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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 1 章 体験版編
65/498

64,跳ねかえる巨大クロッグ 21匹目


 無事、魔道書を見つけ俺は屋上へ続く階段を駆け上がっていた。


「お待たせ!

魔道書は見つけ、って何だよこれ!!?」


屋上は何故か黒い色ガラスの様な物に覆われていた。

何だろう、これ。

最近何処かで見たと思うんだけど・・・・・・


「そうだ。サラマンダーの時の・・・・・・

『オンブラフォール』!てことは、ユマさん!!」


あの時ユマさんが使った魔法。


影の砦。


そこまで思い出し俺はユマさんを探す。

ユマさんは屋上の出入り口の上にいた。

何時も着ているコートを脱ぎ、本来の角と翼が生えた姿を晒している。

薄っすら汗をかき、角と同じ位白い顔に苦しそうに表情を浮かべている事と、ユマさんの近くに魔法陣がない事。

その事から魔方陣で制御せず魔法を使っている事が分かった。

『そのまま技を放つと、その技の威力によって自分が1番被害に遭ってしまう』って言ってたのに・・・

何やってるんだよ!


「ユマさん!!無理するな!!」


俺に気づいたユマさんが口パクで『大丈夫』と伝え、無理にニッコリと笑う。

本人は大丈夫と言うけど、そんな風には何処をどう見ても見えない。

早く辞めさせないと。

その為には、


「早く、あいつを倒さないと!」


貯水槽の様な魔法道具を食い破って出てきたらしい、ソイツ。

今までに見たどのカエルよりも大きな体。

その体よりも大きくバランスの悪い顔には鋭くぶっとい牙が生えている。

吸盤の付いた手足の指先にはそれぞれ牙の様に太く鋭い爪。


捕食する事に特化した様なその姿。


それは貯水槽に居た時から知っていた事だ。

けど、外に出てきたソイツはもっと厄介な姿をしていた。


あの廊下に居たカエルの様に黒い体と伸びる舌。

背中と頭から出てくるヌメヌメした液体に覆われた皮膚は、表面は硬いのに中はプルンとしたゴムの様な感じだ。

ルグとバトラーさんはヌメヌメのせいでナイフや剣が滑って切る事ができないし、ミモザさんとマキリさんはゴムの様な皮膚のせいで武器が跳ね返される。

斬撃も打撃も無効にされるなら魔法ならどうだ?


けど、それもダメ。


伸びる舌に邪魔され魔法陣を書く暇が無い。

それでもルグ達は休む事無く動き回り攻撃する。

その姿はあの大きさのカエルからしたら正に虫の様。

完全にエサだと思っている様だ。


「ウッ!」

「グガァ!」

「ルグ!ロアさん!!」


ナイフを構えカエルに突撃したルグが跳ね返され、貯水槽だった瓦礫の山にぶつかり埋もれる。

魔法陣を空中に書こうとしていたロアさんは舌に弾き飛ばされた。

何とか2人共起き上がれたけど、全身傷だらけで痛々しい。

音がしてから俺が此処に来るまで5分位しか経っていないのに、他の3人も痛々しい程ボロボロだ。


それだけ激しい戦闘を繰り広げているのに、カエルは全くと言って良いほど無傷。


あのカエルが外に逃げない様にしているユマさんだって何時までもつか分からない。

その事もあってルグ達は焦りから冷静さを失い、ただ同じ無駄な事を繰り返すだけになっていた。

傷の痛みで体に力が入らず攻撃力も下がってきているし。

このまま無意味に攻撃を繰り出すだけなら俺達の体の方が先に壊れるだろう。

まずはルグ達をクールダウンさせないと。

だから、とりあえず、


「全員とその場で止まれ!!絶対動くな!!!」

「はぁ?サトウ、何言って!」

「いいから!!」


理解出来ないと言いたげだったが皆、ピタリと止まる。

それと同時に動かなくなるカエル。

はぁ、とりあえず一安心。

こう言う所はカエルのままで良かったよ。


「さっきまで攻撃してきたのに何で急に・・・」

「街に入る前に言っただろ。

カエルは動いている物しか食べないって」

「だから、襲ってこなくなった?

俺達があんなに攻撃して来たのにもかかわらず?」

「うん。

そもそも今、アイツには俺達の姿は見えていない、はず。多分」


高橋の話だと、カエルは動く物を見る事に特化しているせいで止まった物が見えないそうだ。

だから基本的に動いている物しかエサに出来ない。

冷静になって思い出すと、街に居たクロッグが俺達を襲ってこなかったのもその為だろう。

それに嗅覚は視力より衰えているらしいし。

聴力は・・・・・・・・・どうなんだろう?

聞こえていると思うけど、こんなに体格差があれば多分大声を出さない限り俺達の声は聞こえないと思うけど・・・・・・


「だから止まっている間は安全だ。

その間に作戦会議をしたいんだけど・・・・・・」

「分かった。

あの異形クロッグに見つからない様に、慎重かつ迅速に集合してくれ」


ユマさんが動けないから、俺達は屋上の出入り口に集合した。

元々近くに居た俺は兎も角、振り向いたら居たバトラーさん達に味方ながら恐怖を覚える。

ルグが瞬間移動で連れて来たんだよな?

そうだよな!?


カエルを見ると、動く様子は無い。

俺達がまだ此処に居る事には気づいているだろう。

だから多分、俺達が動くのを待っているんだ。


「さて、どうしたものか。

僕達の攻撃は全くと言って良いほど効かなかった」


気休め程度だけど『ヒール』を全員に掛けながらバトラーさんの話を聞く。

また暴走するかと思ったけど、もうその気力も無いみたいだ。

それか、痛みで逆に冷静になっているのかも。


「あの舌のせいで魔法も使えないしね」

「う~ん。

魔法は事前に何か、例えば紙に書いておいたらどうですか?

そうすれば直ぐ発動出来ると思いますよ?」

「残念だけど、僕の魔法とは相性が悪くてね。

その方法はちょっと無理かな」

「そう、ですか。

だと何とかしてロアさんが魔法陣を書く時間を稼がないといけませんね」


斬撃も打撃もダメとなると・・・・・・

突き刺してみる?

ゴムタイヤにも針とか刺さるし、いけるんじゃないか?

あ、でもマキリさんのクナイは弾かれていたな。

だと、ルグのナイフも威力が足り無そうだ。

なら、ミモザさんの斧の先端やバトラーさんの剣ならいけないか?

そう思って2人に聞いて見たが、反応はいまいち。


「僕のこの剣はレイピアの様に突き刺すより、どちらかと言うと切る事を重視した剣なんだ。

だから難しいかな」


そう言ってバトラーさんは海賊が持っていそうな曲がった形の小さめの剣を見せた。

ミモザさんは突く事もできなくはないけど、どちらかと言えば重さを利用して斧で叩き切る方が得意らしい。

軽々扱っている様に見えても、やっぱりミモザさんでもあの大きな斧は重いんだな。

だから、突くとなると少し力が弱くなるそうで、


「1度、突き立ててみたんだが、見事に弾かれた。

あと少し力があれば刺さると思うんだが・・・」


との事。

舌をあえて出させて、口の中に魔法を打ち込む方法も考えたけど、成功率が低いと却下された。

まず、舌を押さえ込む物が手元にないのと、口の中にピンポイントで魔法を打ち込めない事。

それに、普通に考えれば体内からの攻撃は有効だろうけど、あのカエルは人工的に造られた。

所謂とんでも改造された奴だ。

その常識が通用するかどうか分からないって問題もある。

皆ボロボロのこの状況で成功するかどうか分からない方法を試す余裕は一欠けらも残っていないのだ。


「後は・・・後は・・・あ・・・・・・」


何かないかとカエルを観察する。

そこである事に気づいた。


「あのヌメヌメ、お腹の方には行っていない?」


ヌメヌメが流れているのは頭から背中の方。

地面に着いた腹の方にはなかった。

つまり、腹は切り裂く事が出来るはず。

問題はどうやって腹を地面から離し、何度も攻撃しなくて済むよう、切り裂け易くするか、だ。


「ひっくり返して固定するのが1番か・・・・・・

よし!こんな作戦はどうでしょう?」


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