm組はFとかGばっかなんだよな、180cm組はまちまちなのだが。
貧乳は少ないようで一定数はいる。いつでもいくらでも変更できるので昔のようにコンプレックスになったりはしなかった。でも身長の下限はだいたい140cmなんだよな……現実で合法ロリって見たことない。
VRなら結構な数いるが。
「今度こそごー」
飛龍の次は空走る犬の群れと戦闘してるシアの方へ行く、飛んで火に入る夏の虫だな。自殺志願者の群れとも見える。
犬どもを殲滅し、建築物探知を使って探索をはじめる。犬は剣の通り具合から想像するにVIT100もないと思われるためレベルで考えても格下みたいだ。巣窟も後で行ってみたいんだよね。
超高レベルとの戦いをしてみたい、攻撃する度に地形が変わるんだろうか?
「反応ある?」
「ん〜……」
ピー!ピー!とハーベスト様の持っている球体の方位磁針から音が鳴る。
あるっぽいですね。
「11時方向じゃな、反応数は多いぞ」
「りょ」
「……あった、人いる。気づいてなさそう」
くろいろちゃん視力いいな、俺でも……ギリギリ建物見えるかってところだぞ。パルームの五感強化が働いてるんだろうか。それともAGIの差かな。
「じゃ、行こっか。あまり上空は飛ばずにね」
「了解です」
「水耐性100%だからスピラルリッパーいいよ」
装飾品だけで水無効って恐ろしいよな、冷気耐性もだから装備枠8枠も装飾品で埋めてるらしいけど。
だから武器二本で残りの5枠がその他の装備、まともな構成ではないな。
俺の場合武器と盾で4枠、ヴァルキリー装備で4枠、ベレヌスで1枠、残りの6枠は自由。6枠自由っていうのは普通な方だ。6枠もあればある程度の耐性揃えれるし、一部のステータスだけを上げたりできる。
「あれか、ここからは歩いてこっか」
「見えないんじゃが、スナイパーが目悪いって致命的じゃないかのぉ……」
まあ致命的でしょうね、スコープ覗けばいいとは思うし、探知でどうとでもなるがスナイパーで目が悪いってダメだろ、FPSあまりやらない素人からするとダメだと思う。
とっとこ歩いてコテージの並んだキャンプ場のような場所に着いた。
こちらを威嚇する人はいなさそうだ、攻撃されてたらまた外のツリーハウスにいたエルフみたいな面倒なことになっている。
街って感じではないが人はいるそこそこいる。
シアが俺に目配せした、おそらく道行くエルフに物を訪ねていいか聞いてるんだろう。きっとそうだ。
頷く。
シアはニコニコしながらこちらを眺めていた道行くエルフに話しかけた。俺の予想的中である。
「すみません、ちょっと良いですか?」
「あ、えと、はい。なんでしょうか巫女さま」
露骨に挙動不審、ちょっともしかしてコミュ障くんに話しかけたんじゃねえの?
それとも巫女様とか言ってるしシアが本能的に尊い人だと感じ取ったのか。それか強そうなオーラでビビったかのどれかだな。
「この樹の首都はどこにあるの?、ですか?」
この敬語のたどたどしさ、不自然なんでタメ口で喋っていいと思うんですけど。
「あ、もしやコネクターなのか?」
「うん」
コネクターは様々な世界樹を行き来する人の総称である。世界樹に縛られていない人のこともコネクターと呼ぶ。外のエルフが言ってたな。
「ここの首都は6つありまして、ここから最も近いのは北東に進んで、荒野を越えた麓にノームの街があります」
ほうほう、ノームの街ってことは他の首都は……
「サラマンダーの街も近いですが、……えっと、地図書きますので少し待ってください」
「はーい」
紙をカバンから取り出し、かなりの勢いで書き上げていく。
「できました。雑ですが街の位置は合っていると思います。緑の歪な円は山で、青色が湖、黄土色が荒野です」
……おお、雑い。わかるんだけど雑い。
っていうかヴィゾヴニルって何。あのお方は精霊だったのか?キャラメイクで選択できる種族にそれっぽいのは存在しなかったぞ。獣人・鳥ではないだろうし。
何らかの種族の進化先か?ありえない話ではないが……
「ありがとうございます。貴方に精霊の祝福があらんことを」
「「「!?」」」
穏やかに微笑み、薄く輝いた。似合わねえ。
「いえいえ、巫女さまのお役に立てたなら、それでは」
なんか急に巫女しだしたよシアが。俺も死神の巫女らしくしたほうがいい?
……でも死神の祝福があらんことをって言うの?遠回しに死ねって言ってるように聞こえる。
「ね、どこ行く?ウィンディーネとかいいと思う。アクアが強く……どしたの?顔に何かついてる?」
ペタペタとシアは自分の顔を触っている。今まで巫女とか巫女しかやってなかったせいでちょっと驚いているんです。
「シアが……ロールプレイした……」
「初じゃよの……?」
あ、初なんですか。付き合い長そうなくろいろちゃんですら初めて見るんだ。
「なんとなくノリで……変だった?」
「良かったと思うよ?」
「変ではないがの」
「うん」
「……まあ、ウィンディーネの街に行こう!」
おー、日も沈みかけだし早めに行きたいが、距離ってどうなってるんだろ。
外から見た大きさではそれほど大きくないと思うが……虚実の樹もあまり大きくなかったんだよな、中の空間を広げてあるんだと思う。
この地図はスマホで書いた上に描く用のアプリ取って完成までに20分もかかってません。




