2-14 太陽鳥ヴィゾヴニル戦
空を埋め尽くすかのように飛ぶ太陽、そう感じてしまうほどに巨大で神々しく、偉大で手の届かない存在。ヴィゾヴニル。
ただ敵であるからには倒すべきで、倒されるべき存在であることには間違いない。ゲームとは得てしてそういうものである。
戦えない相手の方が恐ろしく感じてしまう俺はおかしいんだろうか。お化けとか怖いしそういうもんだと思う。
「肩慣らしだ。耐えてみせよ」
ヴィゾヴニルの上に巨大な火の玉が出現。熱気がここまで伝わってくる。
「『MN6』『カウンターマジック』!」
「相殺して!『インフィニティブラスト』!『F精霊の慈愛』!」
「スパイラル、じゃなかった!『Fスピラルリッパー』『Fイルミナル・イリス』『デュナミスヴォーチェ』!」
「『ランパート』!『ホーリープレッシング』『ホーリーサークル』『スピリットコネクト』ぉお!\\\\٩( 'ω' )و ////」
「頑張れ『鼓舞』」
「わ、我何もできないんじゃが!」
金色の格子が、虹色に光る繭が身を包み、白色のベールが俺にかけられ光の円がグラムさんから放たれ、青い線がグラムさんを中心に全員に繋がれる。
水の玉が巨大な火の玉に乱射され、渦巻く槍にも見える吹雪が当たり、散る。
虹色の衝撃波が一瞬火の玉を押すが意味はなく、悠然とヴィゾヴニルの頭上に漂う。
まずい、あんな大きい攻撃なんて受けるか大きく避けるかの二択しかない。
パリィできるような攻撃ならどうとでもなるんだが。
「では、いくぞ」
「ちっ!」
「『Fセラフィナイト』!」
直後火球が高速で迫り、直撃。
焼けるように熱い。衝撃で吹き飛びながらもPTメンバーのHPを確認する。
#============
ベジタブル:HP21/48 MP55/67
グラム:HP1/102 MP20/34
シア:HP50/51 MP34/38
アクア:HP1/60 MP62/69
くろいろ:HP40/43 MP14/14
ハーベスト:HP24/24 MP30/30
#============
よし、全員生きてる。
セラフィナイトの効果で即死耐えたが、シア、くろいろ、ハーベストのダメージが少ないな。避けたか?
それよりこの吹っ飛びをどうにかしないと。そう思った直後スピラルリッパーの再使用時間が終わった。
「っふ、『スピラルリッパー』!『アイスヒール』!」
爆煙でよく見えないが飛ばされた方向の逆に跳べばいいだろ、氷刃の槍に同化して一緒に飛ぶ。
うまい具合に衝撃は吸収してくれた。
しかし、熱い。溶けそう。多分溶けてる。
スピラルリッパーに巻き込まれたおかげで体温は下がるがスピラルリッパーがスパイラルカッターになりつつある。
どんなに気温高いんだよ。
ヴァサっと上空から風が吹き、爆煙が消える。
そこにあった草花は消え失せ、赤いクレーターしか残っていなかった。
あそこに戻ったら熱でダメージ食らいそうじゃん。
危ないからその前くらいで半分水となった氷の槍から降りる。
「アクア!グラム!無事!?」
「食いしばりなかったら逝ってた『ヒール』_:(´ཀ`」 ∠):」
「セラフィナイトで耐えました」
アイスヒールあと3秒か、HPは34。
「野菜さん無事だったのか(=´∀`)人(´∀`=)」
「シアちゃんに助けてもらった」
「耐えれそうにないのが生産二人とリーダーだったからね」
「いつもの三倍速だった。シ○アだった」
赤かったのかな、というかよくいけたな。
「ナイス判断です、あとおれ種族変わったせいで火耐性激減してます。-50%です」
「マジ!?」
「マジです『Fアイスヒール』」
「そろそろいいか?」
「「「「「「!」」」」」」
談笑してる場合じゃないや、今負けイベントの最中だったわ。
「お前たちが想定より弱く、手加減をしなくてはいけないことがわかった。だから」
ヴィゾヴニルの周囲に大量の火球が浮かび上がる。
「俺を落としてみせよ」
無理だろ。
#==pt_chat==========
シア:落とせる技持ってる人!はい!武技全般!
アクア:はいホーリーウィンド。
leader.ベジタブル:0距離空鳴拳ならワンチャン
グラム:ない(´・ω・`)
くろいろ:爆弾持ってる
ハーベスト:ない
#============
そして火球がシアのインフィニティブラストのごとく乱射される。
最も簡単なのはシアの支援して落としてもらうことだが、……この距離でもホーリーウィンド届くか?
ヴァルキリーライズの弱体食らってから距離やら範囲がいまいちわかってない。動物戦争の時の感覚でいくと失敗しそうな気がする。
火球が目の前まで来た。踊るように流して回避する。剣が融けると嫌なので大体イザナミで流す。イザナミなら不壊だしな。
シアは水のインフィニティブラストで迎撃している。迎撃してこの数なのか……
グラムさんが幼女二人の盾になり、ベジタブルさんは幼女二人に紛れて武器変えてる。
「どうした?受けるだけでは終わらんぞ?」
「っ!アクア!」
「スキル再使用時間終わるまで待って!」
多分一緒に空飛ぼうって言ってるんだが、デュナミスヴォーチェという遠距離範囲技、それとセラフィナイトの再使用時間が終わるまではダメだ。
それで失敗したら目も当てられない。
「了解!」
「どーすんの!」
赤色の宝石のついたナックルガードを装備し、ベジタブルさんが跳ねて火球を撃ち落とした。爆発したがダメージはあまりなさそうだ。
「アクアと飛んで落とす!飛ぶ前にバフお願い!」
「おけ!『ヒール』(`・ω・´)」
「了解!」
「わしら要らない子じゃのぅ」
「黒はMP回復とか色々役に立ってる」
「我、なんでいるんじゃろ……」
ひゅんひゅん避けてくるくる流す。そうしながらグラムさんの方近づいて、グラムさんの守る範囲を減らす。
流す方向間違えたら大惨事だが、直線で飛んでくる玉とか流すのチョロい。
未だに一個も爆発させてないし、一発も当たってない。下手に流すと爆発するので若干チョロくはないが、大丈夫だ。
「つまらんな、追加だ」
「げっ!?」
「発狂!?」
「つらたん( ;∀;)」
「むぅ!」
「わしら気楽じゃな」
「同意」
だけどあまりにも火球の数が増えた、増えすぎた。これなら。
「シア!誘爆!」
「なる!」
水のインフィニティブラストから土のインフィニティブラストに変化。火球が爆発、それに誘爆する形で他の火球もどんどん消える。
結果的に楽になった。
「そう対処するか、面白い。だがつまらん」
火球が収まり、火で作られた鳥が放たれる。それと同時に二つのスキルが再使用可能に。
火の鳥が地上に届くまでの間に行く!
「シア!」
「バフお願い!」
「『ランパート』いてら!(`・ω・´)」
「『MN2』『カウンターマジック』『MN2』『エンチャントウェポン』!がんば!」
「『鼓舞』暑いの飽きた。これ、爆弾」
【くろいろからミーティアの込められた印石を譲渡されました。】
【くろいろから小型爆弾×32個を譲渡されました。】
「頑張るのじゃ!ふれ!ふれ!」
バフ、応援と隕石落とす爆弾に大量の爆弾をもらったところでシアの背中に乗る。おんぶ紐らしき物に腰掛け、白い千早に顔を埋める。
「行くよ!『Fレゾルーション』!『インフィニティブラスト』!」
「うん!『Fイルミナル・イリス』!」
爆発的に加速、顔を埋めるくらいに抱きついてなかったら振り落とされてた。
「アクアちゃん冷んやりしてて気持ちいい」
「いいから!」
「へへっ」
へへって……緊張感ないなぁ。俺はドキドキっていうよりワクワクしっぱなしだけど。
風のインフィニティブラストで飛び、水でホーミングしてくる火の鳥を撃墜。
直線で向かうには数が多すぎるので少し避けつつも最短距離で突き進む。
「ふむ。黙って落とされてやる必要もないしな」
その一言と共に翼を振るい攻撃してくる。
「いっ!?」
「っ!『スピラルリッパー』!」
シアが避けようとしたが間に合いそうにない。
だからおんぶの状態からちょっと跳んで浮かび、巫女服の襟を片手で掴んで胴体にスピラルリッパーを受けて加速。
シアが受けるとダメージ受けるし、制御できないし危険だからね。
「おおお!?すごい!」
「うまくいったけど、これ3秒に一回だから!」
「十分当てにできる!」
そういえば千早の中って涼しいんだな、千早の属性耐性のおかげか?羨ましい。
次は、突進。チャンスか?
「落とす!?」
「やってみる!」
「おけ!」
進行方向と思われる場所から予備動作中に高速で退避して、シアが大剣を振り上げる。腕に頭あたりそうだった。
直後、爆発音、大気中の分子と思われるものを可視化するほど扇型に撒き散らし、衝撃波で吹き飛ぶ。
ソニックブームかあれ。シアの後ろにいたから直撃はしなかったが……ってシア気絶してる!HP7割消えてるし!インフィニティブラストが解除されて落ちていく。
「『アイスヒール』シア!起きろ!起きて!落ちるから!……っち!」
揺すって起こそうとするが、火の鳥まで来た。ヴィゾヴニルは下にいる。俺らを見てる。
「『スピラルリッパー』!シアってば!」
スピラルリッパーで移動して避け、小型爆弾を全部投げて火の鳥を殲滅したがスピラルリッパーは3秒後まで使えない、その間に火の鳥がくる。デュナミスヴォーチェはあるが一回だけだ。ホーリーウィンドはヴィゾヴニル落とすのに使う。
……殴ったら起きるか?
「この!」
剣の腹でふとももぶん殴ったが起きる気配はない。
……そうだ、急に冷やしたら起きるんじゃね?
種族特性の冷凍も使用し、首から背中に手を突っ込む。
「ひゃあああああ!?え!?なに!?」
ナイス俺、これ以上やるとセクハラコード出そうなので手を抜く。
「起きた!火の鳥来てる!」
「あ、おーけー!『インフィニティブラスト』!」
食いつかれる直前で回避、イザナミで切っても良かったが爆発されたら厄介だしな。
「次なんかされる前に落とす!」
「了解!」
「では何かするとしよう」
しなくていいです。
正面に魔法陣が大量に出現、そこから橙色に光る鎖が生え、射出される。
「アクア!」
「やるの!?『Fデュナミスヴォーチェ』!」
衝撃波で吹き飛ばし、道ができた。が、さらに出現。
「アクアぁああ!」
「2秒後に加速!『スピラルリッパー・詠唱』くらえミーティア!」
くろいろから貰ったミーティアの印石に魔力を込めて投擲、0.5秒後に発生して上空から隕石が落ちるという仕様の元、隕石が俺たちの前を先行する。
隕石が鎖を弾き、俺たちは風を纏って突き進む。
どんどん削れて小石のようになってしまったが、
……ついた!目の前にヴィゾヴニル!
「『Fバーサク』『Fアブソリュートッ!エンド』!」
赤いオーラを纏い、光剣でヴィゾヴニルを斬りつける!
仰け反った!追い討ち!
「『Fヴァルキリーライズ』!『Fホーリー」
「まだ!『Fスパインチラー』!」
シアの声で一瞬宣言を止める。
その間に氷の水平斬りと、唐竹斬りを飛ばして吹き飛ばす。
だがこの程度の速度で落としてもすぐに立て直すだろう。立て直すことができるだろう。
「いって!」
「……ウィンド』!!さらに『詠唱完了』墜ちろ!」
光の爆風、風の弾丸、氷刃の螺旋槍、これらを受けてさらに加速して落ちていく。
「なかなかの健闘だな、だが……」
「グラムぅぅうう!飛ばせぇえええ!」
「おおっらああああ!\\\٩(๑`^´๑)۶////」
「『鼓舞』」
「リーダー!」
「……!」
「『魔力撃、強化ⅩⅩⅦ』終われ!『空鳴拳』!!」
空間を叩き割り、放った拳は見事ヴィゾヴニルの腹を捉え、地面へと叩き墜とした。くろいろさんとかとか潰れてない?大丈夫?
跳んでそのまま落ちていきそうになるベジタブルさんを回収して着陸。
「ククク、見事だ。よくぞ俺を墜とした。不可能だと思っていたが、案外やるものだな」
「最後だけ、リーダーがリーダーしてた((((;゜Д゜)))))))」
「茶化すな」
ゴツンとベジタブルさんに殴られた。
「すいまえん(´・ω・`)」
「よい、その程度でこの俺を墜としたという事実は揺るがん。……さて、なにか欲しいものはあるか?」
報酬キターー!!
いやあ、負けイベントくさいものに勝つと大体後の展開変わらなかったりするけど何かあると嬉しいよね。
ヴィゾヴニルはPESだから生きてる人間も同然だけど。
「黒はすごい素材が欲しい」
「私は武器かな、オンリーウェポンないし」
「俺は力が欲しい!(*゜▽゜*)」
「我も素材じゃな」
「俺はなにか良い物が欲しい」
えっ、えっ、みんなそんなにすぐ思いつくの?
俺、どうしようかな。装備は武器二本ともオンリーウェポンとかだと買う楽しみがなくなるし、防具はこれ気に入ったし……
なにか欲しいもの、ねぇ……
「アクア、お前はなんだ?」
「はへ!?翼が欲しいです!」
「ほう、面白いものを頼むな」
強さって言おうとしたら舌噛んだだけです。でも翼もいいな。シアに頼らなくても空飛べるし。
「しかし無理だ。力を与えるにしてもお前では相性が悪すぎる」
「ですか……」
属性相性的にダメダメだしな。
「だが仮の翼なら与えれるかもしれん」
「そうなんですか!」
マジか。多分今のアクアの顔はこのゲームやり始めてから史上最大級に輝いていると思われる。
「まあそれは後にしよう。すぐに叶うこちらの願いが先だ」
「はい」
仮の翼ってなんだろな、変身かな、装備かな?もしかすると赤トンビもらえるのかもしれない。
「日和、俺を殺せるあの剣と保存室から黄龍の死骸を持ってこい」
「了解しました」
ヴィゾヴニルの頭のすぐ横の空間が一瞬蠢き、消えた。
俺を殺せる剣ってなんですかそれは。そんなもん渡していいんですかね。
開幕の大火球の一撃が最も強そうに見えますが、手加減の度合いが分かっていなかったのでやっぱり最初の一撃が最強です。
ちなみにヴィゾヴニルのHPは実際には1も減っていないです。不死ですし、神様相手に普通の人がまともに戦えるわけがないですからね。