3-10 らせつw討滅戦
【実在の 羅刹 蔓延る 混沌の 雪原】
69階、最終階の証である白い空間に着いた。
実在はAI大幅強化だったか。
「おお!着いた!」
着きました。背中でパタパタとイルミさんが喜ぶ、楽しそうで何よりだ。
正面にある水晶を覗き込む。
「ふーむ?……二人の侍?」
「人型でAI強化されたボスとかすごく楽しそうですね!シア!」
「だね!アクア!」
いえーいとハイタッチ。PvPの練習にもなるし、絶対楽しい。
ほぼ確実に即死ゲーなのが気にくわないけどな。ミサンガゲーだこれ。
「こんの戦闘狂どもは……」
「でもシアなら人型と相性いい」
武器からして対人の相性最悪だと思うんですけど。
それを無視できるくらいプレイヤースキルが高いんだけどね、シアは。
「素材何落ちるんだろ、βテストで侍の敵とかいなかったし」
「とりま、準備準備!」
準備っていってもバフはボス出したら消えるし、装備変えとアイテム整理……今なら付与アイテム作るというのもあるか。
「付与どうする?」
「要らないとは思うけど……保険でセラフィナイト3つ頂戴、私自身にはイルミナルイリス」
「了解」
保険とは思えないほどにガチの付与構成である。いやまあここまで来て負けるってのは勘弁してほしいが。
「準備に時間かかりそうじゃしこちらもアイテム準備でもするかの」
「黒は修理する、脱いで」
「イルミちゃんは防具にエンチャント入れるよ!」
セラフィナイトは再使用時間2分56秒、効果時間30秒、イルミナル・イリスは再使用時間2分、効果時間32秒。
休息中の再使用時間は2倍の速度で減るとはいえ、俺の準備も含めるとちょっと長いな。
あ、ちょ待って、待って、脱ぐから。外すから。くろいろちゃん剥こうとしないで。あとこの溶けた銀塊とか直るんですか?直るんですか、マジですか。
「いい?」
「「「いいよ」」」
「うん」
水晶に触れて、閃光に包まれる。
白い空間はそのまま白く、雪原となり凍える冷気を持つ。
正面には190cmほどの侍が二人lvは61、種族は全身を鎧で包んでいるため推測できない。だが人型だ、VRゲームの中で最も戦い慣れ、最も攻撃の多様性に長ける人型。
端的に言ってカモである。
二人の侍は白く、しかし血のような赤黒い靄を纏う刀を抜き、それを俺たちに突きつけた。
この刀の靄に当たったらダメージ受けたりするかな。
「よくぞここまでたどり着いた」
「我らの名は羅刹。この世界の具現なり」
「汝らに力を手に入れる権利があるか」
「否か」
「「証明してみせよ」」
前口上あるのか、AIランクの高くなったランダムダンジョンの敵は喋るらしいしこれもそうか。
こちらも剣を抜き、戦闘態勢に移る。
「『Fセラフィナイト』『Fスピラルリッパー・詠唱』」
「『インフィニティブラスト』『Fレゾルーション』『F精霊の慈愛』『F精霊剣・ハルモニア』」
「支援、『鼓舞』」
「隠密いくよ!」
「頑張るのじゃー!」
戦術は俺とシアだけで片付ける。ただこれだけだ。
生産組はAIランクが高いので集中攻撃されると判断、なので最初の支援だけして隠れることに。そのためのアイテムは腐るほどある。
もし知覚されたら……回収してどうにか戦う。範囲攻撃は知らん。シアがどうにかするだろう(丸投げ)
空は飛ばずに地に足をつけて斬り結ぶ、薬品によるバフ、パリィ成功率強化のおかげでこの低いDEXでの受け流したり、いなしたりができる。
セラフィナイト中は適当にやっても流せる上に弾く事すら可能だ。というか簡単すぎてパリィが面白くなくなる。俺が求めるスリルや快感がなくなってしまうからあまり使いたくはない。
切り結ぶ。弾く。侍は一歩下がった。
「小さき氷精よ、なぜお前は戦う?」
あん?……そうだな。行動と言葉で示してやろう。
「『Fイルミナル・イリス』戦うために戦うのじゃダメですか?『詠唱完了』『Fヴァルキリーレイド』」
薙ぎを流してもう一本の剣で脛を斬り、侍のちょうど背中にぴったり先がつくように氷刃の螺旋槍を発生。
そのまま俺めがけて撃ち、虹色に輝くイザナミを鎧を貫き肩関節に突き刺しながら深くえぐり込むように吹き飛ばさせる。
そのまま肩関節をぐっちゃぐちゃにするように光り、斬り踊って腕をもぐ。
はっはー、喋らせて油断誘おうたって無駄だぜ、武道を重んじる侍くん。
「……修羅か」
「そのためにここに来たんだから不思議じゃないですよ?」
戦うためにこのゲームやってんだからな。
ってか羅刹のくせに硬いね、このボス。ダンジョン特性息してる?
◆ー◇ー◆
「精霊の巫女よ、お前は何のために戦う?」
え、なに?イベント?
……そうじゃないっぽい?普通に攻撃してくるし。
あ、それは軽い。振り切ったレバ剣を握る右手を放してそのまま肘で刀を弾く。こんな長い剣でパリィなんて狙ってはダメだから慣れたもの、私の戦闘スタイルって本来違うしね。
インフィニティブラストによる風でレバ剣包んで振り、手元に戻し、もう一本の大剣でがら空きの胴を薙ぐ。
……で、なんだっけ。何で戦うかだっけ。
「暇つぶし!」
この一言に尽きるよね、もう高校の教育課程は修了したし、残るは彼氏作って生きるのみ。
かといって良い男が知り合いにいるわけでもないし、部活も世界一取っちゃったし、あとはゲームで一番とか取れれば……って思ったけどPKer世界一位を大手ゲームで取っちゃってから燃え尽きたんだよね。
だから今はただの暇つぶしなのだ!ブレ蟹で暴れすぎて運営に怒られたからね、あはは……
「目的はないのか?」
「何にも?」
しかしこのレバ剣使いづらいな、大きすぎるから振るの遅いし、風で加速させるにしても微妙。
スキルで高速化するのが一番良いけど当てたら大体の敵は即死。
せめてアクアちゃんが終わるまでこいつと遊んでなきゃだから殺すわけにもいかない。
心臓目掛けての突き、半身ズレながら肘で弾く。
弾いた刀を……
「『Fアブソリュートエンド』!」
レバ剣で叩き斬る。
その刀の刀身は砕け散り燃え盛る。すぐに捨てられ侍の手元に再生成。
これで……10本目?こいつ何本武器持ってるんだろ。
◇ー◆ー◇
HPが50%切った。目の部分が光りだした。呼吸の間隔が変わって吐く息が白くなった。元は白くなかった。
刀振る以外の行動しなかったのが変わるかな?
斬撃は飛んだけど、それゼロ距離で意味ある?って感じだったし、上に狙って流す余裕まであったしで……
墓守のが強いな。レベル考えたとしても墓守の方が面倒臭い上に強い。行動パターン多いし。
「修羅の道を歩む者よ。今ここでその道の険しさを知っていけ」
これ適当にとか暇つぶしとか答えた人どうするんだ。行動パターン変わらないとかなのか?
刀納めた。居合?1フレームあったらパリィ余裕ですよ俺。
0.3フレームは頑張れば、それ以下はちょっと体が追いつかないかもなのでほぼ予想になってしまう。姿見えて音聞こえたら60%くらいで成功するが。ステータスさえ追いつけば100%いけるが。
一応保険。
「『Fホーリーウィン……」
「往ね」
背後の雪がボコッと盛り上がり、バババッと。魔法乱射!?
「ド』!『デュナミスヴォーチェ』!」
土の矢の雨を散らして追加のデュナミスヴォーチェで突っ込んで来ていた侍の分身どもを一旦弾く。
「なんで増えてるの……」
げんなりしながら眺めると全員刀は握らず、HPゲージは全員50%、本体がいるのか知らないが、見分けはつかない。
「「「「「「これが修羅道なり、戦い続けよ」」」」」」
うっわめんどくさ。
◆ー◇ー◆
侍のHP50%切った。
アクアちゃんの方は面白いことになってる。負けそうな気配はないけれど、一回攻撃くらってHPが1になってた。
一撃でこれか〜、まあ羅刹なだけはあるんだろう。
「もう一度問おう。お前はなぜ戦う」
もう一回問うの?ならばもう一度言おう。
「暇つぶし!」
私は嘘をつかない。親にそう育てられたし、ゲームのPES相手にしてると嘘見抜かれてたりするから嘘はつかない方がお得。
それに私の遺伝子が本能が考えずに本能的に動きたがる、だから策略なんて私にはできない。
「ならば、往ね」
全身から緑色の火を出し高速で連続攻撃してくる。インフィニティブラストによる爆風を起こし下がって避ける。
この剣で対応する方法は……切るしかないよね。
「そりゃ!」
横振りのちょうど良いタイミングで振り、刀を縦に砕く。
レバ剣のリーチが想定より長くて籠手も砕いた。ついでに燃えた。
羅刹の顔が引きつってる気がする。また刀を出した。
……うーん、数増えたら増えたでレバ剣無双できたのに。
【羅刹 蔓延る 混沌の 世界を踏破しました!】
#==リザルト==========
MVP:アクア
ファーストアタック:アクア
ラストアタック:アクア
最多ダメージ量:5606(アクア)
史上初踏破ボーナス
初踏破ボーナス
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【世界踏破の報酬を以下から選択してください。】
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幻想級オンリーウェポン
幻想級オンリーアーマー
ガダラルブレイド(片刃長剣 ダメージ倍率×9.2 被ダメージ倍率×2 STR+20 INT+20 火属性)
ガダラルブレスト(胸装備 被ダメージ倍率×1.4 STR+15 INT+15 【真語魔法:ファイガ】)
混沌の魔眼
スキル(スタンス:戦闘狂)STR×1.5 思考レベル低下、MND半減、精神状態異常耐性・特強
スキル(修羅道lv1)一部の行動にスキルlv%の補正 非戦闘時間の経過によりスキルlv低下
経験値+
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シアのリアル設定
人類の超越種を作ろうとしていた犯罪集団の産物。その犯罪集団はすぐに取り潰されたがそれまでに作られた子供達の一人である。失敗作だが作られた子供達の中で最も欠陥が少ない。
思考能力は常人の数倍だが理性とも呼べる欲を抑える力が欠如している。
身体能力は人としては高い。が細胞分裂速度が非常に遅く薬なしでは生きることが困難である。
見た目でも欠陥が存在する。人の耳と犬によく似た耳があるのだ。両方あるのだ。現代では両方ある事例は非常に少なく一種の奇形児として扱われる。
思考能力が常人の数倍なのでVRへの適性が非常に高い。ありとあらゆることに慣れる速度が数倍で、反射速度も視覚やらの情報処理と修正能力数倍って考えるとやっぱりとんでもないのだ。
この小説での常人は全員が遺伝子操作された超天才であることをお忘れなく。




