いい物件(絶望)
「はあ~もっと上がると思っていたのに・・・」ため息をした。
「でも、千円が数倍に跳ね上がったのは大きいよ!」と星羅。
「で、どうする?」静が聞いた。
「とりあえず住む所を探しに行こう。」とセロ。
「何処に?」
「えと・・・どこだ?」
「不動屋さんの事?」鈴鹿が答えた。
「それだ。」セロは探し始めた。
「10万で住める家があると思う?」
「できないのか?」
「無理に決まっているでしょ!」
「ああ・・・そうなのか。」
「とりあえず行ってみようよ。」静が言った。
「無理でしょ・・・」
「ダメ元で。」
「分かったよ・・・」
人に聞きまくって、やっとのことでマリモ不動さんに着いた。
「いらっしゃいませ!本日はどのような物件をお探しに?」若いサラリーマン風で名札にジョン・クロックと書かれた男笑顔で言った。
「えと・・・」鈴鹿が戸惑っていると、
「10万で暮らせる家はありますか?」とセロが言った。
「それは・・・どういった意味で?」首を傾げた。
「そのまんまの意味ですが・・・?」
「・・・10万で家を購入したいと言う事ですか?」
「そうです。」
「・・・」
(おかしい人と思われてる・・・)鈴鹿と星羅は恥ずかしくなった。
「す、すいません!もう行くよセロ!」鈴鹿はセロを引っ張って玄関に出ようとした。
「ありますよ・・・」
「え!?」会社員の方を見た。
「それ以外の条件はどうですか?」
「えと・・・魔法を学べる所は近くにありますか?」と鈴鹿。
「そうですね・・・ところで、ご年齢は?」
「15歳です。」
「三人共ですか?」
「はい・・・」
「そうでしたか、では、中学校をご卒業された後ということでよろしいですね。」
頷いた。
「それでしたら、帝央私立高校が最短にありますね。」地域の地図を見せた。
「ああ・・・」
「そして、提供する物件はこちらです。」パンフレットを出した。
パンフレットを開くと、大きい二階建ての屋敷と小さな池がある中庭と五百坪とかかれた土地と山などの綺麗な写真が貼られてあった。
「少し古い資料となっていますが、こちらの土地は農業用でして、食費も大幅にカットすることができます。
自然にも囲まれていて、春には綺麗なお花畑が見られます。
「凄い・・・こんなの見たことが無いよ・・・」静達は感動した。
「でもこれ・・・高いんですよね?」星羅は聞いた。
「いいえ、土地込みで、計10万です。」
「ええええ!」思わず、セロ以外の全員が叫んだ。
「や、安すぎる・・・こんなに土地が広いのに・・・」星羅はつぶやいた。
「でも、幽霊とかで訳アリなんじゃ・・・」と静。
「いいえ、そんなことありません。」
「でもこんなに安いのはおかしいよね・・・」首を傾げた。
「どうして、こんなに安いのに誰も買わないんですか?」静は堂々と聞いた。
「そうですね・・・ここの地域は人が少ないですし、花粉症とかであまり好まれないですので・・・」
「移動う時間はどのくらい?」
「最短距離でで車で10分程度ですね・・・」地図で指をさしながら言った。家から帝央高校まで近そうに見えた。
「事件とかは・・・?」
「そういったものはありません。」
「えと・・・水道はどうなの?」
「水道は、湧き水なので料金は一切かかりません。
「一切!?どんなに出しても無料ということ?」静は驚いた。
「はい、その通りでございます。」
「でも、汚いんじゃないの?」と鈴鹿。
「鈴鹿ちゃん、考えてみて!どんなに出しても無料なのよ!」
「でも・・・」
「飲み水は、沸騰させたら飲めるし!おまけに、店で売っている天然のミネラルウオーターがいつでも飲めるのよ!」
「そ、そうだね・・・」
「ところで、ガスと電機は?」星羅は聞いた。
「・・・ガスと電機は店で購入という形になります。購入して頂くんでしたら、三か月分は無料で差し上げます。」
「無料・・・もう、これにしようよ!」と静。
「しかし、今すぐに払ったら・・・」セロは言った。
「大丈夫です、一か月ごとに少しずつ払っていただけたら。」
「ローンですか?」静は聞いた。
「はい、その通りでございます。」
「車が無いからどうやって・・・」と星羅。
「そうでしたら・・・」違う紙を出した。
「こちらの商品は最新設備を搭載しておりまして、魔力ガソリンの出費量ももかなり軽減されておりますし、椅子も倒すことが出来ます!今なら期間限定でたったの50万です!もちろんローンも適応されています。どうですか?」
「かっこいい!」鈴鹿は言った。
「安いのか高いのかがよく分からない・・・」と静。
「やめておいた方がいいんじゃないかな?全財産たったの10万だし・・・」星羅は言った。
「そうだった、全財産10万ということすっかり忘れてた・・・」鈴鹿はため息をした。
「この話はまた今度で・・・」とセロ。
「そういえば免許書も無いし・・・」静はつぶやいた。
「分かりました。物件はこれでよろしいですか?」
「はい、お願いします。」と星羅。
「所で免許書や身分証明書を出来れば見せていただきたいのですが・・・」
「!?」一瞬、全員に冷や汗が出た。
「・・・お持ちでなかったら結構ですので。」
「わ、分かりました・・・」セロ達は安心した。
「ではこちらにサインを。」
(名前の欄に段差?まあこういう物か。)セロは契約書に名前を書き、地図と鍵を渡された。
「明日の朝ごろには、商品が届きますので。」
「分かりました。」
「でも、ここから遠いね・・・」鈴鹿は地図を見ながら言った。
「タクシー代を出しますね。」ダイアル式の黒電話で連絡した。
「黒電話だ・・・」と静。
電話を切った。
「あの、転送魔法を研究している所とか、図書館とかありませんか?」鈴鹿は聞いた。
「転送の研究ですか?」
「はい。」
「研究所は存じではないです。大黒図書館は放火で今、修理中です。」
「そうですか・・・ありがとうございます。」
「所で治安は悪いですか?」静は聞いた。
「ああ・・・この辺は悪いですが、セロ様達が住むところは比較的に治安が安定していますし、犯罪もほとんどありません。」
「良かった。」
「・・・携帯てご存知ですか?」鈴鹿は聞いた。
「え?けいたいですか?」首を傾げた。
「そうです。」ここに来るまでに、携帯やタブレットを一回も見かけなかった事に疑問を持った。
「聞いたことがありませんね。」
「では、パソコンやコンピュウターは?」
「・・・聞いた事もありませんね。」
(やっぱり・・・この世界は科学というのは存在しない。ガソリンも魔力ガソリンといってたし、魔法の世界なんだ・・・最初に見たピストルや軽機関銃も魔力が使われているんだろうな・・・)
「来ましたね。」
黄色でタクシーと英語で書かれた車が来た。
「分かりました。」40代くらいで眼鏡を掛け、名札にゴーズ・べルと書かれた男性運転手がクロックから料金を受け取った。
前にセロが乗り、後ろに三人が乗った。
「ご購入ありがとうございました!」車の近くで頭を下げた。
「・・・」セロは一瞬、男の顔が笑ったように見えた。
(今更でけど、身元不明の私達によく家を売る気になったね・・・)星羅は疑問に思った。