謎のババア
夕日が隠れかけている時間に全員、玄関に集まった。
「セロさん、このきのこ食える?」静は手の乗せている大量のキノコを見せた。
「あ・・・すぐ捨てた方がいいな。」
「なんで?」
「確か、ドクツルタケと言って・・・」
「名前からしてアウト!」鈴鹿は苦笑いした。
「一本で死に至る猛毒だったはず・・・」
「・・・本当?」
「どちらにせよ、食わない方がいいだろう。」
「そうなんだ・・・」静は残念そうにキノコを草むらに捨てに行った。
「流石軍人。」鈴鹿は言った。
「で・・・毒キノコ以外に食料無いの?」星羅は聞いた。
「・・・」
「猫を見かけたから道具があれば・・・」とセロ
「却下!それ以外!」と鈴鹿。
「毒キノコならあるよ。」静は草むらを指さした。
「死ねっていう事!?」
「人肉食ならここにあるけど。」と笑顔の星羅。
「・・・」
「冗談だって。」
「はあ~餓死しそう・・」鈴鹿はため息をした。
「川からお魚さん取れないかな?チョーちゃんもおなかすかせていると思うし・・・」静は道路の横に流れている浅い川に向かって行った。
「チョーちゃん?」星羅は鈴鹿に聞いた。
「さあ?後で聞いたら。」
「フナさんが沢山いる!」静は水面を覗き込んだ。
「網取ってきた。」セロは汚れた虫取り網を持ってきた。
「おおナイス!」と鈴鹿。
(浅いから、虫取り網でも行けるだろう。)セロは力強く網を水中に入れて振り上げた。
「おお!五匹も!あ・・・」
突然、網に穴が開きフナは川に戻った。
「・・・」
「バイバイ、フナさん!」と静。
「石を使うか・・・」セロは網を置いて、大きな石を探し始めた。
「そういえば、何処で料理するの?」星羅は聞いた。
「コンロないん?」と鈴鹿。
「コンロはガスが通っていなかったから、焚火をするしかないな。」
「じゃあ、準備してくる。」鈴鹿は家に向かった。
「私も行ってくる。」星羅も向かった。
「そういえば、周りに人い居ないね。」と静。
「そうだな、向かい側に一軒家しか見えないな。」
曲がった道路の先に一軒家があった。
「ん?」
「バイク?」セロは作業を中断して、来た道を見た。
「ブォーン!ブォーン!」派手なバイク音を鳴らし、日本語ではない音楽を鳴らし、黒と赤いラインの大型バイクに短髪の白髪の髪をし、煙草をくわえ、縁なしサングラスに黒いジャージ姿の老婆が、セロ達の事を見向きもせず、一瞬で横切った。
「速い!何キロ出しているんだ!?」セロは驚いた。
「かっこいい!」と静。
老婆は、向かい側の一軒家にバイクを止めた。
「行ってくる!」道路に向かって行き始めた。
「待て、それより、食糧確保をせねば・・・」
「行きたい!」
「分かった・・・明日、行こう。」
「分かったよ・・・約束だよ!」笑顔で言った。
「!」
「どうしたの?顔真っ赤だけど暑いの?」セロに接近した。
(ち、近い!)戸惑った。
「!!?」静は突然、セロの胸を触り、耳を当てた。
「やっぱり!ドキドキしてる!」
「・・・」更に赤くなった。
「凄い真っ赤!トマトみたい!」
「・・・」セロはあまりの唐突で思考停止していた。
「分かった!軍人期間が長すぎて女性と関わるの初めてなんでしょ!」
「・・・」
「・・・えい!」
「は!」静は硬直しているセロの穂を背伸びして優しく叩いた。
「恋愛経験は?」
「・・・」首を横に振った。
「やっぱり!セロさんは単純だから!」
「・・・し、静はどうなのか?」
「私はよく告白されてたけど、めんどくさいし、興味もなかったし、その時間が無駄だと思ったから、私もゼロと言ったらゼロかな?」
「・・・」(何故か落ち込む・・・)
「そもそも、それどころじゃなかったし・・・」
「そうか・・・」石と石をぶつけて気絶した魚10匹を取った。