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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第2章 マリブサーフ列島国編
496/498

264,黒い試練 4回戦目


「それにしても、意外と詳しく予言の事について教えてくれるんですね。

思わず言ってしまったニャニャさんの事は置いておいて、本来は完全にドラク族だけの秘密の事だと思っていましたから意外です」

「『緑の勇者』とその仲間候補だからよ。

『緑の勇者』候補達には私達の知ってる予言の事は言って良いの。

それ以外の人達の前でベラベラ喋るのはご法度だけどね」

「え?そうなんですか?

でもニャニャさんは先程『詳しい事は試練をクリアした後に』って言ってましたよ?」

「単純にロシィがシッカリ覚える気が無いだけよ。

昔からそう。

確認の為に誰かが予言の事聞くとあぁ言って覚えてないの誤魔化そうとすのよ。

詳しい事は長様達に聞けって。

予言は掟にも関わるって言うのに・・・」

「・・・ピュー、ピュー」


そう言いつつニャニャさんのお母さんがニャニャさんをジトーと見つめる。

きっとその母親の視線に込められた意味にニャニャさんも気づいているんだろうな。

冷や汗を浮かべ視線を反らし口笛を吹いた。

そんな事しても誤魔化されないと思いますよ、ニャニャさん。

現に真後ろのお母さんの圧が話す度に強くなっている。


「あの、お取込み中すみません。

1つ聞きたいんですが、『私達の知ってる予言の事は』って事は、ニャニャさん達も知らされてない予言が有るって事でしょうか?」

「え?」


と言ってもまた親子喧嘩に発展して聞くタイミングを逃しても困る。

そう思って尋ねるとニャニャさん達は親子そろってそっくりなキョトン顔を浮かべた。


あれ?

こんな表情をするって事は、ニャニャさんのお母さんはそう言う意味で言ったんじゃないのか?


『予言の事は』だけなら試練の事やその答えを言っちゃいけないって意味に取れるけど、『私達が知ってる予言』と態々言うんだからそう言う意味で言ったんだと思ったんだけど・・・・・・

俺の考え過ぎだったか?


「え?

そんな話、聞いた事無いけど・・・・・・

母ちゃんは?」

「無いわよ。多分、無い、はず・・・」

「無いはずって事は心当たりがあるんですか?」

「・・・・・・こんな事思う事態失礼だと思うんだけどねぇ?

予言の事は赤ん坊の頃から繰り返し繰り返し長様に語って貰って覚えるの。

だから態と長様達が語って下さらなかった予言が存在してい居ても可笑しくないわ。

『お前達の知っている予言の事だけなら何時か現れる『緑の勇者』候補達にも語って良い』って教えてくれたのも長様だもの」


長様が私達に隠し事するとは思えないけど。

とニャニャさんのお母さんは顔を顰めるけど、十中八九長一族の人達しか知らない予言(コラル・リーフの遺言)が存在してるだろう。

『候補達にも』って事は、隠された予言は候補者や一般の部族の人達。

つまり長一族(メッセンジャー)以外の他人には聞かせられない本物の『緑の勇者』個人に宛てた手紙の様な物なのかな?

実はコラル・リーフと本物の『緑の勇者』は知り合いで、元の世界に居た頃はかなり親しい関係だったとかで色々個人的なメッセージを残してる、とか?

流石にそこまでは考え過ぎだけど、本物の『緑の勇者』にしか聞かせられない予言(メッセージ)が残されてるのは間違いない。

いや、『悪魔の考古学者』と『カラドリウスの医者』の事もピンポイントで伝わってるならその何方か宛かもしれないけど。


「するとは思えないけど、ねぇ。あの時のあの子の態度を思い出すと隠されてる予言がある気がするのよ」

「あの子?」

「親友よ。

若様、今の長様に嫁いだ幼馴染。

子供が生まれた時、そんな事言ってたのよ、あの子。

『この子も皆が知らない真実を背負わせなきゃいけない』って」


その時ニャニャさんのお母さんはマタニティーブルーに陥った親友さんが次期長候補として生まれた子供の未来を憂いてそう嘆いたと思ったそうだ。

マリブサーフ列島国の王様達との会談とか一般のドラク族の人達が知らない、ただ予言を守って狩りをして生きるだけじゃすまない生き方と責任について言ってると思っていた。

でも今の俺の疑問を聞いて思い返すと、本当は長一族の人達しか知らない隠された予言の事について言ってたんじゃないかと思ったそうだ。

その予言がとても残酷で、だからあの時あそこまで嘆いていた。


「もしそれが本当だったら、あの子に随分無責任な事言ってしまったわ・・・・・・」


ニャニャさんのお母さんはよっぽどその親友さんの事も大切に思っているんだろう。

それこそちょっとした会話から直ぐにその事に思い至る位、何でも無い筈の日常会話の中のちょっとした違和感を何年も覚えてる位。

それが今日会ったばかりの他人でも分かる位、ニャニャさんのお母さんは悔しそうに唇を噛んで落ち込んでしまった。

そんな今まで知らなかった母親の姿にニャニャさんが目玉が零れそうな程目を見開いて固まってる。


「ヨシッ!!!

帰ったらあの子を問いただしましょう!

それが掟だとしても私達の間に隠し事が有るなんて納得出来ないもの!」


うわぁ、切り替え速いなぁ。

自分のちょっとした疑問からここまで落ち込ませてしまった罪悪感からどうにか声を掛けようと悩んでいた少しの間。

その数秒に満たないほんの少しの時間が過ぎただけでニャニャさんのお母さんは自力で持ち直した様だ。

その惚れ惚れする程の切り替えの早さに俺は魚の様に数回口を小さくパクパク動かしてただ閉じる事しか出来なかった。


「何と言うか・・・・・・

ニャニャさんってお母さん似なんだね」

「そうだね」

「そうかぁ?

何方かと言うと見た目は父ちゃんに似てるって言われるぞ?」


見た目は兎も角、性格はお母さん似だと思いますよ、ニャニャさん。

自分達に必要だって思ったら簡単に掟を破る選択が出来る所とか特に。

そう思った言葉を飲み込んで首を傾げるニャニャさんに俺とマシロは曖昧な笑みで答えた。


「まぁ、兎に角!

何にしても勇者候補君達は試練をクリアするのが先決ね。

クリアしなきゃ知りたい事を知る事も欲しい物を手に入れる事も出来ないんだから」

「それもそうですね」

「あっ。

そう言えばこいつ等1つ試練クリアしてるんだった」

「え!!!?」


何時の間に!?

何時の間に俺達は試練を与えられて、何時の間にクリアしてたんだ!?

そう一斉にニャニャさんの方を見ると、ニャニャさんは何でも無い事の様に答えてくれた。


「順番が前後しちまったけど、ラルーガンの実を見つけて持ってくるのも試練の1つなんだよ」

「あ、だからですか。

だからお二人ともラルーガンの実を見せてくれって言ったんですか」

「そう言う事。

アレは間違いなく本物のラルーガンの実だったから試練の1つはクリアよ」


そう言って不敵な笑みを浮かべて頷くニャニャさん親子。

どうやら俺達は行く順番を間違っていたらしい。


「そう言う事なら最初から言って下さいよ、ニャニャさん」

「悪い、悪い。

まさか村に来る前に本当にラルーガンの実を見つけてくるとは思わなかったからな。

てっきり間違った実を採って来て試練って流れになると思ってたから別にあの時言う必要無いと思ってたんだ」

「そんなに失敗すると思ってたんですか?」

「今までの『緑の勇者』候補の誰も自力で見つけられなかったって話だからな。

見つけられた奴もオレ達の祖先がヒントを出しに出して見つけられたって聞いてるし」

「他にも・・・・・・

もしかしてラルーガンの実を見つけたのはDr.ネイビーですか?」

「いや、違う。見つけたのは・・・」

「『佐藤 貴美』。

約1000年前に現れた『佐藤 貴美』とその相棒のスティンガー・ブラウンだよね?」


ニャニャさんの話だと現長のお眼鏡にかない、ラルーガンの実を見つける試練や黒いドラゴと戦う試練を含めた3つの試練をクリアしないと『緑の勇者』とは認められないらしい。

つまり、面接と3つの実地試験に合格しないとフェニックスの巣にも『火の実』の所にもいけない訳で、だから2回に分けてだろうけど間違いなく合格しているだろうDr.ネイビーが他にラルーガンの実を見つけた人だと思ったんだ。

けどハッキリニャニャさんに違うと言われた。

予言や掟をシッカリ覚えてないニャニャさんでも知ってるって事は、間違いなくその人はDr.ネイビーじゃない。

なら誰かって思ってたら、シュガーさんが聖女キビとステンガー・ブラウンが見つけたんじゃないかと確信めいた顔で聞いて来た。

どうやらそれは正解だったらしい。


「そうそう。その2人組。

1000年位前にも『サトウ キビ』って名前の奴が現れてかなり良い所までいったらしいんだよ。

結局本物の『緑の勇者』じゃ無かったけど」

「それは・・・・・・

本当の意味で最終試練をクリア出来なかったから?」

「よく知ってるな。

そんな事まで本土の方で調べられるのか?」

「・・・・・・聖女キビの・・・話が残ってるの。

世間には知られてない、この世界でやってきた事全部」

「へぇ。

もしかしてアンタ、1000年前の『サトウ キビ』の子孫なのか?」

「・・・・・・・・・そんなもんかな?」


聖女キビのホムンクルスの1人として、シュガーさんは何処まで聖女キビ(オリジナル)の事を知ってるんだろうか?

ニャニャさんと話してる間浮かべられた色んな感情を押し殺した能面の様な顔を見るに、きっとかなり深い所まで知っているはず。

もしかしたら・・・・・・


「さぁ、話はそこまで!

続きは長様と会ってからにしてね」


そのニャニャさんのお母さんの言葉に顔を上げれば、木々の奥にドラク族の村が見えていた。


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