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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 1 章 体験版編
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83,スライムパニック! 2体目


 勢いで依頼を受けてしまった俺達は2日後、ギルドの前で研究所からの迎えの馬車と、今回正式に一緒に仕事をする事になったデビノスさん、ブルドックさんコンビを待っていた。

当然、研究所からの依頼は俺達3人だけじゃなくデビノスさん達にも出されている。

デビノスさん達の都合で今日のこの時間に集まる事になったんだけど、俺達の方が少し早く来過ぎたみたいだ。


「あ!サトウさん、ルグさん、ユマさん!!」


名前を呼ばれその方向を見ると、デビノスさんとブルドックさんが手を振りながら小走りで向かってくるのが見えた。


「お久しぶりです、デビノスさん、ブルドックさん」

「あぁ、久しぶりだな」

「元気そうで安心しました」


近くに来た2人を見ると特に体が動かし難そうとか顔色が悪いとか無く、ブルドックさんは真新しい切り傷や擦り傷が少なからずあるものの2人共元気そうだ。

ブルドックさんの怪我はボスが言っていたこの依頼の前に受けた討伐依頼で負った物だろう。

採取依頼や届け物の依頼をメインに行う俺達と違い、討伐依頼をメインに行うデビノスさん達の様な冒険者は、やっぱり生傷が絶えないものらしい。


「今日はよろしくお願いします」

「はい!こちらこそ、お願いします」

「討伐依頼以外の依頼は今回が初めてだからな。

あまり役に立たないと思うが・・・・・・

よろしく頼む」


笑顔で答えるデビノスさんと正反対にブルドックさんは不安そうに呟く。

そんなブルドックさんにルグとユマさんが励ます様に声を掛けた。


「大丈夫です。

多分、そんな難しい事は聞かれませんよ。

覚えてる範囲でコカトリスの事を話せば良いだけですから!」

「そうそう!

それに1カ月近くも前の事だから覚えて無くても仕方ないって!」

「あ、あぁ。そうだな」

「それに難しい話はサトウに任せておけば大丈夫!」


そこは、


「俺に任せておけ!」


って言う所じゃないかな、ルグ?

何で俺に丸投げする気でいるんだよ。

ブルドックさんも納得した様に頷かないで!


俺達がそんな話しをしていると、1台の大きな馬車が目の前に止まった。

その馬車から出てきたのは20代前半位のヒョロッと背の高い男性と、御者をしていたヒョロッとした人より年下に見える小柄な男性の凸凹した2人。

2人とも科学者が着る白衣っぽさがある色とデザインのローブを着ている。


「えーと、君達がユマパーティーとノンスノーパーティーの人達かな?」

「はい、そうです」

「あぁ、良かった!

さぁさぁ、早く馬車に乗って!!」

「お邪魔します」


不安そうに尋ねてきた背の高い方の青年に頷くと、その青年は嬉しそうに顔を輝かせ俺達を馬車に乗せてくれた。

馬車の中はクロッグの事件の時に使った屋根つきの荷馬車と言う感じではなく、テレビで見たキャンピングカーの様にソファーと机。

そして小さな氷木箱が設置されていた。

もしかしなくても、この馬車には空間結晶を使っているんだろう。

俺達は5人はのぞき窓から見える小柄な研究者さんの背中とヒョロッとした研究者さん。

その2人と向き合う様に俺を真ん中にして座っているけど、外から見るよりも大分広く、5人1列に座ってもかなり余裕がある程だ。

一瞬入るのを躊躇う程、何か予想以上に豪華な馬車に落ち着かない。


「改めまして、今日は我がエスペラント研究所の依頼を受けてくれてありがとうございます。

僕は研究所の副所長のゼクト・クレマン。

そして外でヤドカリネズミ達を走らせてるのが義弟のラム・スピリッツです」

「副所長って、え!そんな偉い方が態々?」

「ハハハハッ!

副所長と言っても残りの職員が僕の父と母、妹、妻、ラム君しか居ない、家族運営の歴史も無い無名の小さな研究所だよ」


そう言ってクレマンさんは笑う。


「僕達の研究所は魔物の研究、特に古代の魔物について研究してるんだ。

色んな所に行って化石を採取して調べて、今居る魔物がどう進化してきたのか調べてるんだ!

実を言うとね、その過程でコカトリスの毒や尻尾の擬態の事を僕達はずっと前から知ってたんだ」

「そうなんですか?なら、なんで・・・・・・」


その事を世間に発表しなかったのか。

そうすればもっと早く薬も出来ていただろうに。


そう聞く前にクレマンさんは俺が言いたい事を察したのだろう。

何処と無く諦めを含んだ笑みを浮かべ答えてくれた。


「うん。

でも、その事実も何年も前に発表していたんだけど、誰も信じてくれなかった。

特に擬態の話なんか、どんなに証拠を見せてもずっと嘘だって。

空想だって指を指されて笑われてきたんだ」


想像していなかった告白に俺は何も言えなかった。

コカトリスの見ている世界や、一般的に毒と言われる物がある場面によっては薬になると言うのが、どうも他の研究者は信じられ無かった様だ。


いや、もしそれが真実だったらとんでもない発見となり、その発見をしたのが『歴史も無い無名の小さな研究所』。

大きく古くからある研究所のプライドを守る為、そして単純な嫉妬心から認められなかったのかも知れない。


・・・・・・・・・あれ?

もしかして今その事を言ってきたって事は、俺が研究成果を盗んだと思っているから?


「ごごご誤解です!!

コカトリスの事はただの!偶然!でッ!!

貴方方の研究成果を盗んだりなんかしていません!!

本当に誤解なんです!!」

「・・・・・・プッ、ハハハハハ!

そんな事、僕達誰も思っていないよ」


土下座する勢いで叫ぶ俺に、クレマンさんが少しの間ポカンとした後吹き出してそう言った。

まさか笑われるとは思わず、今度は俺の方がポカンとしてしまう。


「図らずも君達が僕達の研究を証明してくれた。

そのお陰で、僕達の研究所も評価されだしたんだよ!

何年も前にその事実を突き詰め学会に発表していた研究所があるってね。

だからこそ他の大きな研究所じゃなく、僕達の所に英勇教から薬の製作の依頼が来た。

普通ではありえない凄い事だ!

正に君達は研究所の恩人なんだ!!

特に、独自に僕達と同じ答えにたどり着いたサトウ君!

君には是非色々意見を貰いたいんだよ!」

「い、いえ。そんな・・・

あれは、運が良かったってのもありますけど、本当にただの偶然で・・・・・・」


テンションが上がり、結構大き目の声でそう言ってニコニコ笑うクレマンさん。

助けを求めようと左右を見ると4人に、


「任せた!」


と言わんばかりの良い笑顔を向けられた。

チクショウ!味方が居ない!!


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