第68鳴:祝福
朝焼けが目覚めた僕の体を活性化させていく。
僕はベットから起き上がり、近くに干していた服に手を伸ばす。
服を着用し、そのまま部屋を出て、共同水場に行く。
その水場に行くまでに、宿屋の従業員が僕に挨拶をする。
「おはようございます。今日はお早いんですね。」
「おはようございます。ええ、今日はとても大切な日なんで・・。
一日を長く感じて居たいんですよ。」
「それはそれは。もうすぐご飯用意いたしますが、いかが致しましょうか?」
「頂きます。いつも、ありがとうございます。」
「い、いえ!トモさん達にいつも使っていただいて助かっております。
き、昨日はぁ、あ、あの・・・静かでしたが・・・。
も、もしかして喧嘩でもしたのでしょうか・・。あ、こ、こんなこと聞くの悪いかと思うのですが、
少し心配に・・・。」
この宿屋の娘さんは、顔を赤くしながら、僕達の事を心配してくれていた。
「大丈夫ですよ。」
僕はニコリと笑いかけ、そのまま水場に向かう。宿屋の娘さんは僕の背中を無言で眺めていた。
水場まで行くと、アイリスが死んだような目で鏡と向き合っていた。
「友か。」
「・・・・どうしたんだ?目の下にクマなんて作って。」
「また、カタリーナに逃げられた。必死に探したのだが・・・。くぅ・・・。」
「・・・・。」
あと少しだったと言わんかのように拳を握り、歯を強く噛んでいたアイリスがいた。
・・・はぁ~、美人なんだが、この性格がなければなぁ~。
「ところで、お前、今日あの日だろう。」
「ああ。」
「まあ、私もこの目のクマを取ってから行くからな。」
「この世界に化粧なんかないだろう。アハハハハハ。」
「そこは石鹸でだな。」
アイリスと水場で会話をし、寝癖と顔を洗い、僕は食堂へと向かう。
「・・・友。・・・・ここのパンうまい。」
エアとヨルンさんが、先に席に座り、朝飯を食べていました。
僕も、エアとヨルンさんの間の席に座り・・・・何故かいつも真ん中が空いているw
テーブルに置いている朝飯に目を向ける。
パンに野菜にスープか。朝飯といえば、これだね。
僕はパン派なので、これくらいが丁度いい。
ごはん派の主人公だったなら、テーブルをひっくり返してるかもしれないw
するとさきほど会った宿屋の娘さんが、追加のパンを持ってきた。
「トモさん。こ、これ私が焼いたパンです。」
「ありがと。」
僕は差し出されたパンを手に取り、早速一口食べる。
「美味しいよ。」
「ふぁ、あ、ありがと。」
宿屋の娘さんは顔を赤くして、キッチンの奥へと引っ込んでいった。
ヨルンさんがその光景を見ながら呟く。
「トモ様、今日はあの日なんですから自重して下さい。私も自重してるんです・・・。」
「友・・・見境なし。」
「ご、ごめん。」
僕はヨルンさんにじと~っとした目線で見られながら、パン達を食していく。
すると、アイリスが食堂に来て、僕の前の椅子に腰掛ける。
「ところで、お前その格好で行くんじゃないよな。」
「そんなわけないだろ。僕だってちゃんと用意してるさ。」
「・・・私が用意した。」
エアがキラーんと左目にピースサインを当てポーズを取る。あくまで無表情ですが。
和気藹々と朝食の時間が過ぎていく。
いつの間にか、僕達以外のお客さん、宿屋の亭主たちも巻き込んでいた。
それから数時間後、
ある場所で僕は・・・・・白い騎士の制服を着ていた。
カコーンカコーンと教会の大きな鐘が鳴り響く。
空は雲ひとつもない青空で、僕を祝福しているかのように太陽が優しく照らしていた。
「おい、トモ!!もっとお前らしくポーズ取ってくれよ!!」
「何一人だけ幸せもんだよお!!」
「そんな金あるんなら俺らにおごってくれ!!」
知り合いの冒険者たちから祝福?の声が上がり、
「こ、今回だけですからねぇ。ぐぐぐぐ。」
「・・・・フフフフ。」
「まあ騎士に見えなくもないな。」
「立派に成長したものじゃ~、ワシが育てただけあるわい。」
「ゴレンダーもあれがきたいのだあ。」
「ゴブゴブ。」
「え!?ゴブさん、私と結婚してくれるって!!」
「言ってないといってるのだ~。」
「・・・・・むむむむむ、また私遅れるぅ~。」
「こんなのもいいものだな、爺。」
「お兄ちゃん・・・・、なんで私を縛るのじゃあ。」
「お前どうせ、暴れるだろ。」
「いいないいなぁ~、僕もしたいなぁ~。」
僕の仲間達からも祝福の言葉がかかる。
反対側の仲間達からは・・・・殺気が感じられますが。
そして、僕の背中越しに観客達から「うおおおおおおおおおお!!」っと歓声が上がる。
僕は振り返る。
すると、そこには白のドレスに身を包んだ紗枝がいた。
「お兄ぃ・・・恥かしいよ。」
いつもの凛とした妹ではなく、デレデレした天使がした。
紗枝はゆっくりと裾が長いドレスを引きずりながら、ゆっくりとこっちに歩いてくる。
僕は紗枝に手を伸ばす。
紗枝は近くに来ると僕の手に手を載せる。
そして、お互いの位置を合わせ、教会の十字架を見つめる。
そこにはいるべき牧師がおらず・・・
観客達から「牧師雇い忘れたのか?」など声が上がる中・・・
天使の羽が、教会内に降り注ぎだす。
「なぁ!?なんだ??」
その羽根に触れると、体力が回復するというおまけつき。
「こ、これは神の奇跡かぁ。・・・・・ど、どんな演出なんだ。」
すると、天から光の柱が降りてきて、一人の羽の生えた女性が降りてくる。
「「「!!!???」」」
「私は女神ウィルネ。あなた達を祝福に来ました。」
「「「「「「「「女神様!!!!!」」」」」」」」
観客達は驚きのあまり、主役の僕たちでなく、女神様一点張り。
「友・・・・紗枝・・・・。」
「「ウィルネさん」」
「よくここまで長い道を・・・辛い道を辿って来ました。
泣いて崩れた日もあったでしょう。
頑張っても報われない日もあったでしょう。
ですが、貴方達は生きて、こうしてまためぐり合えました・・・。
これを奇跡と言わずして何といえましょうか。
私はただ天から貴方達を見守るしか出来ませんでしたが。」
ウィルネさんは手をかざすと、僕達の体が緑色に光り出す。
「この地の緑、いえ、この世の緑は貴方達を護り、次世代の命を育むでしょ。
幸せになってもいいんですよぉ。」
ウィルネさんがそう呟くと、紗枝が大粒の涙をこぼす。
僕は、その涙を白い手袋でふき取り、優しく微笑みかける。
「女神ウィルネが貴方達二人の結婚を承諾いたします。お幸せに。」
「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」」」」」」」」
ウィルネさんの言葉により、教会に観客達の雄たけびが木霊する。
「お兄ぃ、幸せだよ。」
「・・・・ああ。」
僕は紗枝の顔を胸に押し付けながら、紗枝が泣き止むのを待つ。
数分後、紗枝の顔が上がり、目を閉じる。
僕は吸い込まれるに紗枝の唇に唇を重ねていく。
軽く口付けをした後、顔を離し、目を開けていく紗枝の顔を見る。
大粒の涙を再度流しだす。
「何処に言っても、何をしてても、もう離さない。」
俺は、紗枝の手を握り、左手の薬指に結婚指輪をはめる。
「お姉さまぁ~綺麗ですぅ~。」
「お、男にとられるなんてぇ、ぐすんぐすん。」
「お姉さまの姿だけでも脳裏にインプットぉ~。」
・・・・紗枝軍団から命狙われそうだな。




