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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 1 章 体験版編
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67,魔道書・・・? 後編


「ありがとう、サトウ君。

君のお陰で無事、魔道書を回収できた」

「いえ・・・あの、魔道書の事。

俺としてはここからが本題なんです。

その魔道書は本当にDr.ネイビーが書いた物なんですよね?」

「あぁ、間違いなくそうだよ。

他のDr.ネイビーが書いたと言われる資料と筆跡が同じだからね」

「そう・・・ですか・・・」

「それで、『ここから本題』と言うのは、どう言う事だい?

流石に意味が分からないな」


そう、ここからが本題。

今から話す話はあまり人に聞かれる訳にはいかないだろうと、判断したから俺は日を改めて貰ったんだ。

自分達の行動を記録する依頼書は今、手元には無い。

それにロックバードが居てくれるお陰で、ここは防犯、防音が完璧だ。

隠れている人も居ない。

俺から直接話すのは今この場に居る6人だけ。

その後は各自自己判断で。


「何から言うべきか・・・・・・・・・

そうですね。単刀直入に言います。

皆さんが魔道書と言うそれに、魔法道具の設計図は一切書かれていない」

「・・・・・・・・・は?」

「え?サトウ?何言って・・・・・・」


当然と言えば当然だけど、俺の言葉に6人全員がポカンとした表情を浮かべる。


「それは・・・・・・

設計図のページが抜き取られているという事かい?

それとも、中身が丸ごと変えられているとか・・・」

「いいえ。その可能性は限りなく、低い。

最初から、そこには設計図は書かれていません。

多分、そこに書かれた文字を正しく読み解けず、偶々偶然この世界の何処かの言葉に読めた文字から何かをひらめいて、あの魔法道具は出来た。

本当にただ偶然が重なったのか、これを解読した人が本物の魔法道具作りの天才だったのか」


俺からしたら何処をどう読んだらあんな魔法道具を作れるのか、本当に謎だ。

どの魔道書を読んでも、斜め読みしても、逆さにしても、遠くから見ても。

どう頑張っても魔法道具を作るのは不可能だ。

俺の様に『正しく』読め、理解出来るからこそ『存在しない』設計図。

だから、それこそ神掛かった偶然が重なり続けたか、解読した人が自分の才能に気づかなかっただけで、とんでもない天才じゃなきゃ無理なんだ。


「考古学の専門家の誰もこの魔道書を正しく読めた者は居ないんだ!

それなのに何故お前がそんな事良い切れる!」

「あ!

そうか、サトウ君には言葉や文字を翻訳するスキルがあったよね。

それで・・・・・・」


俺はユマさんの言葉に無言で首を振った。

確かに俺はこの魔道書を1文字、1文全て間違い無くとは言えなくても、半分以上は確実に、『正確に』読む事が出来る。

ただ、魔道書を読むのにスキルは必要ない。

なぜなら・・・・・・


「ミモザさんも知っているとは思います。

俺は・・・・・・この世界の人間じゃない。

この国の姫様に勇者を呼ぶ世界のサンプルとして、この世界とは違う世界から呼ばれた人間だ」

「それがどうした?

今、その話は関係な・・・・・・

ちょっと待て。おい、まさか」

「ミモザさんの予想通りだと思いますよ?」


そう言って俺は魔道書の1冊を手に取った。

魔道書、魔道書、と言い続けてるけど、俺からしたら魔道書じゃないんだよな。



見慣れた有名メーカーのルーズリーフが何枚も挟まれた、


俺が居た世界なら何処にでも売っている、


それこそ100円ショップでも売ってそうなプラスチック製のファイル。



それが魔道書と言われる物の正体。

ルーズリーフに書かれた文字も、数字も、生まれた時から馴染みのある、日本語とアラビア数字だ。

1冊だけは英語も混じって、どころか殆ど英語だけど。


「ルグから魔道書の詳細を聞いた時は驚きましたよ。

まさか、そんな事が!!って。

この魔道書、いや俺からしたら唯の授業用のノートなんですけどね。

文字も挟んでいる物も挟まれている物も、俺の世界で使われている物と同じ物です。

俺の世界と同じ様にこの世界も魔法は存在しない、科学が発展した世界だ。

科目的にも魔法道具の設計図が書かれている事は無い」


きっとこのノートの持ち主は登下校中に『召喚』されたんだろうな。

それにしても、俺からしたらなんでこれが魔道書として厳重に保管されているのか不思議でならない。

確かに、この世界の人間からしたらこのファイルは珍しいだろうけど。

いや、この中のある1冊は場合によっては厳重保管も納得出来るな。


「1つだけ違いますが、これが『数学』で、これが『英語』。

『現代社会』に、最後はどう言う訳か『日記』ですね」

「・・・・・・サトウもこんな事習ってたのか?」

「あぁ、うん。一応・・・

まぁ、こっちの方が授業内容が進んでるけど」


ザックリだけど1つ1つノートに書かれている事を説明する。

このノートの持ち主は進学校にでも通っていたのか、俺が習った範囲よりかなり先を進んでいた。

だから、このノートに書かれている内容を詳しく説明出来なかったんだ。

でも、書かれている内容が魔法や魔法道具に全く関係ない物だって事は、ルグ達全員に理解して貰えた。

その分、これまで魔道書だと思っていた物の正体にかなりショックを受けたみたいだけど。


「えっと・・・・・・

じゃぁ、これはサトウ君の世界の・・・・・・?」

「いや、正確には違う。

けど、ほぼ同じ世界と考えてくれて良い」


保存状態が良くなかったんだろう、黄ばんでボロボロになり文字が所々かすれた。

それでもこのノートの持ち主が真面目な人だと分かる、所々赤や青の線が引かれた抜けた所が無い、キッチリ取られたノート。

その数学や英語のノートを見ると、このノートの持ち主の世界と俺の世界の文字は全く同じと言って良いだろう。

現社のノートを見るに『魔法は存在しない、科学が発展した世界だ』と断言出来る位には、ノートの何処にも魔法やそれに近い力があるとは書かれていない。

ノートを読む限りだと言葉以外にもそう言う所も、このノートの持ち主の世界と俺が居た世界は同じだと思っていいだろう。


けど、現社のノートに書かれた、現総理大臣の名前が聞いた事も無い人だったり、先進国に俺の世界には無い国の名前が書かれている。

俺の記憶力はそれほど良くないけど、流石にこの位は間違えない。

ノートを見ると他にも俺の知識と違う事が多々ある。

今居る世界の様に大きく違わない。

例えば、Aさんがある道で右に行ったか左に行ったか。

その位の些細な違いと言えば良いのかな?


俺の世界とは良く似た、けどほんの少しだけ違う世界。


それがこのノートの持ち主の世界だ。

日記を読めばもっと正確に分かるかも知れないけど、俺は未だに日記だけは読めていないんだ。

色々ゴチャゴチャ考え過ぎてどうしても、読む事が出来ない。


「・・・・・・あの時代、異世界からこの世界に来た者は1人だけ」

「信じたくない事です。

けれど、これは・・・・・・・・・

Dr.ネイビーと、勇者が、同一人物だった・・・」

「はい。

日記を読んでないので100%そうだとは言い切れませんが、多分」


人間の国を救った勇者と世界を震撼させたDr.ネイビーが同一人物と言うのは余程衝撃的だったんだろう。

幾ら待っても誰も口を開こうとしない。

部屋には唯、気分を紛らわせる様に紅茶を飲む音が響くだけ。

その紅茶の入ったティーカップとソーサーを持つ手はその心情を現すかの様に異様に振るえ、カチャカチャとカップとソーサーを打ち鳴らす。

こうなる事が分かっていたから、誰にも知られない様にしたんだ。


「1つ提案と言うか・・・・・・お願いがあります」

「願い・・・・・・

大体予想は出来るけど、なんだい?」

「日記を読ませてください。

俺は同じ異世界から来た者として、勇者がDr.ネイビーとなった真実が知りたい」

「勇者の真実・・・・・・・・・か」


バトラーさん達はお互いの顔を見合う。

このノートは限られた人しか見れない物だし、そもそも存在自体知られていなかった。


それは危険な魔法道具の設計図が書かれた魔道書だからって理由だけど、本当は設計図が書かれていたからじゃなくて、この日記にとんでもない真実が書かれていたからじゃないのか?


本当に各国王家が勇者の血筋なら、中には俺の『言語通訳・翻訳』の様なスキルを持って生まれた人が居たかも知れない。

そう言う人が日記を読んで・・・・・・


もうこの世に居ない人の日記だとは言え、人の日記を読むのに躊躇いがあるってのもある。

でも、同じ異世界から来た者だから同じ道を歩むかもしれないと思うと、日記を読んで真実を知りたいって気持ちが強くなる。


自分で救った世界を自ら壊す。


それが異世界から呼ばれた者だから感じた事が理由なら、俺はそれを知りたい。

知って、回避したい。

だけど、厳重に保管して特定の人以外存在を隠さないといけない程の真実。

この世界じゃ表向き唯の冒険者である俺が、勝手に読むのは問題だと思ったんだ。


だから、バトラーさん達に許可を求めた。


「・・・・・・・・・少し僕達だけで話し合う時間が欲しい。

待っていてくれるかい?」

「はい。分かりました」


ゆっくり間を置いてからバトラーさんの口から出た言葉。

その言葉に俺が頷くと、俺以外の6人は隣の部屋に消えた。

さて、話し合いの結果、どんな答えが返ってくるんだろうか?


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