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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 1 章 体験版編
63/498

62,跳ねかえる巨大クロッグ 19匹目


「さて、この部屋にも無かったね。

大体の部屋は調べた。

後、在るとしたら何処だと思う?」


よ、良かったぁ。

あんだけ暴れてストレス発散出来たからだろう。

バトラーさんは落ち着いた様だ。

あのままだったら俺達の胃と心臓は持たなかっただろう。


「僕は所長室だと思うんだ」

「まだ見ていない『開かずの間』じゃないかな?

魔法道具を設置できる位大きな部屋はもう、あそこしか残ってないし」

「オレもユマと同じー」

「会議室の前」

「・・・・・・・・・屋上?」


バトラーさんが所長室。


ルグとユマさんが『開かずの間』。


ミモザさんが会議室の前。


そして俺が屋上と答えた。


俺が言った屋上は無いって全員に言われたけど。


「あんなクロッグを作れる様な魔法道具ならかなり精密に作られているはず。

普通は雨風に晒される屋外には設置しないはずだよ。

そんな事したら直ぐに壊れちゃう」

「直せない事が分かっていたなら、尚更室内にあるはずだ。

だから、やっぱり『開かずの間』が怪しい。

関係者以外立ち入り禁止って書いてあったしな」


そう言って、ルグとユマさんが『開かずの間』を選んだ理由を言う。


「大きな部屋の中にあると言うなら、会議室の前の隠し部屋も怪しいだろ?

見ての通り、あのクロッグが暴れたせいなのか絵や壷は全部転がっている。

だが、あの会議室前の壷と絵だけが無事だった。


よく調べてみたら扉に立体に絵が書かれていたんだ。


あの壁の向こうはかなり大きな崖だ。

くり抜いて部屋を作る位出来るだろう?

あんな風に戸を隠していたんだ。

人に見られたくない何かが間違いなくある!」

「隠し部屋って言うなら所長室もそうだよ。

本棚で分かり辛いけど、隣の応接室の広さと廊下の長さから考えて所長室は狭過ぎるんだ。


あの2つの部屋の間にもう1部屋ないと可笑しい位にね。


そして、一箇所だけ本が抜かれた本棚と、机の上に置かれた本物の本の様に作られた木の板。

応接室側の本棚の後ろに扉もあったし、あの木の板を戻す事で扉を開けると思うんだ」


ミモザさんとバトラーさんがそれぞれが見つけた隠し部屋を示す。


「だけど、俺はその3つの部屋は全部、さっきの金庫部屋の様に罠だと思います。

開けるなって言われたり、隠されていればその中に何かあると思うものです。

特に相手に後ろめたい事があると分かっていれば」


人って『やるな』とか『見るな』とか禁止されたり、コソコソ隠し事をされていると気になるし、破りたくなるし、暴いてみたくなるものだろ?

鶴の恩返しとか浦島太郎とかもそうだし。

禁止されれば禁止される程、隠されれば隠される程、興味が湧くものだ。

だから、『開かずの間』とか隠し部屋とか絶対中に何かある!

と開けたくなると思う。

そこをついて、空けた瞬間発動する様な罠を仕掛ければ確実に侵入者を退治できると思うんだ。

特に俺達みたいに研究所の事を知らないけど、そこに貴重な物があると分かっている奴は。


「でも、ここの職員達は魔道書や魔法道具をこんな面倒くさい場所に隠さないといけないと思う程、後ろめたい物だと思っていたのでしょうか?」

「どういう事?

盗んだ魔道書とその魔道書で作った魔法道具なんだよ。

後ろめたいと思うんじゃないの?」

「それは俺達が事情を知っているから。でも、


『そもそもその魔道書の存在自体、各国の王族やその家族、信用出来る側近位しか知らない』


ってルグ言ってただろ?

と言う事は、ここの職員でもそんな魔道書がこの世に存在するなんて知らなかったはずだ。

それなのに王様は前所長に態々、盗難品だと言って渡すか?

普通は元から自分の物だって言って渡すと思うんだ」

「あッ!!」

「渡された前所長からしたら、王様が善意で珍しい魔道書を託してくれただけと思っていたはずだ。

だから、魔道書を隠さないんじゃないかって。

研究の大事な資料でもあるから直ぐ誰でも見える様な場所に置いて、でも王様からの貰いものって事で誰かに盗まれない様にしないといけないし。

だからやるとしたら、金庫やロックバードに鍵を掛けさせた箱の中に仕舞うか、置いた部屋に厳重に鍵を着ける位じゃないかな?」


後は何かの本にカモフラージュするか。


「そう考えると隠し部屋や『開かずの間』は罠じゃないかなって思うんです」

「だが、可能性は0じゃないだろ?

なら調べるべきだ」

「確かにそうですが・・・・・・・・・」

「それに、もし罠でもさっきみたいに倒せば良いだけだからね!」


バトラーさんスイッチ入ったままだったぁああああああああ!!!!

ミモザさんも当然の如くやる気満々だし!

こうなるから嫌だったんだよ!


「ユマさん!

扉を開ける前に中を調べられる魔法って無い!?」

「ごめんね。わたしは覚えてない」

「それなら確か、ロア君が覚えていたな」

「なら、ロアさんとマキリさんが戻ってくるまで待ちましょう!?」

「何を言ってる。

2人に任されたんだから当然、その前に開けて調べるに決まってるだろう」


だーかーらー!!

罠かも知れないって言ってるのに!

その罠がゴーレムが襲ってくるものじゃなく、毒とかだったらどうするんだよ!?

お願いだから、この2人誰か止めてくださぁあああああああああああああい!!!!!!


そんな切実なオレの願いが届いたのか、2人は止まった。

急にザバッと降って来た大量の水によって。


「嫌な音がして来てみれば、全く」

「お2人共、これで頭は少し冷えましたか?」

「ロアさん!マキリさん!」


声のした方を見るといつの間にかロアさんとマキリさんが戻ってきていた。

ただ、2人組は何処にもいない。

ロアさんが杖を構えているから、あの大量の水はロアさんが魔法で出した物の様だ。


「あの、つかぬ事を伺いますが、フードの2人組は・・・・・・・・・」

「あぁ。あの2人ならぐっすり眠っているよ」


その『眠っている』はどういう意味の眠っているなんだろうか?

怖くて聞けない。


「『くれぐれも慎重に』と言ったはずなんですが、やはりこうなりましたか」

「君達が暴れたらこんな建物、簡単に壊れるだろ?

僕達の目的を忘れないでくれるかい?」

「・・・・・・・・・すまない。

落ち着いたから説教はやめてくれ」

「ミモザ」

「・・・・・・・・・次から気をつける」


そう言って素直に謝るバトラーさんとミモザさん。

それほど2人の説教は怖いんだろう。

隣でルグが、


「他にもミィを止められる奴が居るなんて!」


と目を輝かせている。


「それにしても、やはりサトウさんと此処の前所長の考えは似ているのですね。

サトウさんが言うように3つの部屋は罠でした」

「ここに来る前に調べたんだけど、会議室の前の隠し部屋はゴーレムが襲ってくるもので、『開かずの間』と所長室の隠し部屋は入った者を閉じ込め毒殺する物だった」


やっぱ、罠だったか。

でも、『開かずの間』が毒を使った罠だと言うなら、意図して罠部屋にした訳じゃないのかもしれない。

何らかの理由でクロッグを殺処分する為の部屋だったのかも。

30年位研究していたならクロッグも凄い数になっていただろうし。

その全部を育てる事は出来ないから、仕方ないといえば仕方ない事なんだろうけど。


「じゃぁ、屋上に行こうか」

「屋上?何でまた・・・・・・」

「サトウさんが選んだからです。

前所長と似た考えのサトウさんが言うなら、今の所1番可能性があります」

「そういえば、サトウが屋上を選んだ理由聞いてないよな?」

「まぁ、幾つか理由はあるんだけどね。

後、魔道書の場所も1つ予想してる所がある。

でも、色々な説明は食堂に向かいながらで良い?」


皆が頷いたのを確認し俺は歩きながらその理由を話し始めた。


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