第22鳴:紗枝VSウイル
今、異世界で新たな物語が始まろうとしている。
ここは異世界『アースガスト』その1国であるアリの城内で
紗枝の分身と異世界のある国の騎士団長ウイル(上半身裸)が、10mの位置で素手で構えている。
紗枝の構えは、まさに空手というべきか、左手を前に出し、右手は胴の真横で甲を下向かせている。
ウイルの構えは、プロレスラーのように両手を顔の前に出している。
「始めぇ!」
王が左手を上から真下に下ろすと、周りの観客から大歓声があがる。
・・・・あ、僕、友です。
今、現実世界でエアに出してもらった『なんでもできますよ』で異世界観察中です。
紗枝は写し人形の試作品を使い、異世界に飛立ったのだが、そこは王様の玉座がある部屋だった。
王は、紗枝のことを召還した勇者と勘違いをし、騎士団長ウイルと競わせることに。
僕だったら間違いなく、瞬殺もんだったでしょうね。
あ、そんなことを思っていたら、ウイルが紗枝にゆっくりと近づいてきた。
「召還された間もない勇者がレベル40なんてこと、今まで初めてだ。」
「そうなの?」
「ああ。大抵レベル1召還され、「俺ハーレム作れるだけでいいから」と言って、まともに修行もレベル上げもしないものばかりだ。」
「そ、それは大変そうね。」
「・・・・・・・・・ブハァ、わ、分かってくれるか?俺の辛さが・・・」
ウイルはいきなり泣き出し、紗枝の両肩に両手を置いて、首を縦に振っている。
紗枝はどうしよう~という顔をウイルに向けている。
周りの観客は、
「あの勇者~、動かさずにウイルを泣かしたぞー。」
「違うってお前、見えなかったのか?ボディだよ、ボディに一発入れてたんだって。俺見たからな。」「す、すげー」ってな感じで騒いでる。いや、喋ってただけですから。何を見たんですか、あなたは!
「1ヶ月前に呼び出した勇者の女なんて、「あんた私のパシリね。いい男だから、傍に置いてあげるわ」
などと言って、我が物顔で、まだこの城に滞在してレベル1なんだぞぉ。」
「そ、そうなんですか・・・大変ですね。」
「大変なんてもんじゃない!俺を馬みたいに四つんばいにして上に乗って、「さあ城下町に行くわよ」って
言い出したんだぞ!!」
「い、行ったの?」
「もちろん、言ったさ。勇者様だからな・・・。王の命令で・・・仕方なく。王と王子に笑われながら、城下町までいったさ!子供が馬みたいって言ってきたらさ、あの勇者「ヒヒーンっていいなさい」って言うんだぞ。
「い、言ったの?」
「もちろん逝ったさ・・。俺のプライドと共に・・・。」
「ご愁傷様です。」
「・・・・・・・・・・・勇者!勇者がいけないんだぁぁぁぁぁぁ!何が勇者だぁ!」
「「「「ウイルが本気になったぞ!!あの勇者が本気にさせたぞ!すげー」」」」
ウイルは、両手を紗枝の両肩に少しめり込ませ、頭を振り子のようにして、紗枝の顔面めがけてヘッドバットを狙ってきた。紗枝は、アッパーカットを放ち、ウイルの顔面に下からめり込ませる。
「うごおおおお・・・」
「「「「おお~」」」」」
いつの間にか観客が増え、玉座の間が人が寿司詰め状態になっている。
ウイルは、紗枝の拳が顔面にめり込み、紗枝から数歩後ずさり、顔を横に振っている。
「やるなぁぁ、勇者よ。伊達にレベル40ではないようだ。」
「あれで倒れないなんて、あなたもやるじゃないぃ。」
「フッ、今では『勇者の奴隷 』と言われてる俺を舐めてもらっちゃ困る!!あの屈辱に比べたらこれくらい屁の河童だ!!!」
ウイルは踏み出しを強くし、紗枝目掛けてショルダータックルを放つ。
紗枝は、しゃがんで左足で足払いをし、ウイルの体制を崩し、そのまま右足でウイルの顎を真上に蹴り上げ、少し上に跳ばす。
無防備になった腹筋目掛けて、
「これで終わりよぉ!!!」
紗枝の右手の正拳突きが刺さる・・・・そして、その右拳をひねり、ウイルは弾かれるように後ろに跳ばされる。
「「「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」」」」」」
「み、見事じゃ!!あのウイルをこうも簡単に!!」
「何負けてんのよ、あの馬鹿は。この後お仕置きね。」
「お、俺の負けみたいだなぁ・・・・、こんなに楽しい勝負はいつ依頼だろう。」
そういうとウイルは、倒れながら紗枝に手を差し伸べてくる。
その手を紗枝は優しく握り、ウイルをゆっくり起き上がらせる。
「お前の名前を教えてくれないか。」
「そ、そうね。なんで今まで聞かれてなかったのか不思議で仕方ないんだけど。紗枝っていうの。よろしくね。」
「紗枝か・・・あの女勇者も冴といってたな・・・雲泥の差だな。」
「本当に大変ね。」
傷を負ったウイルに回復魔法をかけにきた魔法使いと王様が駆け寄ってくる。
「勇者よ!ウイルを倒したおぬしに頼みたいことがある!我の願いを聞いてもらえんだろうか?」
「なによ?」
「我が国に迫る脅威をおぬしの力で一網打尽にしてほしい。」
「そいつは強いの?」
「もちろんじゃ。我がいくら人を送っても向こうの戦力が衰えん。」
「フフフ、わかったわ。勇者紗江がこの王国救ってやろうじゃない!」
紗枝がノリノリで右拳を高く上げる。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「勇者様ぁ~」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「ウイルよ、早速勇者を現場まで案内してくれ。」
「わかりました。では、こちらへ。」
ウイルは紗江を連れて玉座を出て、長い廊下を歩いていく。
「では、こちらの部屋でどうぞ。」
「あれ?城内??あ、ああ~、さすがに装備なしじゃあ私でも戦えないもんね。武装の倉庫ってわけね。」
紗枝は、部屋に入ると、そこには
机の上に天井まで山済みの書類が4束あった。
「あ、あの~これ?」
ガチャン。紗枝が後ろを振り返ると、外からこの部屋の鍵を閉められました。
「あ、騙したなぁあああああああああああああああ!ドンドンドン!な、何が脅威よ!ただ、仕事がたまってただけでしょう!!人手がほしいからって、そんなことくらいで勇者召還すんな!!」
紗枝はその後、書類が片付くまで解放されなかったとか・・・。
ご愁傷様です。
「さあ、はやく土下座しなさい」
「くぅ~この俺がなぜ・・・。」
土下座しているウイルの頭を冴が思いっきりハイヒールで踏みつける。
「無様ね。」
「くぅぅぅ~。」
ちょっと顔が赤いウイルが拳を震わせている。




