損
「よしよし、怖かったね・・・」鈴鹿は静の頭を優しくなでた。
「グス・・・」
「まるで大きな赤ちゃんだね・・・」と星羅。
「そこが可愛いんだよね・・・」
「汚いから手を洗ってきてからにしてくれない?」手を払いのけた。
「これが無かったらね・・・」
「強盗瞬殺だったね・・」と静。
「受付のお姉さん、かっこよかったね!」と鈴鹿。
「アメリカは銃社会でしょ?受付の人が武装していることってあるの?」静はセロに聞いた。
「ああ・・・合衆国は銀行強盗が日常だが、受付の人が武装しているのは見たことが無い・・・しかも,
ためらいもなく発砲していた。恐らく、かなり実践慣れをしていたのだろう・・・」
「凄い受付の人だね・・・」
「周りの人もやれやれと言う感じだったし・・・」と星羅。
「おまけにだ・・・最初の発砲音がした瞬間に、周りにいた市民もピストルを取り出していた・・・例え、受付に人が発砲して無くとも、強盗は同じ末路だっただろう・・・」
「怖わ!どんなに金に困っても強盗は無いね。」と鈴鹿。
「あの強盗、大丈夫かな・・・」と静。
「大丈夫だろう、殺傷力の低い自動拳銃程度では、死なないだろう・・・」
「よかった・・・」
「そういえば、言い争いをしていた男、共犯者かな?」と静。
「恐らく、警備員の注意を逸らすためにしていたんじゃないん?」と星羅。
「そうだよね。意味なかったけどね。」
「あ、2時か・・・」セロは立っている柱時計を見てアナログ式の腕時計の時間を合わせた。
「落ち着いたから、骨董屋に行きましょ」と星羅。
「そうだな・・・」
数分後・・・
「骨董屋はここかな?」静達は少し離れた所に移動していた。
大きな看板の中にマース骨董屋とネズミの絵がある店だった。
ドアを開けると、
「いらっしゃい!本日はなんの御用で?」白髪で小さい眼鏡で鼻が少し長くて、曲がった腰ではなく、真っ直ぐな姿勢の元気なおばあちゃんが台ごしで言った。
内装は高価そうな土器や人形や彫刻などがケースの中に納められていた。
「これお願いします。」千円を渡した。
「どれどれ?」おばあちゃんはルーペで覗いたり、光にかざした。
「・・・これ何処で?」
「日本です。」セロは答えた。
「日本ね・・・聞いたことも無い国だね・・・銀行は?」
「こちらに行けと・・・」星羅が答えた。
「・・・」おばあちゃんは1000円を置きながら考え込んだ。
「良い紙と細かい印刷がされていてとても良いものだね・・・」
(いいものって・・・日本に腐るほどあるけどね・・・)星羅は思った。
「値段は!?」鈴鹿は顔を近づけた。
「そうあわてんさんな・・・いい物だけど、皺とか、傷ついている部分があるから・・・5万になるね。」
「五万!?」全員が同時に言った。
「それでお願いしま・・・」セロが言い終える前に、鈴鹿は手で待てと合図しながら出て来た。
「安すぎじゃありませんか?」
「!?」その場にいた全員が一瞬驚いた。
「・・・」おばあちゃんの目が少し動いた。
(そういうことね・・・)星羅と静は気付いた。
「そうかね?私はこういう紙をよく見かけるもんだから、妥当だと思うけどね。」
「話にならないわ・・・違うところ行きましょ・・・」鈴鹿は1000円を持ったまま玄関に向かった。
「そこまで言うんだったら、八万リクでどうかな?」
「10万いや、20万!」鈴鹿は後ろを向いて言った。
「一気にげるね。」静は小声で星羅に言った。
「それは高すぎいね・・・せいぜい10万円ね、それ以上は上げないよ。ちなみに、ここ以外、骨董屋は無いよ!」
「!」鈴鹿の動揺する姿を見て少し微笑んだ。
「くっ・・・20万!」
「10万!」
「20万!」
「もういいよ、帰っておくれ。」
「!?・・・じ、じゃあ帰るわ。行こう・・・」鈴鹿達は玄関に向かった。
「どうぞ・・・じゃあね。」おばあちゃんは微笑みながら手を振っていた。
「・・・」静達は外に出た。
「大丈夫なのか?」セロは心配そうに聞いた。
「だ、大丈夫よ!いまにも、引き止めてくると思うわ!動揺もしていたと思うし・・・」
「大丈夫かな・・・」
数十分後・・・
「出てこないね・・・」静は指でダンゴムシを突っつきながら言った。
「いや、もう少したったら来るはず!」
「さっきから、そればっかり・・・」と星羅。
数分後・・・
「あきた!もうあきらめようよ!」静は怒鳴った。
「いつまで待つつもりなの?明日まで!?」星羅もいらいらしながら言った。
「うう・・・くそったれ~!」静はドアを開けた。
「いらっしゃい・・・」
「先ほどは失礼しました・・・お願いします。」1000円を渡した。
「私は別に構わんよ、ほれ。」五万円と書かれた紙に、虹色の丸いマークがある紙を渡した。
「ありがとうございます・・・」鈴鹿は顔をうつむき、トボトボ出て行った。
「・・・」出て行ったことを確認すると、おばあちゃんは突然立ち上げり、黒電話で電話した。
「おい!凄いものが手に入った!」笑をこらえながら言った。
「凄い物?何ですか?」
「そうだ!今まで鑑定してきたのが全部ガラクタに見えるほどじゃ!」
「な、なにが手に入ったんですか?あなた様がこれほどまねに・・・」
「後で来い!しかし、馬鹿な客じゃわい!こんなに価値のあるものを10万で納得したぜ!実に馬鹿な客じゃったわい!」高笑いをした。