4-7 白亜(白シルフ)戦
いやあ、くろいろちゃんは強敵でしたね……
三戦目と四戦目はフェアラート(ピエロ)よりちょっと強かったけどサクッと倒し、今から五戦目。
白亜っていう空飛ぶシルフとの戦いだ。
戦うのは白亜かセルリアっていう空色の鳥人のどっちかだとは思ったけど機動力の差で負けたな。シアの方が3倍は速いけれど。
『これより準決勝を開始いたします!左コーナーにはアクア選手!右コーナーには……』
「初めまして、よろしくお願いします」
「…………」
挨拶は大事、……大事。
正面から挨拶したというのに無反応ですよこの白シルフ。
「おい」
「はい?」
仏頂面に威圧するような声。
「お前には期待している」
【試合開始まで3】
「はあ」
はあとしか言いようがない。
何こいつ、ロールプレイでもしてるんですか、見るからに優しげな女性アバターのくせにロールプレイ合ってなくないですかね。
【2】
抜剣、インベントリを開く。
白亜は何もしない。
【1】
『空の覇者は果たしてウィンディーネか!?シルフか!?試合!開始です!』
【始め!】
「『Fリフレシュ』『マギヘイスト』『インフィニティブラスト』」
距離取られる前にさっさと叩く、こいつは魔法特化で普通に近接戦闘もこなせる。俺は遠距離攻撃手段がこいつに比べると乏しいからな。
インベントリ内の水を出しつつインフィニティブラストを受けるために二つの盾を凍らせて空中で操作できるようにする。
一発一発の威力は低いが秒間100発、100ヒットと言った方が正しいか、その程度飛んでくる。全部受けたらHPが溶けて死ぬ。
せめて全部火属性じゃなかったら受けてもいけるんだが。
「『テンペスト・詠唱』『依化・エアリアル』」
ジグザグに移動しながら接近。しかし空を飛んで逃げられる。俺より速度が速い、ジグザグに移動してるからさらに差が開く。
「『サモン・ガルーダ』」
え、何それは。エアリアルも聞いたことないしサモンも〜精霊しか聞いたことないんですが何ですかそれ。
「倒してくれ」
「キュァ」
インフィニティブラストが風属性になって、全長1mほどに巨大化したオオルリに似たガルーダが高速で接近。
当たる直前で宙の氷を蹴って左に回避、通りすがりに切る。しかし風の障壁に阻まれて切れなかった。
イルミナル・イリス入れた方がいいか、即死耐性とかこいつ持ってないだろうし急所欠損で即死するはずだ。
さっさと倒して白亜を追いかけなければ。
背後から飛んでくる風の弾丸を盾で受け止め、盾を操作する氷が砕けるたびに修復して耐える。
いつテンペスト来てもおかしくないし背後にも注意しつつ。
「『イルミナル・イリス』『アイスヒール』『スピラルリッパー・詠唱』」
「キュアアアア!!」
風のブレス、白狐を全力で投げて吹き飛ばす。ガルーダには当たらなかったが氷纏わせてあるので回収は簡単。本当に氷便利だ。
最速で移動しても逃げる鳥に追いつけない、AGIが低いって悲しい。
まあDEX上げてないとシアの攻撃パリィできないし、武器と盾以外でパリィするのが難しくなるからなあ、STRも上げてないと攻撃弾かれるし剣速が遅いとパリィが間に合わなくなる。
「『詠唱完了』」
氷の槍を纏って急接近、そのまま首を貫いて通り過ぎる直前に頭部に手を突っ込み軽く捏ねる。
即死、次は白亜だ。
魔物は首狩っても首だけで動くことあるからな、頭頂部から真っ二つが良いがめんどくさいので頭を水平に切ったりした方が良い。
くちばしが硬そうなのでそれはやめたが。
白亜を試合場の壁に追い詰めるようにしながら飛び、インフィニティブラストを避ける。スピラルリッパー再使用可能、白狐も回収した。
テンペストの詠唱時間とか知らないし、接近する前に撃たせておきたいが温存するに決まっている。
イルミナル・イリス切れたし再使用時間待つとしよう。
定期的にホーリーウィンドでインフィニティブラスト弾きつつ盾の氷も強化して。
さて、やっとイルミナル・イリス再使用可能だ。
MPリジェネレートポーションを2本飲んだが白亜は特に何もしなかった。
ありとあらゆる方向から風の刃が乱れ飛び息ができなくて氷が溶け出すのは特に問題ではない。
風の刃は防げるし、息しなくても活動できる、氷はさらに冷やせば良い。
気圧が上げられたのだが氷が高圧になると溶けるということを今まで忘れていて訳がわからなかった。
まあ対処できたので問題ではないのだ。
「『詠唱完了』『イルミナル・イリス』『ヴァルキリーライズ』」
「……来るか!」
-200℃程度に冷え切り、完全に支配下に置いた透明な氷の鎧、宙に浮く盾、20本程度の氷の武器。気圧上げられて、さらに湿度下げられてなければもっと武器作れたんだけど。空間支配の奪い合いがめんどい。
こっちは湿度ぬかれるだけでもダメなのにあっちは何もなくても大丈夫という格差。
それらを氷の槍の内に秘め、纏って、突っ込む。
「『詠唱完了』!『ルインテューン』」
やっぱ来るよなテンペスト!
スピラルリッパーの回転に乗って虹色に輝く両手の剣を開き竜巻を切り開き、盾で夥しい数の風の刃を防ぎ、それでもバキバキと氷が割れていく。
さらに黒板を引っ掻くような音とともに氷が砕ける、破片を集めて修復。溶けなければ一応大丈夫だ。
イザナミを左脇、白狐を右肩に当たるように調整し、回転を維持しつつ体がぶつかる直前で停止する。
剣は弾かれ、スピラルリッパーは霧散。
風を纏った貫手を盾で弾いて、イザナミで斬る。受け止めようとしたみたいだがそのまま手を斬り落とした。血は出ずに青い粒子となって霧散した。
そして胴体に火の砲弾が直撃する。氷の鎧が防いだが一部溶ける、気圧下がり過ぎで融点が近い近い。
やはりゼロ距離でインフィニティブラスト受け続けるのやっぱきついな。どこから出てくるのかわからないから全身守らなくてはいけない。
「ははははははっ!『エアヒール』『エアリアル・依贄』『精霊剣・エリス』」
「『アイスヒール』」
宣言し出したから頭狙ったけど笑いながら流された。
風は切れてるんだけど消えた瞬間に再生するから意味がないというね、シルフ便利すぎでしょう。おまけに切り落としたはずの手が再生している。早くない?
エアリアル・依贄を宣言された瞬間に攻撃の流しづらさ、速度、重み、さらには全方位から来る風が非常に強くなった。
物理攻撃は全部パリィできてるし強化されたところで特に問題はないけれど、……風がヤバい。
氷がバキバキ割れるわ、気圧がさらに下がるわで周囲に浮かせた氷の武器は砕け散ったし、氷の鎧も割れ始めた。HPもガリガリ削れていく。
鎧自体は無事だが服が破れて少々扇情的な姿になってる気がする。
ロリっ子なので無問題だな、多分。
イルミナル・イリス切れたら攻撃が激化するだろう。が白亜のHPが勝手にぐんぐん減っていっているので耐えれば勝てそうではある。
エアリアル・依贄使ってからなので俺が何かした訳ではない。
っていうか白亜がタレ目がつり目になるほどに目を吊り上げて口裂け女のごとく笑ってるのが怖い。
完全にヤバい人だよ、戦闘狂も真っ青だよ。
接近戦になってから目が変わったんだよなぁ。
「終わりだな!小娘!」
イルミナル・イリスが切れた。拳を斬ると風に巻き込まれて剣が弾き飛ばされそうになる。柄を握りしめて抑えると剣が殴られ白狐にヒビが入った。
風の攻撃も撫で切って霧散させれなくなったので防ぎ切れなくなりどんどんと削られていく。
やはり攻撃的になった。もうパリィはできないと思ったのだろう。まあ、どうにか流すが。
しかしどうしようもないな、このままだと耐えれるかわからない。さらに言うと装備が壊れるのが嫌だ。
……仕方ないか、禁じ手を使ってでも耐えてみよう。
「『セラフィナイト』」
ヴァルキリーライズによって効果が3倍になったセラフィナイト。
元よりパリィに大幅な補正がついていたがそれが3倍だ。
さらには全ステータス上昇効果までついてくる、体感で剣速が2.2倍まで跳ね上がっているし、動体視力も上がったのかよく見えるようになった。
なら当たる訳がない。
ギリギリ融点突破しない氷で風は流して正拳突きをいなしつつ風を利用し二盾と二つの剣でボッコボコにする。
掴みかかった手を弾いて大上段に振り上げたイザナミで肩を斬り、無茶苦茶な風を盾で流して利用し回転をつけた盾で顔面を殴りつける。両方とも風に阻まれてほとんど効いていない。
風の障壁に阻まれてまともに斬れないが捻じ込めば撫でる程度には斬れる。風を利用すれば威力も上がる。
30秒もあれば何回攻撃できるだろうか。数える気にはならない程度には攻撃できるだろうな。
でも簡単にパリィできすぎてヴァルキリーライズ付きセラフィナイトはやっぱり楽しくない、初心者でもパリィ余裕だと思うよこれ。
竜巻の中で舞うようにして斬り、盾で殴り続ける。
ボッコボコである。
何かしたら全部自分に返ってくる。全部利用される。
何もせずに棒立ちの方がダメージ少なくて済むと思われるほどに。
30秒ちょい経過、セラフィナイト終了。あまりダメージ出せなかったがあと5秒もすればエアリアル・依贄の効果で自滅する。
「……ここまでしてやられるとはな」
「少々チートくさい組み合わせだし仕方ないですね」
風が止む。
ふむ、とどめは俺の手でってことですかね?
胸元で腕をクロスさせてそのままX字に切り裂く。
HP全損、地面へと落ちていった。
……予想以上に強かったな。シアよりは遥かに弱かったが。
シルフの風精霊魔法使い、空が飛べてしかも風精霊魔法に関してはエキスパートであるシルフ。空が飛べる時点で強いですし風精霊魔法も汎用性が高く、基本的に不可視の攻撃であるため優秀です。
酸素を消すことによる窒息ハメも可能な上に、高火力である火属性と非常に相性が良いです。水素やら酸素集めたり、逆に抜くことで鎮火したり色々と。
獣人・鳥も似たようなことができますが、劣化版になります。




