驚異の熊(後編)
「痛たたた・・・」鈴鹿は川から這いずり出た。
「皆は・・・!」息をのんだ。
少し遠くに、熊に襲われているセロ達が居た。
「わ、私のせいで・・・」後ずさりをしてしまった。
「うわ!」何かに躓いて尻餅をついた。
「・・・!?」強烈な腐乱臭と鉄の匂いがした。
「ウッ!」吐き気がして右手で鼻をつまもうとした。
「!?」右手を見ると、血が滴っていた。同時に躓いたものが、背中を爪で抉られた狩人の死体であることにも気が付いた。
「ウプ!」戻す寸前になったが、飲み込んだ。
「ハア・・・ハア・・・グス!」涙が出て来た。
(泣いている場合じゃない!みんなを助けないと!)涙を拭くと、血の海の中にスコープ付きのライフルが落ちていた。
「・・・」(種類はよく分からない・・・でも!)拾い上げた。
(昔から馬鹿にされ続けた、誰も信じてくれなかった・・・殺し屋の記憶があることを・・・でも、誰が何といっても、私は本当にそうだと分かっいる!だから・・・)しゃがみ込み、銃弾の確認をして構えた。
(撃ち方が分かる!!)スコープを熊に合わせ、ピントを調節した。
「スウ・・・」息を少し吐いた。手も震えなかかった、緊張もしなかった。
直ぐには撃たなかった。確実に仕留める為、時を待った。
「ガウ!」亀裂が広がり、顔のシールドが砕けて消えた。
口を大きく開けて噛みついてきた。
(ここまでか!)
(今だ。)鈴鹿は熊がセロに噛みついて動きが止まった瞬間、引き金を引いた。
音速を超える弾丸が一瞬で熊の目に命中した。
「ガウウウ!!?」熊は右目を抑えながら、後ろに下がった。
「あ、当たった!!」鈴鹿は驚いた。
(今だ!!)セロは拳に魔力を溜め、熊の鼻を勢いよく殴った。
「ガウウウ!!」潰れて血が流れる鼻を抑えながら、更に後ろに引いた。
(よし!?)突然、激しいエンジン音が熊の後ろから聞こえた。
「星羅!?」セロは星羅が円形の歯が猛スピードで回転するエンジンカッターを構えているのを見た。
星羅はエンジンカッターを熊の背中に突いた。
「ガウウウ!!?」大量の血が噴き出て、星羅を赤に染めた。
腕を振ろうとしたが、よろめいて後ろに倒れた。
「ガウ・・・」起き上がりうとしたが、重力を失ったかのように倒れた。
「ハア・・・ハア・・・」
「・・・!?」セロは星羅の表情を見て、寒気がした。
星羅の表情は笑っていたからだった。
「静!!?」レバーを引いてエンジンを切って駆け寄った。
「あっ!かは!!」真っ青で両手を首に抑えていて苦しんでいる静がいた。
セロも駆け付けた。
「肋骨が折れて肺に穴が空いたんだろう・・・」
「え!?呼吸困難ていう事!?」星羅は聞いた。
「そうだ!」
「人工呼吸を!」
「いや、しないほうがいい!」
「じゃあ、どうすれば!」
「救急車に直ぐに乗れるように、運ぼう!」
セロが静を持ち上げようとした瞬間、
「!!」熊に頭を噛まれて出血している所に激痛が走った。
(誰が撃ったのか分からないが、一秒でも遅かったら頭蓋骨を砕かれていただろう・・・)セロは静を持ち上げた。
「静!!」
(・・・鈴鹿ちゃん・・・)ぼやける視野に泣いている鈴鹿がいた。
(この音は救急車・・・そっか、私達助かったんだ・・・)意識を失った。
その後、静は病院に運ばれ一日手術を行い、無事成功した。
セロ達は警察から軽い事情徴収を受けた。熊の目を狙撃したのは鈴鹿だと自慢げに話していた。しかし、この国では、素人が熊を撃ち殺すことは珍しい事ではなく、適当に相手にされた。
後から知ったが、あの現場で、重症だが病院に運ばれて助かった狩人が居たことを知った。
そう言う訳で、治療費はメンバーを助けたと言う事で猟友会から出た。
セロの仕事は帝央高校に連絡を取り、退院した次の日からになった。
「ありがとう。」セロは家に送ってくれた警察官にお礼を言った。
パトカーは去った。
「疲れた~」と静。
「もう夜か・・・」と星羅。
「しかし、凄いね。肋骨が8本も折れていたのに一日で回復って・・・魔法凄すぎ!」と鈴鹿。
「銃を使ったのは初めてだよな?」セロは鈴鹿に聞いた。
「うん、初めて。」
「・・・そうか。」
「だって、前世は伝説の殺し屋だから!」
「ここでハンターさんが死んだんだよね・・・」静は言った。
「・・・」鈴鹿は狩人たちの死体を映像の様に思い出した。
「どうしたの?」静は聞いた。
「これがトラウマという奴か・・・」一瞬鳥肌が立った。
「幽霊が出そうだね・・・」と星羅。
「止めてよ・・・だ、誰かいる!?」家の前を指さした。
「誰だ!?」セロは怒鳴った。
二人の服装がきっちりした男女が出て来た。
「うちの息子を助けていただき、本当にありがとうございました。」女性は言った。
「ああ・・・」と鈴鹿
「ほんとに、ありがとう!」男はセロの手を握った。
「い、いいえ・・・」
「あんたらが居なかったら、息子は熊に食い殺されていただろう!」
「ほんのお気持ちですが・・・」女性は小さい封筒を渡した。
「?」星羅は受け取った。
「では、本当にありがとうございました。」二人は高級車に乗って去った。
「なんだろう?」と鈴鹿。
「・・・」星羅は開けた。
「こ、これは!!」
「小切手だ!!」
「一、十、百・・・500万!?」と静。
「み、みみみ間違え!?」
「す、凄い!一気に!」星羅は喜んだ。
「やった!!もう、不味い川魚を食わなくて済む!!」と鈴鹿。
「でも、まだ一千万以上の借金があるから・・・」と静。
「ああ!!聞こえない!!聞こえない!!何も聞こえません!」鈴鹿は耳を塞いだ。
「ちょっと聞きたいことがあるんだが・・・」足音が聞こえた。
「ん?」星羅達が振り向くと、男がいた。
「な、何の用ですか?」鈴鹿は聞いた。
「こういうもだ・・・」警察手帳を出した。
「!?」(け、警察!?)
「住民票にあんたらの事が一切記録されていないんだが、どういうことだ?」警察官の顔が笑った。
「!?」全員体に汗が噴き出た。
「身分証明は?」
「ど、どうする!?」鈴鹿は小声で聞いた。
「どうする事も出来ない・・・」とセロ。
「口封じるしか・・・」と星羅。
「罪が重くなるだけだ。」
「無いのか?」
「・・・」
「無いんだろ!?」
(神様・・・哀れな私たちをお助けてください・・・)鈴鹿は祈った。
その頃、熊を移送中のとあるトラック。
「しかし、信じられなえよな!」運転手は助手席にいる男に言った。
「まったくだ、これだけ損傷を受けているのにまだ生きているなんて信じられねえぜ!」
「熊は麻酔で大人しくなっているから怖くねえが、サツの方が怖わいぜ。」
「ばれたら今回の報酬はパアだ!」
「表向きは処分したことになっているしな・・・」
「まあ薬を運ぶよりは楽な仕事だ。生物研究所に輸送するだけで数十万もらえるしな。」
「そういえばよ、知っているか?」
「食い殺された数十体のヒグマの遺体が発見された話か?」
「そうだ、全員この熊がやったらしいしな・・・」
「恐ろしい話だぜ。」
「・・・何で隠す必要があるんだ?」
「それもそうだな・・・違法性は許可なく運んでいるだけだし・・・何故だ?」
「猟友会とサツや記者を買収してまで・・・」
「まあ、俺らには関係えねえ話だ。」
「聞いてみるか?」
「ぶっ殺されるだろうな!下っ端の分際でってな!ハハハハ!」
「そうだな!ハハハハハ!」
トラックは山の奥にそびえたつ研究所に走り去った。
受験の関係で周一投降ぐらいになります。




