vs○○ 前編
ヘビは対処する間もなく消滅した。
突如丸腰の生徒が武器を持って斬りつけてきたのだ。
当然の成り行きだった。
「ニャンクミをやったのは俺だよ」
ガリは消えゆく体に向かってそう呟いた。
ニャンクミ、ヘビがやられたことにより、教師たちは戦慄、みな個人で最大源警戒するよう注意が促された。
そんな状況とは裏腹に、ガリは悠々と学園生活を続けていた。
そんなある日……
今行われているのは数学の授業である。
黒板に問題が書かれ、誰かが適当に当てられて前に出る、という形式だ。
「さて、今日は15日か…… 佐藤! 前に出ろ」
「は、はい……」
当てられたのは佐藤サヤカ。
黒板に立たされたはいいが、チョークを持ったきり固まってしまった。
「分からないなら分からない、どうなんだ?」
「……」
サヤカはうつむいたきり何も言わない。
「これじゃ授業が終わらんぞ。 どうするんだ?」
「先生のプレッシャーで言いにくいんじゃないですか?」
突然、誰かが手を上げて答えた。
その声の主は、ガリであった。
「プレッシャーなんてかけてないだろう」
「先生ってケーワイなんですか? 生徒の気持ち全然掴めてないですよね」
「あのなぁ、生徒の頭の中なんて分かるわけないだろ! 文句があるなら口で言え!」
「そんなんだから、誰かの恨み買って殺されるんですよ」
教室内がシンと静まり返った。
授業が終わり、帰り道を歩いていると後ろからちょん、と指で突かれた。
「ん?」
佐藤サヤカだった。
「さっきはありがとね」
「……ああ」
「でもちょっと良くないかなぁ、火に油と言うか、殺人の疑いかけられちゃうよ?」
ガリは一瞬ドキリとしたが、冗談で言っているのは分かった。
「……別に。 あいつら教師はテストとかいう嫌がらせが好きな性悪だからな。 もし俺に力があったら同じことしてるさ」
「ひねくれ者だなぁ。 私、魔法学のニャンクミの授業が唯一の楽しみだったのに。 異世界に行ったら魔法使いとして活躍するのが夢なんだ」
……!
ガリは少し悪い気がした。
その授業を楽しみにしている生徒もいたのだ。
すると、反対側からルシファーがやって来た。
「ガリ、夕飯行こうや。 お前は帰ってええで」
ガリの肩を組み、しっしとサヤカを追い払う素振りをした。
ショッピングモール内のマックでモスバーガーを注目し、席に着く。
「ああいう変な虫は厄介や。 せっかくいい傾向になってきてるんや」
「いい傾向?」
「お前にとって教師は敵、それでええねん。 それより、中間テストが始まる前にもっと教師を減らした方がええ」
中間テスト……
これで躓いたら意味が無い。
「2人おらんからテストはそれ以外をやるんちゃうんかなぁ。 だから、お前の苦手科目の教師を始末しようや」
「……分かった」
そこまで話すとルシファーが立ち上がった。
「ちょ、トイレ行くわ。 ここのマック肉腐ってるんちゃうか?」
内股でテケテケとトイレに向かって行く。
「……」
目の前には携帯が置かれていた。
(魔王からどんな指示を受けているんだ?)
ガリはトイレを振り返り、すぐには戻ってこないのを確認して携帯のメールをチェックした。
次の文面を読んで、ガリは絶句した。
やつはお前の力がなければ何の役にも立たん。
お前が卒業する前にできるだけ多く教師どもを始末しろ。 それが戦力を削るのに効果的だ。
色々なことが頭を駆け巡った。
よくよく考えたら、卒業には3年かかる。
それまでには抜けの教師も補充されるだろうし、どの道ルシファーがいなければ凌げない。
要するに自分は捨て駒だったのだ。
騙されたという思い。
ガリの殺意はルシファーに向いた。