3-9 怪獣戦争に巻き込まれ
付与のスキル詳細をPTチャットにコピペする。
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アクア:死神の新特殊神聖魔法が出たので貼ります。
アクア:(コピペ)
イルミ:なにこれ?新しい神様の魔法?
ハーベスト:簡易的な印石作成か
くろいろ:効果時間によっては生産職にも使える
leader.シア:はい!ヴァルキリーライズホーリーウィンド付与した石配ればすっっっごい強いと思います!
アクア:ヴァルキリーライズ弱体くらったせいでそこまで効果は……
イルミ:効果の短いバフも保存して連続で使えるってこと?つよっ!イルミも欲しい!DEX上昇スキル連続で使えるようにしたい!
アクア:レベレイション掛けれますよ
イルミ:いいの?お願い!
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信者が増えた。
物欲にまみれまくった信者がここにまた一人……
『……役に立てたようだね。良かったよ』
!?……死神様、ありがとうございます。
「『Fヴァルキリーライズ』『付与』『Fホーリーウィンド』はい、どうぞ『スピラルリッパー・詠唱』」
【投げナイフ(付与・ホーリーウィンド)をシアに譲渡しました。】
「これで切り札3つ目!」
「最初のやつまだ効果ある」
「この時点で神スキルだね!」
「MP大丈夫かの……?」
「群れに当たったらすぐ倒さないとですし、気にしてられませんよ『アイスヒール』」
元よりHPとMPを食い潰しながら戦うスタイルだし。
今だったらMPリジェネレートポーションは無制限に使えるし、くろいろちゃんのマギコネクトのおかげでMPが減ることはない。効果時間長めのHPリジェネレートポーションもあるが、これは高速で移動する時用だ。
「オギャァアア!オギャアアアア!」
甲高く、耳に残る赤子特有の泣き声が燐光放つ薄暗い荒野に響き渡る。普通の赤ちゃんの50倍は声が大きいので堪らないね。
「げぇ!」
「うわ」
「のじゃぁ……」
「『詠唱完了』行け!」
「おお、早い。けど……」
ゾンビの赤子は感知範囲が非常に広く、その泣き声で周囲の敵を大量に集める。攻撃はしてこないが攻撃力の高さが声量に関わっているようで、通常の赤子に比べて声が非常に大きいのだ。
今は混沌なのであまり意味はないが女ゾンビの耐久力を跳ね上げる効果もある。
音の方向で予想してぶっ放したが……
「オギャ……ァ」
当たったらしい。吸い込み効果もあるし狙いが大雑把でも当たるあたりスピラルリッパーは強い。
「死んだ?」
背中のイルミさんが体を乗り出してジッと氷槍の過ぎ去った先を見つめる。ドワーフのAGIと基礎視力では見えないと思うんですが。俺でも見えないのに。
「元から死んでる」
「ようやるのぉ」
ガガガガガ、ビチャビチャ、ドスドス、バキバキといった多種多様の足音と音が多すぎてワーワーとしか聞こえなくなった鳴き声をあげながら大量の敵が迫る。
その音が聞こえた直後、シアに風が収束し、爆発。
「逃げる!」
「混乱袋投げる」
「いろいろ持っとるの」
「ハイドポーション散布するよ!」
「『付与解放』」
自分の体に付与したスピラルリッパーを発動、シアを追いかける。
……詠唱なしのスピラルリッパーでは全然追いつけそうにないなぁ。
67階、【巨大な 羅刹 蔓延る 混沌の 街】
「あー、巨大きちゃう?移動めんどくさいなぁ」
巨大な、文字通り全てが巨大になる。敵は勿論、ダンジョンの規模、内容etc……
敵が大きくなると攻撃モーションの速度が若干遅くなり、攻撃力と攻撃規模が途方も無いほどに増える。ドロップアイテムも増える。
大きさの上昇率は3倍〜50倍だとか言われているが、基本的にはこのくらいってだけなので、DWやらはもっと大きかったりするらしい。
「逃げてるだけ、つまらない」
「風圧だけでわしら死ぬと思うんじゃが」
実際即死すると思う。
でも身代わりのミサンガマジ有能、素材にレアアイテム要求しすぎだけど。
「あと何階かな?」
「最大でも83ですからもう終わると思いますよ」
「もうちょっとだ、でもこのメンバーじゃなきゃここまで早く行けなかっただろうね」
「ええ、生産職の支援がなかったら敵の対処はできなかったと思いますし、飛べなくても無理でした」
DWしかいないモンスターハウスとかな。まさに九死に一生を得るという経験をさせてもらった。
ってかとんでもないくらい大きい竜と巨大人型兵器が街中で戦ってるんですけど、特撮の世界かな?
「ちょっとバレるとまずそうだから隠密系セットお願い」
「とりゃ、……これだけで30万」
くろいろちゃんがアイテムを使用すると同時に、良性状態異常欄に不可視,遮音,消臭,熱感知無効化,魔力感知無効化,隠密がズラッと並んだ。
「サイレントジェムは要らんと思うぞ……?」
「あ」
「プリズムパウダーが高いからねー」
「スキル使うと効果切れませんでしたっけ?」
「切れないよ、アクアちゃん」
そうだっけか。これ聞いたの二回目な気がする。前のゲームだと隠密系の状態変化は攻撃行動すると切れてたんだよね。
「ま、まあ。急ごう!」
不可視アイテムのプリズムパウダーの作り方が7色それぞれの光虫のレアドロップを使うので高い。
ただの光る粉でしかないので混ぜてるだけだと思われるが、スキル要求値も現時点ではかなり高く失敗しやすいらしい。
ズキューン!
巨大なビームが急に飛んで来て一瞬にしてHPが1になった。ビームは熱かった。それはもう熱くて熱くて装備が溶解してしまう程度には熱かった。
アクア自身は身代わりのミサンガのおかげか溶けたり、部位欠損になったりはしていないが。
……そして翼が消失して落ちる。
「アクアああ!?」
「ミサンガがなかったら死んでました『Fアイスヒール』」
「イルミちゃんも久々にビビった。いきなり飛んできたよ」
流れ弾に当たるだけで死ぬ。M○の戦闘に巻き込まれる一般人の気持ちがわかった。溶けて燃え尽きた衣服は冷やしてそれっぽく固めようとしたが無理みたいだ。インベントリに入れておこう。
ゲームの仕様のおかげで鎮魂のワンピースは一部が灰になり全体が煤ける程度で済んだが、ステータス補正は0である。
そしてアイスヒールで回復したことで翼を再展開、シアが飛んできて千早をかけてくれるが、これ透け透けなのでちょっと扇情的になると思うんですが。大丈夫です?
「これは本当に急いだ方が良さそうだね」
「死ぬのいや」
「灰色のグ○っぽいのぉ」
「『Fスピラルリッパー・詠唱』もう一発来る前に早く行きましょう」
連続で食らったら俺もイルミさんも死ぬからな。
「次の階行ったら装備直すよ!」
「あ、お願いします」
ちなみにイルミさんの装備もそこそこズタズタです。溶けた銀が体に染みるぜ。
このユグドラシルコネクト・オンラインは主にバフと装備ゲーです。この時代のアクション系VRゲーム全般に言える事ですがパリィと回避がくっっっそ重要視されます。FPSでも銃弾は叩き落とすか避けるのが一般的です。
回避率が数値じゃなくてほぼ完全にプレイヤースキル依存だっていうのが影響してます。
まあ、このゲームは防御装備固めて盾で攻撃受けたら死ぬことはまずないので、そこまでパリィやらは重視されてません。
さらに言うと範囲攻撃が多いので回避できないことが多いですし弾くのも難しいです。
ヴィゾヴニル戦の巨大火球とか素晴らしい例ですね。
故にパリィゲー、回避ゲーではない。以上!




