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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第2章 マリブサーフ列島国編
501/508

269,黒い試練 9回戦目


「我々が貴女の祖先の事を勘違いしていた事は良く分かった。

だが、それはそうとして追加の試練は受けて貰う」

「どうしてもですか?」

「第2の試練の代わりだからね。

君達は私達の見てない所で先に第2の試練をクリアしてたんだ。

何にしても少し見極めきるには不安があるからね。

それに加えて君はこの試練を受けた祖先の事を良く知ってる様じゃないか。

祖先達がウォルノワ・レコードを狙った理由をここまで言い切る位に」

「ッ!」


その反論に対し先代長さんよりも比較的冷静そうなチャドさんが余裕の笑みを浮かべ答える。

でもその目は全然笑ってなかった。

嫌悪の色が消え去った代わりにその目に浮かんだのは疑念の色。

その色だけを宿したまま放たれたチャドさんの含みのある言葉にシュガーさんの顔が盛大に歪んだ。


「彼等がカンニングしたって言いたいんですか?

聖女キビから伝わった試練の答えを私が彼等に教えたと!?」

「本物の『緑の勇者』と同じ意思を持つ者ならそんな卑怯な事しないとは分かっている。

それが我々の印象を悪くするだけの悪手だと本物の『緑の勇者』なら理解し回避しているだろう」


回避以前にその考え自体浮かんでいませんでした、とは流石にこの状況では言えないか。

シュガーさんがある程度世間に知られてない聖女キビ(オリジナル)の情報を持ってるって1番最初に分かった後も特に誰も答えを聞こうとする素振りすら見せなかった。

だから俺以外も事前にシュガーさんに答えを聞くって発想自体してなかったんじゃないかな?

それか発想自体はあったけどニャニャさんやニャニャさんのお母さんに気づかれずに聞く方法が思いつかなかったか。

特にルグやザラさんが警戒する位歴戦の戦士として鋭いらしいニャニャさんのお母さんなら外国の言葉やサインの意味が分からなくてもそう言う素振りを見せた事位気づきそうだろう?

だからチャドさん達の疑念は杞憂でしかないんだけど、多分そいう事じゃないんだろうな。


1番試練を受けた人が多い第1の試練故に何時かは試練の答えが流出すると分かってたんだろう。


だからこそいざっという時まで隠されていた追加の試練。

その追加の試練が俺達の番で解禁された。

つまりそれだけ俺達はドラク族の人達に期待されてるって事だ。

多分、きっと、誤解を生む事件が起きるまで期待に満ちていた性別まで一致する聖女キビ達以上に。

そう考えつつシュガーさんの反論を捻じ伏せたチャドさんと先代長さんの様子を伺う。


「だが可能性の芽は完全に潰さなくてはコラル様の遺志に反するのもまた確かな事だ。

だから、変則的に今回はそうしたんだ」

「そんなぁ・・・・・・」

「それで?結局先代さん達はなんて言ってるんだ?」


シュガーさんが反論してる間もマシロとジェイクさんは通訳できる状態じゃ無かったんだろう。

言葉が分からずともシュガーさん達3人の様子からある程度俺達側に不利な形で話が纏まったと察したピコンさんがそう尋ねてくる。


「えっと・・・

『だが本物の『緑の勇者』とその仲間達ならこの質問にも答えられるだろう。

この壁の模様から読み取れると人名と薬品は何だ?』、と」

「なるほどなぁ。クエイ、ジェイク」

「言われなくても分かってる。少し待て」

「うーん・・・・・・

パッと見ただけだと文にはならないよね?」

「つまり、これも暗号って事?」

「多分ね」


自分の存在で余計な手間を掛けさせたとかなり落ち込みながら過剰な程謝罪し続けるシュガーさんと、そんなシュガーさんを必死で慰めるルグ。

そんな2人の声をBGMにしながら聞かれたピコンさんの質問に答えてると、その間に察しの良いクエイさんとジャイクさんがザラさんが声を掛ける前に既に答えを考え始めていた。

けどマシロの言う通りこの壁の文字も暗号になってるのだろう。

中々答えに辿り着けない様だ。

不安を流し込んでくる四郎さんには申し訳ないけどシュガーさんの事はこのまま良い雰囲気で慰められてるルグに一任して、そんなクエイさんとジェイクさんが少しでも推理し易い様にルーズリーフとペンを『クリエイト』で出して俺も考える。


「文字の書かれてる場所的にコラル・リーフ達の手紙みたいな暗号じゃないですよね?」

「違うね。

あの手紙の様に分かりやすく規則的に並んでないし、サルや宝虫もそれに代わる様なマークも無い。

だから今回は聖騎士の遠征を使った暗号じゃないはずだよ」

「なら・・・・・・

何処からか一筆書きしたら名前や薬品名になるとか?」

「それは・・・・・・

あー・・・いやぁ・・・・・・・・

それもぉ・・・・・・・・・・」

「違うっぽいね」

「うん。

マシロの言う通り、どのパターンでも名前らしい文にはならないね」

「そうですか・・・・・・・

だと・・・・・・うーん・・・」


この世界の文法が分からない俺でも分かる位隠された文字の配置に規則性は無いし、縦、横、斜め、一筆書き。

配置通りあらゆる方法で繋げようとしても浮かび上がるのは意味をなさない文字列だけ。

今まで解いて来た仕掛けや謎の解き方を試してみても、思いつく暗号解読方を試しても、正解は出て来ない。


「だと・・・逆に考え過ぎてる?」

「え?考え過ぎ?」

「そう。

俺達は今までの経験から複雑な方法で名前が隠されてるって思い込んでいただけなのかもしれない。

実は単純に隠された文字を全部見つけて、書かれてる場所とか関係なく繋いだら知ってる名前になるとかかもしれないよ?」

「それなら・・・・・・1つ浮かび上がるね」

「本当ですか!!?」

「うん」


コラル・リーフの仕掛けや暗号は手が込んでいる。

そう今まで難し暗号や仕掛けを解いて来た故の思い込み。

これはその思い込みを利用した罠なんじゃないか?

そう思って逆に単純に考えてみたらどうかと言ったら、ジェイクさんが答えらしい名前が浮かぶと言ってくれた。


「答えの1つは『ラスト・ワード』。

リーン達の協力者だった彼の名前が答えだと思うよ。

でも・・・」

「薬品名の方はこの方法じゃ答えは出ないみてぇだな」


関係ありそうな薬の名前どころか、意味のある言葉がラスト・ワードの名前以外1つもない。

そうジェイクさんが書いたメモを見てクエイさんが顔を顰める。

全部のパターンを試したのか、確かにその何十とある沢山の文字列の中で『言語通訳・翻訳』のスキルが反応したのはラスト・ワードの名前になった所だけ。

他は完全に意味のない文字の塊でしか無い様だ。


「・・・・・・なぁ、ジェイク。

アンジュ大陸文字以外の模様も実はどっかの国の文字だったりしないか?」

「他の文字?」

「そう。

アジトの天井画と同じでこの壁全部に意味があるんじゃないかと思ったんだよ」


エレベーターを動かす『マキア』の魔法陣と、その『マキア』の魔法陣が刻まれた先に進む為の鍵だったピコンさんの両親の形見の箱の絵。

2重の意味があった『レジスタンス』のアジトで見つけたあの絵の事思い出したルグがそうジェイクさんに問いかける。

その言葉を聞いてジェイクさんは改めて壁を見るけど、その表情的にあまりいい結果は聞けそうにない様だ。


「・・・・・・残念だけど、思い当たる文字は他に無いみたいだね」

「そうか・・・」

「・・・・・・・・・いや、待て。

文字じゃない。

『サイン』だ。ハンドサイン」

「え?これが?

・・・・・・あぁ、なるほど。

翼で表すサインなんですね」

「あぁ、そうだ」


あえて正体を現す方向だからだろう。

無いと言い切るジェイクさんの言葉を否定したクエイさんがそう言って躊躇いなく本来の姿に戻ってたどたどしく羽を動かした。


古いアンジュ大陸の文字を隠す様に刻まれた波を表す様な渦巻く模様。

一見唯のお洒落な模様に見えるそれはカラドリウス一族が古くから使ってるハンドサインをデフォルメ寄りに描いた物らしい。


『古くから使ってる』とは言っても今では変化石の普及と共にそのハンドサインを使う機会も減って、普段から多用してる人はごく少数だけらしいけど。

だからその多数派に属するクエイさんでは落書きの様に崩されて書かれたそのハンドサインを推理するのは難しいらしく、実際その言葉通りクエイさんは暫くの間時々首を傾げつつバサバサ羽を動かしていた。


「・・・・・・・・・分かった。

薬品名の答えは『蘇生薬』だ」

「正解。両方正解だ」


嫌に長く感じる程の時間が経った頃、クエイさんが人間の姿に戻って放った確信に満ちた言葉。

その言葉を聞いて俺達が推理を始めてからずっとクエイさんとジェイクさんにだけ熱視線を送っていた先代長さんがニヤリと笑って頷いた。

これで漸く本当の意味で第1試練をクリア出来たって事で良いんだよな?

流石にもう1問なんて無いよな!?


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