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「氷結」カルテット番外編  作者: 椎堂かおる
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後編

 帰り着いたタンジールは喜びの都だと信じていたが、世はさほど単純ではなかった。

 スィグルは、戻ってきた兄のことを、双子の弟がどんなに待ちわびていてくれるかと期待したが、スフィルは自分のことを憶えていなかった。

 一年ばかりの不在の間に、スフィルは兄がどんな姿だったかを忘れ、焼き付いた記憶の中にある十二才のころのスィグルを求めて、兄上、兄上と叫びながら、当の兄から逃げまどう始末だ。

 自分はそんなに変わっただろうか。スィグルにはそういう自覚はなかった。十四才になり、自分が急速に子供ではなくなろうとしていることは、うっすらと感じられるが、昨日と今日でなにかが違うような気はしない。

 スフィルは相変わらず幼く見え、同じ日に生まれた双子の弟とは思えなくなった。

 幼子というより、まるで(けだもの)だ。父リューズの膝に甘えて、餌の肉をねだる様子は、父が飼っている鷹と大差ない。

 自分がいない間、そうやって父が弟を養ってきた事実に、スィグルは深い衝撃を受けていた。スフィルが依存の矛先を自分から父に変えただけで、全く回復していないことも衝撃だったが、父がそんな情けない弟を、存外、可愛いがっていることのほうが、スィグルにはつらかった。

 自分たち双子が、ほんものの幼子だった頃でさえ、リューズは戦と政治に忙しく、時折顔を合わせて僅かばかり口をきくだけだった。それでも自分たちには優しい父だったと信じているが、スィグルは、父の手からものを食わせてもらったことなど、一度もなかった。

 心を失った母の病状は重く、イェズラムはすでに亡く、ジェレフはタンジールにいなかった。考えてみると、自分が頼ってもいい相手は、それで全部だった。父は玉座におり、いつも励ます目で見守ってはくれたが、甘えさせてはくれない。自分がすでに、そんなことを不満に思ってよい年ではないということも、どこか心に重くのしかかった。

 やがてスフィルは、自分のことを思い出した。兄上、と呼びかけてくるスフィルの薄青い目と、はじめて視線が合ったときには嬉しかった。

 その日から、スィグルはまた弟と抱き合って眠った。

 弟の、子供のような寝息を間近に聞いていると、スィグルはひどく安心したが、そうして横たわって眠ると、頻繁にトルレッキオの夢を見て、胸を締め付ける寂しさで目が覚めた。

 山の学院で、あれほど帰りたいと願っていたタンジールは、まるで知らない街のようだ。

 今では、その楽園にいて、あの山の学院の粗末な部屋に帰りたがっている。

 スィグルは自嘲した。

 スフィルのお気に入りの女官が迎えに来て、部屋から連れ出すため着衣を改めさせているのを、スィグルは部屋のすみから座って眺めていた。

 ダロワージでの晩餐が始まる前の頃合いに、父は自分の着替えをするついでに、スフィルを部屋に来させて、弟に食事をさせていた。スフィルはどこへ行くのか理解しているようで、すでに父上父上とうるさい。

「それではお連れいたします」

 こちらに声をかけて、女官はスィグルに一礼した。それに視線だけで応えて、スィグルは座ったままでいた。

 スフィルと一緒に来るように、父は言っていたが、ついていったのは初めのうちだけで、居場所がないような気がして、すぐに何かの言い訳をつけて行くのをやめてしまった。

 晩餐のための礼服はすでに身につけてあり、髪も結わせたが、早々と玉座の(ダロワージ)に行ったところで、話す相手もいない。

 せっかくジェレフが戻ってきたのに、と、スィグルは恨めしかった。

 我ながら、妙なことをしたものだった。

 たぶん、寂しかったのだ。

 ジェレフは以前なら、顔を合わせると、小さな子供にするように、抱き寄せて頭を撫でてくれたが、回廊では大人にするように握手を求められて、スィグルは内心、面食らった。ジェレフと抱き合うには、もう何か特別の理由が必要な年になったらしい。

 怪我でもしてみようか。

 そんなことを半ば本気で考えながら、スィグルは立てた自分の膝に頬杖をついて目を閉じた。馬鹿げた話だった。

 ひとりで部屋にこもっていても、気が腐るだけだ。

 立ち上がって、礼装用の太刀をはき、スィグルは居室を出た。

 このままダロワージに行くのも癪なような気分がした。かといって、行く宛もなかった。

 一体、この都で暮らしていたころ、自分は日々をどうやって過ごしていたのだったろうか。いつもスフィルと連れだって、あちこち潜り込んでは遊び回っていたような気がするが、ひとりになると、行き場所ひとつ思いつかない。

 晩餐など、どうでもいいかという気がした。大して腹も減っていなかった。

 苛立ったため息をついて、スィグルは足の向くまま、王宮の通路を歩き始めた。



 気がつくと、聖堂の大扉の前に辿り着いていた。

 玉座の間を避ける遠回りで、延々と通路を歩いたが、なぜか無意識にここを目指している自分を、うっすらと感じていた。

 スィグルにとってここは、幼い頃から、唯一たったひとりでやってくる場所だった。

 白磁で形作られた天使像に、こっそりと懺悔をするためだった。

 子供のころの自分は、悪気はないのに、なぜだか悪戯ばかりする毎日で、見つかれば叱られてばかりいたが、時には誰にも見つからず遣り仰せた悪戯もあった。何日もすると、決まってそれが後ろめたくなり、誰かに告白したくなったが、母や侍従たちにわざわざ話して説教されるのは嫌だったのだ。

 そういう時には、ここに来た。

 苦労してスフィルをどこかに置き去りにして、こっそり中に忍び込み、矢を受けた姿の赦しの天使の像に跪き、罪の告白をする。天使はなにも応えないが、きっと許してくれていると、子供の頃のスィグルは純粋にそう信じていた。

 すっきりできれば、それで良かった。スィグルの空想の中では、ブラン・アムリネスはいつも自分の味方だった。

 可笑しくなって、スィグルは静かに一人笑いした。現実の天使を知ると、それはあまりにも滑稽な空想だった。

 もう行こう。

 聖堂の扉を開く気になれず、立ち去ろうとした。

 目の前にある扉が、勢いよく開かれたのは、ちょうどその瞬間だった。

 扉に殴られかけて飛び退き、スィグルは中の薄闇に立っていた者と、まじまじと見つめ合った。

 色があるかないかの、ごく薄青い目で、相手はこちらを見返していた。

「エル・ギリス」

 昼間の出来事を思い出して、スィグルは憎々しさを隠さずに、相手の名を呼んだ。

 彼の額にある竜の涙は、ほとんど透明なように見えた。白く凍ったような結晶を額に飾り、ギリスは面白くもなさそうに、何度か目を瞬いた。

「人食いスィグルか」

 昼間と同じことを、彼は言った。

 礼装しているギリスは、これからダロワージの晩餐に行くのだろうと、スィグルは思った。相手に自分と話す気があるとは思えなかったし、それはこちらも同じだった。出会い頭に侮辱してくるような相手とは、顔を合わせているのも不愉快だ。

 スィグルが足早に歩きだそうとすると、ギリスはのんびりと背中に呼びかけてきた。

「お前、昼間ここでジェレフを口説いたろ」

 ぎょっとして、スィグルは立ち止まった。見てたのか。

「なんで振られたんだよ」

 振り返って睨むと、いかにも不思議そうに、ギリスは言った。

「そんなの余計なお世話だろ……」

「ジェレフは来る者拒まずなんだぜ。いつも相手をとっかえひっかえさ。お前はよっぽどダメだったのかな」

 むっとして、スィグルは口を引き結んだ。何が言いたいんだ、こいつは。

 ギリスは押し黙って、スィグルが返事をしないのを、たっぷり時間をかけて確かめた。それから彼は、また口を開いた。

「ジェレフがお前に謝れってさ。なんのことか分からないけど、とにかく悪かったな、人食いスィグル」

 あっけらかんとした口ぶりに、スィグルは腹が立つのを通り越して、唖然とした。ギリスには悪意があるのだと思っていたが、そうでもないのではないか。

「それのことだろ」

「それって?」

 スィグルが教えてやっても、ギリスは分かっていないようだった。

「人食いスィグルだよ」

「なにがいけないんだ」

 目を瞬かせて、ギリスは不思議がっている。

「僕に面と向かってそういう事を言うのは、他意があるとしか思えない」

「他意って」

「僕を侮辱してるとしか思えないってことだよ」

 鈍い相手に焦れて、きっぱり言ってやると、ギリスはやっと、ああなるほどねという顔を見せた。

「俺は誉めてるんだよ」

 真顔で訂正してから、ギリスはきゅうに、にっこりと微笑んだ。スィグルは彼のその表情の明るさに、一瞬たじろいだ。

「でも天使には謝ったほうがいいぞ。きっと怒っているから」

 聖堂の中を示して、ギリスはそう忠告してきた。スィグルは開いた口が塞がらなかった。

「もう謝ったよ……」

「そうか。じゃあ天使は許してくれる。俺もいつも謝りに来るんだ。ついうっかり悪さをしたときは」

 こいつは正気ではないのではないかと、スィグルは薄気味悪くなった。見れば、自分よりひとつふたつは年上に見える。竜の涙の中には、石のせいで、どことなく気が触れているような者もいた。よほどひどくなければ、そういう者でも野放しにされているのが常だった。

「どこへ行こうか」

 首をかしげて、ギリスはさも当たり前のように誘ってきた。

 まるで、これから一緒にどこかへ連れだって出かけていくかのような口ぶりだ。

「遠乗りは?」

 王宮の外を示しているつもりか、ギリスは視線で天井を指した。

「玉座の間の晩餐会だろ、これから」

 スィグルが教えてやると、ギリスは、そうだったという顔をした。そして、唐突にスィグルの手首をとって、走るような早足で歩き始めた。彼は玉座の間に向かっているらしかった。

 手を引かれてついていきながら、スィグルはまだ唖然としていた。

 ギリスは、年の割に背の足りないスィグルより、頭半分ほど上背があった。

 見上げると、片耳にだけ、スィグルには見覚えのある、紫の石の耳飾りをしている。エル・イェズラムのものだった。

 なぜ彼が、それを持っているのか、歩きながらスィグルは考えた。まさか盗んだわけではないだろう。形見分けしてもらったものを、身につけているのではないかと思えた。

 竜の涙たちは、親しい者が死ぬと、愛用品を形見として分け合って、自分の身近に置いておく習慣を持っている。彼らは仲間の死を英雄譚(ダージ)の完結として祝うが、やはり悲しいのだ。心の中では。

「イェズラムの、耳飾り」

 呼びかけると、エル・ギリスはこちらを横目に見て、またにっこりと笑った。

「お前はイェズの新しい星。イェズはお前に仕えろと言うけど、いったいお前はどんな星なんだろうな、人食いスィグル」

 角を曲がれば、玉座の間だった。人々の賑わいが、すでに廊下まで聞こえていた。

 壁際にスィグルの体を押しつけて、自分もいっしょに隠れ、ギリスは広間の一角を指さして示した。

 そこには極彩色に彩られた、大きな振り子時計が置かれていた。

 とても珍しいものだった。太祖の時代からタンジールにあり、王宮に時を知らせている。スィグルはこれのほかに時計を見たことがなかった。あらゆる王宮の典礼は、この時計に従って行われていた。

 握ったままでいたスィグルの手を、時計に向けさせ、ギリスはすぐ傍で、楽しそうに囁いた。

「チクタク……」

 歌うようなその声の調子に、スィグルは不思議になって、ギリスの淡い色の目を見上げた。

「念動が使えるんだろ。時間をすすめて、さっさと食おう。夜は短いし」

 針を動かせと、ギリスは言っているらしかった。スィグルは唇を開いたまま、返す言葉を思いつかなくなった。昔、あの時計の振り子に悪戯をして、こっぴどく叱られたことがあった。あれはタンジールの宝で、子供が気安く触れてよいものではない。

 それを念動で動かせって?

 冗談ではない。正気の沙汰と思えなかった。

 スィグルは思わず、ギリスに笑いかけていた。

「壊したらどうするんだよ」

「罪を告白しに参りました。ぺらぺら。レイラス、汝許されり」

 作り声で、ギリスはさらりとそう返事をした。懺悔をすりゃいいじゃないかと、彼は言っているのだった。

 そういえば昼間も、ついさっきも、こいつはなにをしに聖堂へ来ていたんだろう。面白くなって、スィグルはそれを想像した。天使になにか、謝りに来ていたのではないか。一日に二度もか。

 あれが本人でなく、ただの聖像でよかった。もしギリスが天使本人に、日に何度も懺悔を求めたら、きっとぶちきれられて、大変なことになる。

悪党(ヴァン)・ギリス」

「俺は英雄(エル)・ギリスだよ」

 彼のあだ名を呼んでやると、ギリスは悪びれもせず律儀に訂正してきた。

「失敗したら僕は逃げるから」

「俺もだよ」

 悪戯をしようとすると、弟のスフィルは、いつも不安そうな目をした。それでも兄と一緒にいたくて、あいつは我慢強く傍にとどまっていた。ギリスのように、同じ悪童の目で、見つめ返してきたりはしなかった。

 スィグルは掴まれて掲げられた手の先を見つめ直した。振り子の揺れる大きな文字盤には、透かし模様をほどこされた長い針が二本ついている。スィグルは慎重に時を進めた。広間にいる者たちは、おしゃべりに夢中になっており、いつもより早く時が経っているのに、気付いている者はいないようだった。

 リーン、と大きな音をたてて、鈴がなり始めた。時計の打つ時報だった。驚いたふうに、予定を管理する侍従たちが色めきたった。とっくに晩餐を始める時刻なのに、玉座はからで、族長は遅刻していた。

 ばたばたと侍従たちが広間から走り出てきて、スィグルたちの前を通り抜けていった。たぶん族長を急かしに、部屋まで行くのだ。

 避ける必要もないのに、思わずギリスと二人で、壁にぴったりと寄り、快い後ろめたさによる笑いを隠していた。

 広間からは晩餐の始まりを告げ知らせる侍従たちの声が聞こえた。

 父は、スィグルが不在の間に典礼を変えており、晩餐の開始は自分を待つのではなく、時計に従うようにと命じていたのだ。部屋でスフィルに心ゆくまで餌を与えてからしか、父はやってこない。

「飯だ」

 空腹そうに、広間からもれてくる食事のにおいを嗅いで、ギリスは目を細めた。

 スィグルには王族の席に自分のための場所があった。いつも、がらんとしたそこで、スィグルは一人で食事をとった。以前ならスフィルとふたり、並んで座っていた場所で。

 手を離そうとしたギリスの腕をとって、スィグルは彼を引き留めた。

 とっさのことで、足止めされ振り返ったギリスに、なんと言ってよいか、スィグルは困った。冷たい印象のある淡い目で、ギリスはじっとこちらを見ていた。

「あのさ、よかったら僕の席にいっしょに来ない」

 よく言ったもんだと自分でも驚いた。

 寂しいなと思った。それが本音だった。

 人と一緒に食事をするのに慣れきったあとでは、自分だけで座るのは、ひどく寂しくてつらかった。誰でもいいから傍に座っていてほしかった。

 身をかがめて、ギリスは急に、スィグルに口付けをした。

 人前でするようなことじゃないって、ジェレフは言ってたけど。触れる唇を感じながら、スィグルは半眼になった。

 ややあってから、ギリスは体を離し、首をかしげた。

「お前、下手だな。人食いスィグル。餓鬼の遊びじゃあるまいし、俺が舌入れようとしたら、口開けろ。そんなだからジェレフに逃げられんだよ」

 あけすけに言うギリスは怒っているようではなかったが、スィグルはまた唖然とした。

「まあいいや、それは後で。とにかく今は飯だから。王族の席の料理って美味いのか」

 また前触れなく手を引かれて、スィグルはよろめきながら広間に踏み込んだ。ギリスはよほど空腹なのか、舌なめずりしながら、今夜の席を目指していた。

 からっぽのままの玉座を、スィグルは見るともなく見やった。もし後でやってきて、自分の席にこんなのが座っているのを見たら、父上はなんと思うだろう。王族が席に招くのは、自分を推す派閥の者たちで、ごくお気に入りの取り巻きだけだ。それは自分の持つ派閥の力を、族長に見せるための行為だった。

 父は自分が、エル・ギリスを派閥に引き入れたのだと思うだろう。

 実際には、何だか良く分からない縁でやってきた、得体の知れないやつなのに。

 一緒に席につきながら、ギリスは嬉しそうに、王族のための贅を尽くした食事を眺めていた。

 まあいいか。

 スィグルはぼんやりと、そう考えた。

 父がどう思おうと、そんなことは、まあいい。

 毎晩、違った献立で用意される食事は、うんざりするほどの量があり、スィグルの嫌いなものも多かった。食べきれずに残すと、以前と違って、ひどく気がとがめた。

 今では食卓の向かいにいて、食べ物を粗末にするなレイラスと怒る天使はいなかったし、もっと食えスィグル、と説教をするイルスもいない。どんな味がするか、いちいち説明してくれるシェルも、もう遠い森の故郷に帰ってしまった。

 彼らの代わりに、同じ皿から食べる者がいてくれれば、億劫なだけだった晩餐も、いくらか気が軽くなるだろう。

「ギリス」

 水をついでいる女官から、杯を受け取りながら、スィグルはもう食べ始めているギリスを見やった。

「それ、美味しいのかい」

 尋ねると、ギリスは黙って頷いた。黙々と平らげていく、いい食いっぷりだった。



 ギリスは物語をねだる子供のように、トルレッキオの話をしろとせがんだ。異国の話や、旅の話を、彼はいかにも興味深げに黙って聞いていた。

 旅をしたことがないのだと、ギリスは話した。彼がタンジールを出たことがあるのは、片手で数えられるほどの戦のためだけで、彼の行き来した道のりは、旅ではなく行軍だったからだ。

「それでも俺は戦は好きだけど」

 スィグルの杯に指を突っ込んで、ギリスは中に残っていた水をくるくるとかき混ぜた。

 杯から湯気のようなものが立ち、なにごとかとスィグルが目を向けると、中の水は銀の酒杯を白く曇らせて、唐突に凍り付いた。

 竜の涙が手慰みに魔法を使うとは思いもよらず、スィグルはあっけにとられた。

 そんな驚きをよそに、ギリスは酒杯をさかさまにして、凍ったものを取りだそうと、やたらと振り回している。

 スィグルは酒杯を取り上げて、中身を念動で砕いた。逆さまにして振ると、砕けた氷が、ばらばらと食事の膳のうえに落ちてきた。

 ギリスは面白そうに笑って、氷をつまみあげ、口に放り込んで、音高く噛み砕いた。

 氷結の魔法か、と、スィグルは思った。スィグルはギリスの英雄譚(ダージ)を知らなかった。一度、詩人に頼んで聴かせてもらうのもいいだろう。こんな、ちゃらんぽらんな奴が、戦場では本当に役に立つのか、スィグルには怪しく思えた。

「どこの戦線で戦ったんだい」

 溶けていく氷を面白そうに見ているギリスに、スィグルは尋ねた。浪費される魔力を惜しいと思わないなんて、命知らずなのか、よほどの馬鹿かだ。

「ヤンファールの東」

 彼が言う場所は、停戦の使者が白羽の紋章を運んでくる以前は、森エルフ領からの侵略軍と激しい攻防戦が行われていた場所だった。

 部族領は北を山エルフ族と接しており、東側には森エルフ族の領土があった。両軍は同盟しており、連動して攻撃してきたが、おしなべて、守護生物(トゥラシェ)を率いてくる森からの敵のほうが、手強いという印象があった。

 父リューズは竜の涙たちを主に、その激戦区に投入していたという。恐怖を醸す異様な敵と相対する兵を鼓舞するために、竜の涙たちが用いる並はずれた魔法を父は必要としたのだ。

 部族の戦史において、長らく魔法戦士たちは、戦意を高揚させるための芝居を行う俳優のようなものだった。彼らの戦いは華々しかったが、ひとりで戦をするわけではない。実際に戦うのは、平凡な兵たちであり、強力な魔法戦士が先陣を切ることで、彼らはそれについていくことができる。

 実際の戦力として魔法戦士たちを戦線に投入したのは、リューズ・スィノニムの代が初めてだった。族長リューズは竜の涙だけの一軍を組織して、守護生物(トゥラシェ)が防衛する敵軍に突撃させた。敵の司令塔をねらい打ちする速攻の作戦だった。

 それによって、多くの魔法戦士が物言わぬ石となって王宮の墓所に戻るようになったが、負けがこんでいた戦いは優勢に転じ、リューズは戦上手だと言われるようになった。

 要するにお前の父は、他人の命を惜しまないことによって、名君になったのだ。

 トルレッキオに向かう道々、エル・イェズラムはそのように話していた。父を崇拝していたスィグルにとって、彼の皮肉めいた語り口は、あまり気持ちのいいものではなかったが、気の晴れる勝ち戦の物語は、先行きの暗い旅のさなかに、とてもいい助けだった。

 父も停戦の直前まで、ヤンファールの東で戦っていたはずだ。ということは、ギリスも族長直属の軍にいて、例の戦法のために、守護生物(トゥラシェ)のひしめく敵陣に突撃をかけたはずだった。

 よくそんな、恐ろしい目に耐えられるなと、スィグルは目の前にいるギリスを眺めた。どこにそんな勇気があるのか、確かめたい衝動にかられる。

「怖かっただろう」

 怖かったと言ってほしくて、スィグルは尋ねた。もし自分だったら、恐ろしくて一歩も動けないに違いない。

「怖くないんだ、俺は」

 退屈そうに、ギリスは答えた。ずいぶんと格好をつけたふうな返事に、スィグルがむっとするのを見て、ギリスは笑った。

「感じないんだ。怖いとか、苦しいとか、痛いとか、そういうのを。怪我してても気付かないしさ。詩人は俺のことを、無痛のエル・ギリスって。そのまんまだな」

 もう腹が減っているわけではないだろうが、手持ちぶさたなのか、ギリスは膳に残っていた果物をしばらく舐めてから、口に収めた。

「痛くない?」

 信じられなくて、スィグルは聞き返した。そうだと言うかわりに、ギリスは屈託のない笑みを浮かべた。めったに笑わないが、笑うと子供のような底抜けの明るさだった。その表情は見ているこちらまで和ませたが、それはまさしく、なんの苦労も知らない幼児の表情だった。

「石のせいなのか」

「そうらしいけど。便利だろ。麻薬(アスラ)も使わなくていいし。俺は幸せなやつなんだよ」

 確かにそうだろう。石に殺される恐怖も、苦痛も感じずに、強大な魔力と英雄譚(ダージ)だけを手に入れられるなら、そんな快感はこの世に他にはないだろう。

 苦しみ抜いて死んでいく他の魔法戦士たちの物語と引き比べて、あまりにも(ずる)いようにスィグルには思え、思わず顔をしかめてギリスを見つめた。竜の涙たちが、彼を悪党(ヴァン)と呼ぶのは、ギリスが子供っぽい悪戯をするからではないのではないか。

「だけどイェズラムは俺が可哀想だって」

 耳飾りに触れて、ギリスは言った。彼はまるで、今もまだイェズラムが生きているように話している。

「痛みのない一生は、つまらないんだって」

 残念そうに、ギリスは話した。

 そうかもしれない。何を食べても味がしない食事のように。

「だからお前に仕えろと、イェズラムに言われた。きっと痛い目にあえるから」

 にっこりと笑って話すギリスが、急にこちらに話を向けたので、スィグルは意表を突かれた。

「お前は新星だから、俺が族長にしてやる。その道のりは途方もなく辛く苦しいらしい。それでも俺には耐えられる。もしも、それが本当に辛くて苦しくても、それはそれで、俺には幸せだ」

 退屈なんだ、とギリスは小声で付け加えた。それが彼の感じる、唯一の苦痛であるかのようだった。

「どうしようか」

 ギリスの声は、あっさりと響いたが、彼は即位にまつわるスィグルの意志を問いただしているようだった。

 すっかり溶けきった氷は、膳の上に小さな水たまりを作っていた。それをギリスは指でなぞり、彼の指が通ったあとには、薄氷が残された。

 スィグルは玉座の間に居並ぶ兄弟たちを見回した。王宮を細分する派閥の有様が、そこには描き出されていた。

 強権を持つ父の威力のため、継承争いはまだ本格化していなかった。しかしそれが一度始まれば、飢えた蛇の巣穴に生き餌の鼠を放り込んだようになるに違いない。

 同盟の人質に選ばれたとき、スィグルには為す術がなかった。自分の身を守ってくれる権力に、まったく縁遠かったからだ。自分の命を賭して、弟ひとりを守ってやるのが精々だった。

 あれと同じことを、二度もやるのか。次には間違いなく死ぬことになるだろう。

 兄弟たちの席には、力を持った貴族や、廷臣たちが侍り、賑やかだったが、自分のそばにいるのは、痛みを感じないという、この竜の涙ひとりだけだった。

「お前になにができるっていうんだ」

 スィグルは静かに吐き捨てた。ギリスはうっすらと微笑んだ。

「凍らせる」

 声をひそめて答えるギリスの言葉は、まるで呪文のようだった。なにかが弾ける音がして、広間に仕える女官が悲鳴を上げるのが聞こえた。

 スィグルはその声に辺りを見回した。玉座の両翼に並ぶ兄弟たちの席で、凍り付いた杯が次々に弾け飛んでいた。飲もうとした酒杯を割られた者もいた。

 唖然として顔を見たスィグルに、ギリスは悪童の顔で笑いかえしてきた。

「逃げよう」

 スィグルの手を引いて、ギリスは小声で誘った。誘われるまま、スィグルは立ち上がった。

 広間にいる竜の涙たちが、悪党(ヴァン)・ギリスの悪戯を咎める声を上げていた。人を驚かすギリスの悪戯は、どうせいつものことだった。王族をもからかう恐れ知らずは、竜の涙の特権だ。

 しかし手を引かれてダロワージを走り抜けながら、スィグルは彼が、あれを悪戯でやったわけではないことを理解していた。

 なにができるんだという、自分の問いに、彼は答えたのだ。

 あの広間にいる兄弟たち全員を、彼は一瞬で殺すことができる。

 そんなことは魔法を使える者なら、誰にでもできるかもしれない。ただ、やらないだけで。

 だが自分には簡単なことだと、ギリスは教えていた。誰かがそれを命じれば、やってのけることができる。

 父が彼を敵の怪物に突撃させたように、自分の敵を打ち砕くため、彼を使うことができれば。

「俺を痛い目にあわせてくれよ、人食いスィグル」

 屈託のない笑みで、彼は求めた。

 スィグルは彼の目の奥で凍り付いている何かに、微笑み返した。

 回廊を抜け、入り組んだ通路をゆく王宮の道筋は、古い迷宮のようだった。知り尽くした道を、ギリスは走り抜けていく。

 現れた赤い扉を押し開くと、庭園があらわれた。棕櫚の茂る四角い中庭の太陽はすでに落ち、灯された薄明かりが、華麗な噴水を照らしていた。

「俺たち(デン)(ジョット)だろ?」

 そう問いかけて、ギリスはスィグルを抱きしめた。

 強い腕だった。縋り付くような抱擁は、寂しさを感じないものがするものとは思えなかった。ただ感じないだけで、その感情は、おそらくギリスの中にある。ひどく堅く凍り付いて。

 同じ強さで抱き返して、スィグルは彼に縋り付いてみた。ギリスはため息をもらして、口付けをした。

 開いたままだった赤い扉を、スィグルは魔法を使って閉じた。それは人前でするようなことではないらしいから。

 ばたんと音をたてて閉じた扉に目をやりもせず、ギリスは抱擁に身を捩った。

 赤い扉がみるみる白く凍り付いていくのを、スィグルは眺めた。

 今宵、あの扉を開くことができる者は、もういないだろう。

 ひどく寒かったが、スィグルは氷結の魔導師の熱く灼けるような腕に身を任せた。その熱が、彼の中の氷を溶かせはしないかと思いながら。



「チュンチュンだ」

 白み始めた庭園の大天井を見上げて、ギリスは子供っぽく(さえず)ってみせた。確かに棕櫚の葉を震わせて飛んで回る鳥が鳴いていた。

 もたれかかった噴水が凍り付いており、寒いのでスィグルは半裸のギリスの体にしがみついていた。

「お前は、もっと練習しないとな」

 冷えた指でスィグルの体を抱いて、ギリスは満足そうに感想を述べた。

「この寒いのは、わざとなのかい。それとも魔法が洩れてるのかい」

 恨みをこめて、スィグルは尋ねた。ギリスは真顔で、言われたことの意味を考えているらしかった。

 不意にギリスが噴水の水を手ですくい取り、素早くそれを凍らせて、スィグルの胸にまき散らした。あまりの冷たさに、ひっと喉が鳴ったが、ギリスはそれを嬉しそうに笑い、氷ごとスィグルを抱きしめた。

「これが好き」

「勘弁してよ……冷たいのも感じないのか?」

「それは感じるよ。熱いのも感じるよ。他にもいろいろ」

 顎を掴んで口付けをさせながら、ギリスは低い声で甘く唸った。その舌は熱かった。温度差の激しい男だった。

「気持ちいいな、これ。一時間に一回くらいしたいな」

「じゃあダロワージで時報が鳴るたびにすれば?」

 皮肉をこめた冗談のつもりだったが、ギリスは納得したように、深く頷いただけだった。

 夜の間、話すともなく話したが、ギリスはまったく冗談が理解できないらしかった。なんでも真に受けて、照れ隠しの悪態まで本気に受け取っていた。

 恥ずかしいという感覚も、ギリスには理解できないらしい。

 深く抱き合うと、ギリスは臆面もなく嬉しげに、すごく気持ちいいと言った。そして、幸せだ、と、いかにも安直なことを平気で口にする。

 スィグルはそれに脳天を打ち抜かれたような衝撃を感じた。これまで、それほど真っ直ぐに自分を受け入れてくれた者はいなかった。

 たぶんギリスは誰にでもそうなのだろうが。

 人並みの羞恥心もなく、袖にされた時の苦痛も感じないので、ギリスはダロワージで人並み以上の場数を踏んでいるらしかった。嘘をつかない本人がそう言うのだから間違いないだろうし、慣れた手際がそれ以上に正直だ。

 これが大人たちの言う、ダロワージの恋というやつかと、スィグルはがっかりした気分で納得した。皆がこぞって酔うのだから、さぞかし良いものだろうと思っていた。

 確かに良かったかもしれないが。

 こんなもので寂しさが紛れるやつがいるのが不思議だ。寝不足になるだけだ。あれこれやってるうちに朝が来て、それで終わりなんだから。

 太陽の熱で溶かされたのか、凍り付いていた庭園の赤い扉は、もう白んではいなかった。

「お前はジェレフが好きなのか?」

 抱き合ったまま、ギリスはあっけらかんと尋ねてきた。

「え?」

 聞こえていたが、スィグルは思わず聞き返していた。なぜそんな話をするのか、良く分からなかった。

「口説くんだったら、ジェレフの弱点を教えてやろうか?」

「え?」

 冗談で言っているわけではないはずの、ギリスの真顔に、スィグルはもう一度尋ねてみた。

「あいつは結構、耳が弱いらしいぞ。前にそんな話をどっかで」

「いいよそんなの聞きたくないから」

 噛みつくように言って黙らせると、ギリスはかすかに驚いた顔をした。

「でもさ、もう口説かないの? お前ジェレフが好きなんだろ」

 スィグルはむしゃくしゃして眠気に重くなった瞼を手のひらで擦った。

「好きだよ。それがどうしたっていうんだ」

「やっぱり」

 ギリスは深く納得したふうに相づちを打つ。スィグルは恥ずかしくなって、顔をしかめた。

「でももう口説かないよ」

「なんで」

「ジェレフがいやだっていうんだから深追いしてもしょうがないだろ。それに、お前がいれば別にいいだろ」

 説いて聞かせると、ギリスはしばらく考え込んだ。

 馬鹿なんじゃないか。スィグルはじっと物思いに耽っているギリスの顔を、いらいらしながら間近に見上げた。

「今ちょっとだけ、痛いっていうのが、どういう感じか分かった気がする」

 びっくりしたように、ギリスは言った。

「は?」

 心底苛立って、スィグルは話の筋道を問いただした。

「お前がジェレフを好きだっていうと、腹の上のこのへんがつらい。飯の前みたいに」

「ああそうか、朝飯前だからじゃないの」

 ギリスが言わんとするところが、スィグルには分かったが、理解していない本人に、わざわざ説明してやる気がしなかった。ギリスには胸はなくて腹と腹の上があるだけなのだから、真面目に取り合っても馬鹿をみるだけだ。

「俺とお前って、今日も(デン)(ジョット)? それとも昨日だけ?」

 きゅうに気になったというように、ギリスが尋ねてきた。スィグルはあくびをした。

「今日もそうでいいよ」

「じゃあ、明日は?」

「明日もそうでいいけど」

「じゃあ、明後日とか、その次は?」

 毎日同じことを聞かれそうだった。おはよう、人食いスィグル、今日の俺とお前って、(デン)(ジョット)だっけ。それとも違うんだっけ。真顔でそう聞くギリスが容易に想像できる。違うとか、そうだとか、一日ごとに答えないといけないものなのだろうか。

 スィグルは何とはなしに寂しくなって、低く呻くようなため息をついた。ギリスは答えを待っているふうに、じっとその姿を見ている。

「ギリスはいつまでそうであって欲しいわけ?」

 頬杖をついて、スィグルは効率のいい質問を与えてやった。ギリスはその画期的な発想に感心したらしかった。しばらく考え、それからギリスは回答を出した。

「俺が死ぬまで」

 約束できない。そういう気がしたが、スィグルは嘘をつくことができた。そうなるといいと思うことを、事実として与えても、ギリスは恨まないのではないか。

「じゃあ、そういうことにしよう」

 目を合わせずに答えると、ギリスは嬉しげな小声で、うん、と子供のように承知した。

「俺、長生きしよう」

 本気で言っているはずのギリスがあまりに可笑しく、スィグルは吹き出した。首をそらせて大笑いしているスィグルを、ギリスはきょとんとして眺めている。

 竜の涙が、どれくらい長生きできるのか、考えてみても無駄だった。でも確かに、一日でも長く生きていてほしかった。そうしろと頼めば、ギリスはそうする。それが不名誉ではないかという苦痛を、彼は感じないだろうから。

「だったら魔法を控えたらどうかな。使っていいときは、僕が教えてやるから」

「うん、じゃあそうしようか」

 自分が一晩かけて凍り付かせた噴水を、ギリスは振り返った。小部屋ほどもある噴水のたたえる水が、すっかり(みぞれ)になっており、中央に立った円柱状の吹き出し口は、堅く凍り付いて、昨夜は涼しげに沢山の水を撒いていたのが、白い氷をまといつかせたまま静止していた。

 みし、と石が鳴ったような気がした。

 スィグルはギリスの肩越しにそれを見て、いやな予感がした。

 それは感じた時点ですでに的中したようなものだった。

 みしみしと円柱が震え始め、すぐに亀裂が現れた。どかんと激しい音をたてて、噴水が破裂したのは、そのすぐ後だ。

 とっさに二人で床に伏せたが、水圧で破壊された石と氷の塊が、矢のように庭園に降り注いだ。

 すぐ隣で、ギリスが嬉しげに悲鳴をあげている。待ち受けたような声だった。

「服着て逃げようぜ」

「馬鹿じゃないのか、分かっててやったのか!?」

「やってみたらどうなるかと思って」

 脱ぎ捨ててあった長衣(ジュラバ)を拾い上げて着ながら、噴水からあふれ出てきた洪水を避けて、二人で庭園から逃げ出した。

 ギリスはどこかに向かって走っているようだった。

 スィグルには、彼がどこへ行こうとしているのか予想がついた。

 天使のところだ。そうに決まっている。

 罪を告白しに参りました。今朝、噴水を壊しました。でも悪気はなかったんです。ただ、やってみたらどうなるかと思って。

 ああそうか。それなら仕方ないな。ヴァン・ギリス、汝許されり。

 シュレーが真顔でそう言うところを想像して、走りながらスィグルは腹の皮がよじれそうだった。

 懐かしい彼らを思い出しても、もう寂しくはなかった。一緒に走れる者がいるから。

 それが嬉しくて、スィグルは笑いながら、黒髪をなびかせて走るギリスの後を追いかけた。

 追いついてきたスィグルの手を、ギリスは強く握りしめてくれた。


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