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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 1 章 体験版編
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89,スライムパニック! 8体目


 アレからどれ位の時間が経っただろう?

集まったスライム達を倒したり草原に散らしたりして、無事このスライムパニックは収まった。

俺は殆ど『スモールシールド』での護衛や、スライム達が研究所に近づき過ぎない様に『プチアースウェーブ』で壁を作ったり、『ヒール』で傷を治したり。

スライムを倒すのは4人に任せ、そう言うサポート役に徹していた。


今は倒したスライムの残骸を回収している所だ。

このスライムの残骸はクレマンさん達とブルドックさん達で分ける事になった。

俺達は俺の『ドロップ』のスキルでスライムの素材を比較的簡単に手に入れる事が出来るけど、他の冒険者や研究者はそうも行かない。

ここまで形の残ったスライムの体はかなり珍しい物らしく、周りからしたらお宝の山なんだろう。

俺からしたら、今回の戦いでこの世界に居る間に消費出来ない程のスライムのアイテムが『ドロップ』して困ってる位だ。


メールを確認すると今回『ドロップ』したアイテムは、


『ドロップアイテム 



エヴィンヴラウデンススライムから“エヴィンヴラウデンススライムの牙”×10



ローズヴィオスライムから“軟化毒”×25



カンパリツノナシケアリスライムから“スライムの毛”×15



カンパリツノナシケアリスライムから“スライムの毛糸”×7



カンパリツノアリケナガスライムから“カンパリツノアリケナガスライムの角”×6



カンパリツノアリケナガスライムから“スライムの毛”×5



カンパリツノアリケナガスライムから“スライムの毛糸”×2



アクアゼリースライムから“スライムゼラチン”×22



アクアゼリースライムから“シャボン液”×7



アクアゼリースライムから“アクアゼリー”



グラスライムから“スライムゼラチン”×20



グラスライムから“解毒薬”×18



グラスライムから“万能薬”×15



グラスライムから“睡眠薬”×3



をゲットしたよ』


と、ズラッと長い一覧が表示された。

お馴染みの上2つは兎も角、その下のは全て今回初めて手に入れたアイテムばかりだ。

それでも、大体名前で分かる物ばかりだろう。



毛は白い綿毛みたいな塊で、毛糸は小さな白い毛糸球。



中に気泡が入った水色のスライム、アクアゼリースライムから『ドロップ』した、薄っすら青色の板ゼラチンがスライムゼラチンで、小瓶に入った透明の液体がシャボン液。



草花が生えた動く岩の姿のグラスライムからは、スプレータイプの薬の解毒薬と飲み薬の万能薬、緑色の粉の睡眠薬。


シャボン液は吹くと爆弾シャボン玉を作れる液体で、解毒薬は大体の毒なら治せる薬。

ルグに物凄く進められ飲んだ万能薬はかなりビターなチョコの味がする大体の病気が治せる薬だ。

睡眠薬はそのまんま、相手を眠らせる事が出来る粉。


で、コレクションアイテムと言うか換金アイテムというか、調べても使い道が良く分からないアクアゼリー。

ゼリーって名前なのにプルプルしてなくてまるっきりスーパーボールにしか見えない。

でも相当なレアアイテムらしく、アクアゼリーが『ドロップ』したと分かった時は首を傾げる俺を他所に周りはお祭り騒ぎ。

凄い、凄いの言葉の嵐だった。


価値が良く分からない俺はこの中で1番有効活用してくれそうなクレマンさん達に即行売ってしまったけど。

その金額は今回の依頼の報酬よりも多いんじゃないかな?


「それで、コートとプリズムスライムの事、何か分かりましたか?」

「あぁ、勿論!」


スライムを片付け研究所に戻った俺達は一息ついてクレマンさん達に尋ねた。


「調べた結果、今はリボンだけどこのコート、化石になる前のジャックの体で出来ていたんだ」

「え!?これが!?」


調べた結果、ユマさんが着ていたコートはプリズムスライムの体に生えた水晶を加工し、織り上げて作られた魔法道具らしい。

その水晶の持ち主が化石になる前のジャックと呼ばれているプリズムスライムだったんだ。

ジャックが俺達を襲ったり、あんな事件を起こしたのも自分の体の一部で作られたコートに反応し、1つに戻ろうとしたから、らしい。

今ジャックが大人しいのも無事コートを取り込めて落ち着いているからだそうだ。


「僕達も驚きました。

まさかこんな偶然があるなんて・・・・・・

このコートは大昔の貴族や王族が好んで使っていたといわれる魔法道具、『お忍びコート』だと思います。

その名前の通り、貴族や王族がお忍びで町に出る時に使われていた物です。

その為に『ミスリーディング』の様な着ている者の見た目を変える魔法や防護の魔法を沢山織り込んでるんです」


スピリッツさんの話を聞くとあのコートが一国の女王であり、敵国に不良の事故で来てしまったユマさんにはピッタリのアイテムだと言う事が良く分かった。

だけどそう思うのは事情を知っている俺達だけ。

何も知らない人からしたら何故唯の新米1冒険者である少女がこんな凄い物を持っているのか不審に思うだろう。

現にクレマンさんがその事をユマさんに聞いてきた。


「本来これは、一般的な冒険者が持っていられる魔法道具じゃない。

君はこれを何処で手に入れたんだい?」

「そのコートは1年位前に病で亡くなった父の形見なんです。

父も私の祖父が亡くなる直前に渡された物らしくて、私はそのコートがそんな凄い物だったなんて知りませんでした。

ただ、父が普段から好んで着ていた、そして父が残してくれた数少ない品の1つとしか・・・・・・」


このコートを着ていると父が守ってくれている様な気がして・・・・・・・・・

と、俯いて消え入りそうな震える声でそう言うユマさん。

今にも泣き出しそうなユマさんの姿にクレマンさんがオロオロしながらユマさんに声を掛けた。


「あ、えっと・・・・・・ごめんね。

辛い事を聞いてしまった・・・」

「・・・・・・・・・いえ、大丈夫です。

・・・・・・私の家は代々魔法道具に関わる仕事をしてきました。

多分その縁で私のご先祖様が手に入れた物を代々受け継いできたんだと思います」

「そっか。

きっと君のお父さんはユマさんのこれからの成長を見守れない自分の代わりに、そのコートをお守りとして君に残したんだろうね。

世界最高基準の防護の魔法が掛かったそのコートが自分の娘を守ってくれる事を願って」

「・・・・・・・・・はい」


クレマンさんの言葉に頷いて顔を上げ微笑んだユマさんの目は真っ赤で、大粒の雫が零れ落ちていた。

ここで優しくハンカチでも渡せればよかったんだけど・・・・・・

生憎その役はユマさんの隣に座っていたデビノスさんに取られてしまった。

何と言うか・・・・・・情けないな。


「えっと、あの、その・・・・・・

えーと・・・・・・そ、そうだ!

そのコートとプリズムスライムって分離出来るんですよね?

ずっとこのままと言う訳には・・・・・・」


デビノスさんに良い所を持っていかれた情けない俺は、せめて如何にか形見のコートを取り戻せないかとクレマンさんに尋ねた。

だけど俺の願いは叶わず、クレマンさんはハッキリと首を横に振り、


「残念だけど、ここまで確り融合してしまうと元には戻らないよ」


そう言った。


「そ、そんなぁ。

本当にどうにもならないんですか!?」

「そうだ!

あのコートはユマにとっても大切な物なんだぞ!」


コートと融合したのはこの研究所の大切な研究対象であり、数少ない貴重なプリズムスライムだ。

その上、ジャックは唯一化石から復元したオリジナルのプリズムスライム。

この短時間じゃ分からなかったみたいだけど、他のスライムを呼び寄せるって言う他のプリズムスライムが今までやらなかった事をジャックが出来たのはそれが理由かも知れない。

だから、クレマンさん達としても簡単に手放せないだろう。

それが分かっているから俺とルグの言葉にも力が入る。


あぁ、こんな事になるならあのアクアゼリーをプリズムスライムと混ざったコートと交換すれば良かった。

そう俺が内心後悔でいっぱいになっていると、クレマンさん達が笑顔で、


「心配しなくても、そのコート、いやリボンはユマさんに返すよ。

ただジャックも着いてくるけどね」


そう言ってくれた。


「い、いいんですか!?」

「あぁ。確かにジャックは貴重な研究対象だ。

けど、ジャックと混ざって姿は変わってしまったそれは元々彼女の物。

だからジャックを君達にあげよう。

それが今回の依頼のユマパーティーの報酬と言う事で、いいかな?」

「・・・・・・はい!ありがとうございます!!」


クレマンさん達にお礼を言い、リボンに成ってしまったコートを返して貰う。

リボンはジャックと混じってもコートと同じ性能があるらしく、その上ユマさんが髪留めの様に着けたリボンはコートの状態の時よりも断然ユマさんに似合っていた。


「えっと・・・・・・・・・変じゃない?」

「大丈夫。似合ってるよ」


こういう時女性が喜ぶ言葉がポンッと出てこないけど、不安そうに聞いて来るユマさんを安心させる様に俺は笑顔で頷いた。

普段はコートに付いたフードで隠れて見えない、照れて少し赤くなったユマさんの顔が今は良く見える。

何故だか俺まで照れてしまった。


その後、予定通りの報酬を貰ったブルドックさん達とは違い。

俺達はスピリッツさんにプリズムスライムの正しい飼育方法を習ってから帰った。

今ジャックは疲れて眠っているけど、ちゃんと生きているらしく、起きたらまずご飯を上げなくちゃいけない。

あの事件を起こしたせいでジャックはご飯を食いぱっくれてしまったそうだ。

起きたら腹が減ったっと暴れないといいけどな。


新しい仲間と言うかペット?が出来たけど、俺が此処に居られるのも遅くて後1カ月と少しだけ。

この世界の夏ももう少しで終わる。


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