第14鳴:紗枝の昔話
紗枝の昔話を描きました
紗枝は、自分の机で今考え事をしていた。
同じ部屋のエアは日曜日だというのに、日課のパトロールといって外出中である。
部屋内は物音一つしないのだが、お兄ぃの部屋は、お兄ぃが黒電話を使っているのか騒々しい。
「お兄ぃ・・・最近元気になった・・・。」
紗枝は、机にある小さいプリクラに目をやった。
そこには、自分が中学の頃、お兄ぃと一緒に取ったプリクラである。
そのプリクラは、自分は中学生の学生服でお兄ぃの左側でピースサイン、お兄ぃは、高校の学生服を着ており、やれやれという顔をしている。
お兄ちゃんと二人っきりで取ったプリクラはこれ1つだけであり、家族みんなに見つからないように、机の隠れた場所に貼り付けてある。紗枝にとって宝物の一つといっても過言ではないかもしれない。
紗枝は、知っているかもしれないが、お兄ぃのことが大好きである。
この恋心を抱いたのは、まさにこのプリクラを取る数日前だった。
今までは、ただのお兄ちゃんでした。
いつも当たり前のようにこの家におり、一緒にご飯を食べ、たまにつまらないことで喧嘩をし、TVを一緒に見て泣いたり笑ったり・・・。
ある時、クラスメートの友達が
「紗枝・・・昨日、男の人と歩いていなかった?」
「歩いていたけど・・・それがどうしたの?」
「今、クラスで話題になっているのよぉ~、紗枝に恋人現るって!・・・まあ流したの私だけど。」
「ぉぃ!」
紗枝は、クラスメートの友達に突っ込みを入れ、あれは自分のお兄ちゃんであることを話した。
クラスメートは、なるほどぉ~といって・・・
「じゃあさぁ~、あのお兄ちゃん、私に紹介してよぉ。イケメンじゃないけどさ~、私年上に惹かれるとこあるから。ねえねえ、お願いよぉ~紗枝ぇ~。」
え・・・・、お兄ぃを紹介・・・私の・・・私の・・・わ、たしの。
紗枝の中で不安が心を締め付ける。
お兄ぃが、この女と付き合う・・・・。???・・・!!
紗枝は頭の中でイメージするが、体は何故か否定を繰り返し、パンクしそうになる。
「あ、ああ、ああああああ。」
「さ、紗枝?ど、どうしたの?いきなり。」
クラスメートは私を見て動揺している。背中をさすりながら、心配そうに声をかける。
「も、もういいから。紹介しなくてもいいから。ね、ねえ。落ち着いて。」
私は紹介しなくてもいいって聞いてから10秒ほどで心が落ち着く。
「ご、ごめんね。な、なんかそんなこと言われたの初めてで。あせっちゃった。」
「そ、そう・・・。」
「あ、あんな駄目なお兄ぃ、つきあったらしんどいぞぉ~もう、あっちこっちで事件おこすかも。」
「そうなの?」
「・・d・・・・でさ。・・・」
紗枝はその後、お兄ちゃんの昔話をして、クラスメートと笑っていた。
なんであんなに苦しくなったんだろう。
その後、授業を終え、私はそのままお兄ちゃんのバイト先であるファミリーレストランに向かった。
お兄ちゃんは高校3年間、このファミリーレストランで働いていた。
このファミリーレストランは、何故か店員が男子しかいない変わった場所である。
なんでも男の店長が無類の男好きだったとか・・・。イケメンも多かった。
・・・なので来客者は、家族つれ以外は、女性が多かったように思える。
私も何度も足を運んだが、クラスメートもよく見かけ、女性客が6割を超えている。
お兄ぃは厨房で色々作っていたみたいだ。
パフェをごちそうしてもらったこともある。もちろん内緒で。
厨房で働いているお兄ぃは、そこで働いていることを女性の客からは知られていないと思われる。
特に見かけても、イケメンじゃないので目に入ってないのかもしれない。
私はいつものように、ウェイトレスにバナナパフェを頼む。
そのウェイトレスは、180cmあり、髪を青くしていて、両目をつむって笑顔を向けてくる。私が来た時、大概はこのウェイトレスが対応に来る。
・・・・ちょっとうざい。
電話番号を書いた紙を渡してきたりなどもあったり、手に触れてくることもしばしば・・・。
その時、私の横にいた店長と女の人が何か話していたので、聞き耳を立てていると・・・
「わたし!ここでバイトしたいんです・・・本気なんです。」
「い、いや~ここは男ばかりの楽園・・・い、いえ、男ばかりの職場だからあなたのようなカモシカが来たらすぐ食べられちゃうわよ。」
「耐えて見せます!」
バイトをしたい??ここで?こんなイケメンばかりのとこで働いていたら・・・
男にもみくちゃにされるだけでなく、客の女からもいじめられるだろうに~っと心で思って聞いていた。
「なんでここでバイトしたいの?もしかして、今野君が目的?一番人気あるからって内から攻めようとしてるの?だめよぉ~バイト内の恋愛禁止だからね。私以外。」
・・・・何言ってんだ、このおっさん。
「今野さんではないです・・・。で、でも・・・バイト内の・・・・恋愛禁止ですか?」
「もちろん、禁止よ。そんなの許したら仕事にならないじゃない、私が。」
このおっさんちょっと危ないけど・・。どうやら、この女・・・ここに好きな人がいるらしいわね。
「で、誰よ。その相手は?」
「・・・ええっと・・・・あ、荒川・・・さんです。」
「あ、荒川?そんなのいたっけ?」
「店長・・・・キッチンの・・。」
「今野君、あ、そういえば~いたわね。・・・あんたも変わり者ね。あれならいいわ。」
「「えっ!」」
その女と私が一緒にビックリしてしまった。このおっさん、何言ってるんだ!!
私のお兄ぃを変わり者扱いするなんてぇ~。
って、いや、今はそっちじゃないわ。私のお兄ちゃんが好き・・・・だとぉ。
私は、持っていたコップにヒビが入り、水がタラタラあふれ出していた。
「じゃあ、今日から入っていいわよ。ええっと~ウェイトレスだったら客に殺されるから、厨房に逃げなさい。」
「は、はい!!」
いらん気を使うなおっさん!!お前もはいって嬉しそうな顔で答えるな~。
紗枝は自分の心が痛くなる衝動とドス黒いものが心からあふれ出しそうになる。
女はスタッフルームに入っていき、三分後、厨房から女と男の声が聞こえる・・・。
私はセルフサービスのドリンクバーのジュースを選んでる振りをして、厨房の近くにいる。
「荒川君、ファミリーレストランで働いているって聞いていたけど、ここだったなんて偶然だね。」
「ええっと・・・。確かクラスメートのぉ・・・う~ん・・・。」
「加西よ!もう~同じクラスになって半年になるのに。」
「ああ、ごめんごめん。か~までは出てたんだけどな。」
「本当に?」
さっきの女とお兄ぃの笑い声が聞こえる・・・。
私も厨房に突入したいのだが、さすがに他の客がいるので入れそうにないな。
「ねえ?荒川く、ん・・・・・・・あ、あの、実は・・・知ってたんだ。」
「何を?」
さっきの女は顔を赤くしながら、お兄ぃは冷や汗を掻いている。
私は厨房が見える位置を行ったりきたりしている。途中でウェイトレスにお客さんどうしましたか?と聞かれたが無視している。邪魔しないで。
「荒川君が・・ここで働いていたこと・・・。」
「えっ、さっき知らないっていってたのに。」
「嘘ついちゃった。」
そういうと女は腕を後ろで組んで、胸を前に出しながら、てへペロをした。
このおんなぁ・・・・。
紗枝の心の中にドス黒いオーラが出だしたのはこの頃からになります。
もちろん目も赤く・・・。
対応したウェイトレスは今野君です・・・。
聞いてないか。w