ダメ人間
「お客さん、外国人?。」運転しながら言った。
「・・・そうです。」セロが答えた。
「そうだと思ったよ、それっぽい雰囲気してるもんな。」
「・・・」
「奥さんは?」
「え・・・」セロは戸惑った。
「居ません。」鈴鹿が答えた。
「そうだよね!奥さんなんて要らないよね!」
「え?」
「浮気しても噛みつかれることも、殴られる事もないし・・・」
「・・・」
「ちょっと、女とホテルで一夜を明かしただけなのに、火炎瓶をぶん投げて来たんだぜ!お陰で死にかけた!」
「浮気するのが悪いと思うけど・・・」と静。
「浮気じゃあねえよ~娯楽を楽しんだだけなのに、ゲームや運動をしてストレス発散するようにね・・・うう・・・それなのに・・・」泣き始めた。
(何このダメ人間!?)鈴鹿達は永遠と続くダメ人間の愚痴を聞かされた。
進むにつれ、家がどんどん少なくなり、多くの畑が見え始めた。
「ぐえ!?」薄暗い細い道の山を登っていると、林の横から黒い影が出てきて、それに強く衝突した。
運転手はすぐに車を止め、前を見ると、鹿が痙攣し、早い呼吸をしながら横たわっていた。
「鹿ちゃんが!」静はドアを開けて飛び出した。セロとベルが外に出た。
「車はフロントに少しひびが入っただけか・・・」ベルは安心した。
「かわいそう・・・」静はゆっくりおなかの部分を撫でた。
「大きさは標準くらいか・・・」運転手はつぶやいた。
「動物病院に連れていこうよ!」静は運転手に言った。
「何言ってるんだ?」
「そっか!回復魔法で!」
「無理に決まっているだろ・・・見た目は大丈夫そうに見えるが、衝撃で内臓とかぐちゃぐちゃだろ、ほら口から血が・・・」
「え?」静は鹿の方を見ようとしたが、セロに手で目を覆われた。
「見ない方がいい・・・」セロが言終わった瞬間、鹿の口から大量の赤い血が流れた。
「悪い、子供がいること忘れてた・・・子供を連れて車に戻ってくれ。」運転手はしゃがみ、両手を鹿の頭部に当てると、青い光が発生した。
「どうするつもりなの!?」静はセロに車に向かって、背中を抑えられながら大声で聞いた。
「・・・」運転手は無視した。
(・・・埋葬の儀式でもしているのかな?)鈴鹿は車の中から見ながら思った。
「よし!しかし、今日は運がいい・・・セロさん手伝ってくれ。」運転手がトランクを開けた。
「何をする気ですか?」セロは外に出た。
「このままだったら車に入らんから、足を切断して小さくして・・・あった。」小型でところどころ錆びているが、鋭い歯が並んでいるエンジンカッターを取り出した。
「何する気なの!?止めて!」静が外に出ようとした。
「落ち着いて!もう、あの鹿は楽にさせた方がいいから!」(でも、これで何をする気?)鈴鹿は出ようとする静を取り押さえた。
「台を鹿の足に入れて抑えておいてくれ。」ゼルがエンジンカッターに電源を入れた。
「・・・」セロは鹿の死体を見てみると、白く凍っていた。
「食用か?」冷たい足の下に台を置きながら聞いた。
「いや、友人が高く買い取ってくれるんでな・・・しっかり持ってろよ。」エンジン音を鳴らしながら鹿の足を切断した。
「あんた平気なのか?」切り落とした足を、袋に入れながらゼルは聞いた。
「・・・雪山のサバイバルで鹿を狩ったことがある。」セロは手伝いながら言った。
「そうか・・・軍人か?」足を入れ終えると、トランクに入れた。
「なにをしているんですか?」車から座席でよく見えなかった為、鈴鹿は恐る恐る聞いた。
「もう少しで終わるから・・・」セロの所に戻った。
「持つぞ、せーの!」ゼルとセロは一斉に鹿の胴体を持ち上げようとした。
「くっ・・・!」ゼルの方は持ち上がったが、セロの方は全く持ち上がらなかった。
「身体強化使えよ!」鹿を降ろしながら言った。
「え?」
「知らないのか?手に魔力を込めるイメージをするだけだ。もう一度!」二人は胴体の下に手を入れた。
「せーの!」
(どういう意味だ?こういうことか?)セロは手に強く力を入れるイメージをした。
「うわ!?」胴体は一回転し、ゼルの腕を下敷きにした。
「痛い痛い!力入れすぎだ!」歯ぎしりをしながら持ち上げた。
セロは何が起きたか分からなかった。突然、手に力が入る感じがした瞬間、鹿は一回転した。
「!」セロは急いでゼルの手助けをしようとした瞬間、一瞬、強い倦怠感に襲われた。
「・・・」ゼルがトランクに運ぶのを手伝った。
「嘘でしょ・・・」鈴鹿は足の無い鹿を見て寒気がした。
「?」静もそれを見ようとした。
「見ない方がいい!」静の頭をわしづかみにし、強く下げた。
「痛い!痛い!何!?」見ようとして抵抗した。
「・・・」運転手は無言で鹿の胴体を袋に入れ、トランクを降ろした。
「悪いな、今度お礼するよ。」運転手は車に戻りながらセロにい言った。
「・・・」セロは無言で戻った。
「何なの?食べる気なの!?」静は怒り気味に言った。
「売る気だが・・・」車を発進させた。
「鹿を殺してまで?」
「しかたねーだろ!金が無いんだよ!」
「女遊びするからでしょ!」怒鳴った!
「うう~しょうがねーだろ!ノルマが足りなかったら上司に嫌味を言われるし、酔っぱらいが車内で吐くは・・・女遊びしなけれはやっられるか!」泣き始めた。
「だからと言って鹿を殺すことないでしょ!」
「性病にかかっちまって、病院にもいかなければならないんだよ!うう~・・・着いたぞ!降りてくれ!」
「え・・・?」星羅は家を見て唖然した。
「資料と違う気がするんだが・・・」とセロ。
「本当にこの場所で合っているんですか?」鈴鹿は聞いた。
「そうだよ!ここだよ!うう~」腕で顔を抑えながら言った。
「話が違うじゃない!」静は怒鳴った。
「俺に言われても!うう~どうして俺が攻められなきゃいけないんだ!俺は何も悪くねえし!降りてくれ!うう・・・!」ゼルは泣き叫んだ。
「キモ!」思わず星羅は言った。
「戻って!!文句言ってやる!」鈴鹿は運転手に言った。
「ええ!?」
「戻れ!!」怒鳴った。
「うう・・・別料金ですけど・・・」
「分かったから、さっさと行って!!」
「何で俺がこんな目に!!」