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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 1 章 体験版編
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49,跳ねかえる巨大クロッグ 6匹目


 昔、ルグ達の故郷から盗まれたとても危険な魔導書。

その魔導書の回収の為にグリーンス国以外の3国が既に動いていると、苦虫を噛み潰した様な顔でユマさんは言う。


「他の3国が魔道書の回収の為に既に動いてるって、もしかしなくてもバトラーさん達が?」

「うん。

今日クロッグの依頼が来たのに、この短時間であの紙の束の情報が手に入るのは可笑しいよ。

元々調べていなきゃ無理な情報量だよ」

「つまり、クロッグの依頼が起きる前からあの人達はエスメラルダ研究所を調べていた事になる。


そして、バトラーさんはマリブサーフ列島国、ロアさんはチボリ国、マキリさんはヒヅル国の人だ。


一部の奴しか知らない魔道書の存在を知っていて、魔道書を盗まれた国の人が盗まれた魔道書とその魔道書によって作られた魔法道具がある研究所を調べてたんだ。

理由は1つだろ?」


それに、バトラーさんは、


『年齢のせいで最近、研究所を辞めた職員から話が聞けたんだ。

最初は話すのを渋っていたけど、今回の事件が起きた事で話してくれたよ』


って言ってたな。

て事は、この事件が起きる前からバトラーさん達はその職員の人に話を聞きに行っていた事になる。

それも、バトラーさん達が他の事件を追っていてこのクロッグの事件にぶつかった可能性を高めてるよな?

本当に魔道書を追っていたかどうかは兎も角。


「なるほどね。

旅をして出会った仲間なんかじゃなく、魔道書の事件を追う各国の代表の集まりだから、バトラーさん達を見た時違和感を感じたのか」


じゃなきゃ、継ぎ足しても居ないのに飲んだはずのお茶が全く減っていないのは可笑しい。

バトラーさんはマキリさんが入れたお茶を飲んだフリをしていた。

もし何らかの毒。

例えば自白剤とかを俺達に飲ませたくてあのお茶に入れていたとして、バトラーさんが飲んだフリをする必要は無い。

マキリさんは別の部屋で4つのティーカップにお茶を入れてから俺達の所に来た。

配ったのもマキリさんだ。

なら、最初からバトラーさん用のお茶には何も入れなければいいんだから。


そしてマキリさん。

マキリさんはバトラーさんとロアさんに触らない様に。

と言うか、ある一定上近づこうとしていなかった様に思う。

特に気になったのはバトラーさんに紙の束を渡す時。

態々机に置かず、そのまま手渡せば良いと思うんだ。

その方が楽と言うか、特に意識しなければ俺だったら手渡していると思う。

だからだろうか?

あのマキリさんの動きが不自然に思えたんだ。

いや、マキリさんが潔癖症だったり男性恐怖症だったり、人に触れるのを嫌う人だって言う可能性も無い訳じゃないけど。


ロアさんは良く分からなかったけど、俺達に比べやけにバトラーさんとマキリさんから離れている様に思えた。

後、あの値踏みする様な目と、戦っている時のルグの様な雰囲気。

今日会ったばかりの俺達は兎も角、仲間のバトラーさんやマキリさんにも時々向けていた様な気がする。


思い返すとバトラーさん達の行動は互いに警戒しあっている様な、本当に信用出来る仲間同士ならしない筈の行動ばかりだ。

いや、そう言えばバトラーさんは『世界中を旅して出会った最高の仲間』とは言ったけど、一言も『信用できる仲間』とも『信頼できる仲間』とも言ってないんだよな。


「けど、そこまで心配しなくて良いと思うよ。

俺はグリーンス国も動いてるて言うか、グリーンス国の誰かがバトラーさん達と一緒に行動していると思うんだ」

「え?」

「なんでそう思うんだよ、サトウ」

「2人共覚えてない?

バトラーさんのパーティーにはあの場所に居ないもう1人が居る。

そしてバトラーさんは『僕のパーティーには同じ国の人は1人づつしかいない』って言っていたんだ」


マリブサーフ列島国、チボリ国、ヒヅル国以外の国はアンジュ大陸国の5国とここ、ローズ国だ。

バトラーさん達が一応冒険者としてクロッグの事件に関わっている以上、自分達の行動が記録される依頼書をバトラーさん達も持っている。

それに今までも冒険者として活動していたのなら、ギルドに行けばバトラーさんの仲間が何人か直ぐ分かるはずだ。


バトラーさんがあの場で『今いない3人とは出身国の違う、もう1人の仲間』なんて直ぐバレル様な。

そもそも言う意味が無い嘘を吐く必要は無いだろう。

だからあの場にいない『もう1人の仲間』は本当に居るはずだ。


「追ってる事件の内容から考えてローズ国は除外できる。

もしローズ国の人がパーティーに居たら、おっさんにバトラーさん達の目的がバレルかも知れないからな」


よっぽどの事が無い限り、誰にでも自国愛ってのはあると思う。


それが他の国がどうなっても良いから自分達の国だけは良くしたいって形であっても。


そんな時、その魔道書があれば他の国への良い脅しになるだろし、使い方によっては他国を支配できる。

それで、この魔道書盗難事件を起こしたのは十中八九このローズ国。

魔道書の事件はルグとユマさんの話からかなり重要で機密性の高い事件だと思えた。


「だから少しでも疑わしいローズ国の人は避けたいと思うんだよな。

で、集まったメンバーを考えるにあの場に居なかった最後の1人はグリース国の人の可能性が高いと思うんだ」

「「あぁ!!」」


魔道書の話のせいで2人の頭の中かすっかり、『まだ見ぬもう1人の仲間』の存在が消えていたらしい。


「とりあえず、オレ親父に確認てくる!!

オレだけじゃなく、ユマも何も聞かされて無いなら、もしかしたら、魔道書の事件の方にはオレ達は関わらない方が良いかもしれないし」

「うん、分かった。

じゃあ、その間、私とサトウ君でクロッグの方の準備してるね」

「よろしくな、ユマ、サトウ」

「あぁ、任せとけ」


そう言うとルグは軍服を着ていたら瞬間移動していただろうって勢いで、屋敷に向かって走っていった。


「それにしても、『Dr.ネイビー』に、そのDr.ネイビーが取り戻したかった『ラディッシュ』・・・

『濃紺』に『二十日大根』・・・か。

やけに兄さん達を連想させる名前だな」

「兄さん達?サトウ君のお兄さん?」

「そう」


佐藤 大助と佐藤 紺之助。

今は離れて暮らしている2人の兄達。

双子だからなのか何処に行っても一緒で、2人一緒に東京の同じ大学を受けて、2人共無事に今年で2年目だ。

小さい頃は


『貴弥がキビなら兄ちゃん達は2人合わせてダイコンな!!』


なんって言ってたっけ。

だからと言って2人一緒でも『天才』には成らないよ、兄さん達。


「おーい、サトウ君。戻ってきてー」

「・・・・・・・・・ごめん、ユマさん。

思い出に浸り過ぎたよ」


いけない、いけない。

今は巨大クロッグの依頼の準備をしないといけないんだ。

思い出に浸ってる場合じゃない。

確りしないと!!!


「さて、準備だけど・・・・・・・・・

巨大化してるけどクロッグが相手なら大量の無音石が必要だよな」


予想していた様な火とか毒とか吐いてくるよりは、大きくなり過ぎているだけマシなんだろう。

とりあえず、無音石があれば何とかなるだろうし。


「サトウ君、私『無音』の魔法使えるよ?」

「でも、ユマさんの魔法だと魔法陣の上に乗った人にだけ効果がある感じだよね?」

「うん」


それだと少し不便がある。

まず、魔法陣を書くまでのロスタイム。

そして、書いた魔法陣の上に乗らなくては効果が無い事。

依頼書の内容からして他の冒険者はクロッグをどうにかするのを優先させそうだし、俺達は逃げ遅れた住人の避難を優先させようと思う。


何より、今でもドンドンクロッグが溢れているなら限が無い。

住人を助けるなら、ユマさんに一々魔法陣を書いてもらわないといけないし、クロッグの音を聞いて固まった逃げ遅れた住人を助ける時も魔法陣の中に入って待ってて貰わないといけない。

無音石と言う便利な物があるんだから、逃げ遅れた住人を助ける時は無音石を持たせて街の外の安全地帯まで逃げて貰った方が楽だろう。


それに、魔方陣を書く時のロスタイムと言うデメリットを差し引いても有り余る程、ユマさんが覚えている魔法の種類と威力は凄い物だ。

だから、クロッグの攻撃は無音石でどうにかして、ユマさんにはいざと言う時に他の魔法を使って貰った方が良い。


「何より、今回の事件を解決するにはユマさんが重要になると俺は思っているんだ」

「私・・・が?」

「うん。

今回の事件が起きた原因は魔法道具の暴走だろ?

どんなに凄い魔法道具でも『アイテムマスター』のスキルを持つユマさんなら、その魔法道具を止められると思うんだ。

だから、早期解決を目指すなら俺は他の冒険者達と一緒に溢れたクロッグをどうにかして、ユマさんとユマさんに何か遭った時の為にルグは魔法道具の方をどうにかしに行って貰いたいと思ってる」


俺が居たら足手まといになってしまうかもしれないけど、ルグとユマさん。

2人ならこの国に居る冒険者の中で誰よりも、暴走した魔法道具をどうにか出来ると思う。

年下の2人に1番重要な事を任せないといけないのは悔しいけど。


「分かった。

魔法道具の事なら私にドーンと任せてよ!!

作戦としては、私とルグ君で暴走した魔法道具を止めて、これ以上巨大クロッグが産まれない様にする。

その間、サトウ君は住人の避難を優先して、体力を温存する為にもクロッグの戦闘は極力さける。

で、上手く止められたら合流して街に溢れたクロッグの駆除していく。

これでいいよね?」

「うん。何と言うか、流石ユマさん。頼もしいよ」


真っ直ぐな目でそう言うユマさんは本当に頼もしかった。


「と、言う事で無音石を買いに行こうか」

「うん!

えーと、それで無音石ってこの国の何処で売ってるの?

雑貨屋工房?」

「地下水道の入り口近くに在る、魔法道具屋って所なら売ってるよ。

俺もそこで買ったんだ。

確か、レンタルもしてたな」


そう言って俺は胸にぶら下げた無音石を見せた。


「借りれるのか~・・・・・・

借りるよりは買った方が良いよね?」

「そう・・・だね。

多分返って来ないだろうし、壊れる率の方が高いし。

前金で足りると良いんだけど・・・・・・」

「その前に、速く行かないと売り切れちゃうよ?」

「それもそうだな」


他の冒険者達に買い占められてるかも知れない。

そのユマさんの言葉を聞いて、この依頼を国中の冒険者が受けている事を思い出し、俺達急いで店に向かった。


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