274,コラル・リーフの過去 2ページ目
「えっと、えっと・・・・・・
そうだ!
あの、その『キルシェ』さんは本当に女王様のお母さんの異世界の同一人物なんですか?
同姓同名の『キルシェ・ジャマー』さんの可能性は?」
「そうだよね。
確かに女王陛下のご母堂様以外、歴史上でも有名な『キルシェ・ジャマー』って人はいないよ?
でも『キルシェ』って名前も『ジャマー』って苗字もジャックター国では珍しくないんだ」
「え、そうなんですか?」
弾かれた様に慌ててそう聞くマシロとそのマシロの言葉を補足する様にそう言うジェイクさん。
そのジェイクさんの言葉に今関係ない話だと分かっていてもつい浮かんだ疑問を投げかけてしまう。
「じゃあ2人もユマさんの親戚じゃない?
2人共どことなくユマさんと似てるので親戚なんだとばかり・・・」
「女王陛下のご母堂様が総本家の出だから、一応、親戚に、なるのかな?一応。
ただ、3等親以内の親戚同士じゃ無い事は分かってるんだけど、従姉妹や又従姉妹同士の結婚や親戚筋からの養子って話が頻繁に起きてて家系図がかなりグチャグチャなんだ。
だからかなり具体的に何等親の親戚になるか分からないし、そもそもかなり近い等親の人達以外良く分かってないんだよね」
「あぁ、ソレ、良く分かります。
俺達の所もそんな感じなんで。
特に母さんの実家の方がグッチャで、紙に書いて貰っても覚えきれないんですよねぇ・・・」
「世界が違ってもそう言う所は変わらないんだね。
それはそうと、ジャックター、あ、首都方のだけどね?その首都の周辺には『ジャマー』姓の人が昔から沢山住んでるんだ。それこそ平民から王族貴族までどんな階級でもジャマーって苗字の家は存在する。詳しく言う・・・・・・
と怒られそうだから詳しくはまた後でね」
「はい」
不用意にジェイクさんの悪癖のスイッチを押してしまった俺の自業自得なのは分かってるけど、ジェイクさん共々暫くの間無言でクエイさんに睨まれてしまった。
そんな俺達の様子に気づいていないのか。
マシロにユマさんのお母さんと同一人物か聞かれた時から何か悩んでる様子だったチャドさんが、
「ふむ・・・」
と小さく声を漏らし、少しの間を置いてから言葉を続けた。
「コラル様をお救いになったキルシェ・ジャマーはコラル様の世界の人魔大戦が原因で若くして亡くなってしまい結婚すら出来なかったんだ。
だから子供の名前から同一人物かどうか判断する事は出来ない。
ただ幼い頃からの婚約者が時期ジャックター国国王で『緑の勇者』の仲間の1人だったランド・ティアレだったから、生きていればそんな未来もあったかもしれない人物だ」
「ランドって確か・・・・・・
ユマさんのお父さん?」
「うん」
「・・・・・・・・・待って。ちょっと待って!
それって・・・つまり・・・・・・
コラル・リーフの世界だとユマさんもナァヤ君も、産まれて無い、かもしれないって事?
・・・・・・嘘、だよね?
2人共同姓同名の別人の異世界の同一人物で、ユマさんもナァヤ君もコラル・リーフの世界でも存在してますよね!?」
もしかしたらショック過ぎて一瞬気絶してしまったのかもしれない。
暫くの間目の前が真っ白になって周りの音も聞こえなくなって。
漸く俺の口から出せたのは、必死に目を背ける為の言葉だった。
そんな事、俺達が居るこの世界とは別の世界の事と分かっていても信じたくない。
ユマさんもナァヤ君も死産や流産とかの存在したけど生きる事が叶わなかったって事じゃなく、最初の最初から生まれる可能性を潰されていたなんて・・・
流石にそんな事信じたくない!!
でも、そんな俺の縋る様な言葉はコラル・リーフの預言が粉々に砕いて行ったんだ。
コラル・リーフは本当にキルシェ・ジャマーの事が大好きで大切だったんだろう。
予言の中には美化も風化もせず残そうとしたかの様に沢山のキルシェ・ジャマーの話が残っていて、それ故にマシロも、ジャイクさんも、必死に表に出さない様にしてるルグも、嫌でも気づいてしまったんだ。
コラル・リーフを救ったキルシェ・ジャマーがユマさんのお母さんの異世界の同一人物だって。
「それじゃあ、本当にコラル・リーフの世界は・・・・・・」
「ある意味この時代のIF世界で間違いないかと・・・」
「な、なら!
なら、あの羊の像はラムの親父さんがモデルかもしれないのか!?
7代目の世界では『音色』のスキルを受け継いでいて、だからあのヴァイオリンも受け継いで。
それで、それで・・・・・・」
「恐らくは。
コラル・リーフの世界で戦争が起きた時のユマさんのお父さんとお母さんの年齢次第ではルディさんのお爺さんの可能性もありますが」
「なら、『ケット・シーのアサシン』もエトニック君のお母さん達かもしれないって事?」
「確かに『羊飼いのバイオリニスト』はラム・ルディと言うサマースノー村の少女だが、『ケット・シーのアサシン』はエトニックと言う名前じゃない。スティンガー・ブラウンだ」
「ちょっと待って下さい」
あぁ、だから先代長さん、シュガーさんがスティンガー・ブラウンの名前を出した時あんなに驚いてたのか。
聖女キビとスティンガー・ブラウンが黒幕達に抵抗する為にウォルノワ・レコードを改造しようとした、って話を聞いただけにしてはやけに驚いてるなって思ったら、そう言う理由だったんだな。
コラル・リーフが信頼しここまでしてまで待ち望んでいた『緑の勇者』の仲間の異世界の同一人物が1000年も前に現れていて、自分達からしたら凶悪だと言える事件を起こしていたんだ。
それに伴って最悪の偽物だって思い込んでいた聖女キビが本物のこの世界の『緑の勇者』って可能性も出てきた訳だし、驚くなって方が無理だろう。
それはそうとして、スティンガー・ブラウンが1000年早く生まれて来たのか、それともルディさんが数十年遅く生まれて来たのか。
暦違いのIF世界とは言え、流石に生まれた年が違い過ぎないか?
もしかしてコラル・リーフの世界は俺達が思ってるより似てない世界だったり?
そう混乱し過ぎた頭のまま何とか絞り出せたのは、その小さな懇願だけだった。




