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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第2章 マリブサーフ列島国編
481/498

249,ラルーガンと島ワタリ 6株目


「と言う事で!それぞれの成果を発表するぞ。

まずはサトー君達の方から」

「はい」


その日の夜。

宿屋に戻って一息ついて暫くたった後そうザラさんが話を進めた。


「まず、今年ラルーガンの実が何処に生えるか判明しました」

「本当か!?」

「と言うか、『今年』ってどうい事だ?」

「ラルーガンは約10年に1度しか花を咲かせないんです。

それもその10年間1度も病気や怪我をしなかった個体しか花を咲かせず、また受粉を助けてくれるエビの関係で受粉率も低い」


純粋に驚くザラさんとは正反に怪訝そうに眉を寄せたクエイさんがそう尋ねる。

あの後時間ギリギリまで調べまくり、通信鏡越しに父さんや兄さん達の知恵を借り議論を重ねた結果。


俺の予想通りラルーガンが10年に1度しか花や実を付けない事が分かった。


その上どの個体も10年に1度花を咲かせる訳じゃ無い。

ラルーガンが花を咲かせるにはかなりのエネルギーが必要な様で、病気になってたりケルピーのエサとして途中で草を刈られたりすると健康な新しい葉を生やすのにエネルギーを割かれて花を咲かせる余裕がなくなってしまうそうだ。

だからケルピー牧場では1度もラルーガンの花や実を見た事が無かったんだな。


そして花を無事咲かせても昔の様に必ず受粉出来るとは限らない。


何せその受粉を主に助けてくれる天敵から身を隠す為にラルーガンに住んでるエビはとても美味しいんだ。

あの塩焼きそばに入ってた事からも分かる様に、その美味しさから需要が高まって漁師さん達に狩り尽くされてしまっている。

流石に絶滅寸前って事は無いけどケルピーを利用してる事も相まって人の多い場所のラルーガンの受粉率を大幅に下げてるのは確かだ。


だから今現在ラルーガンの花や実の存在が人々から忘れ去られてしまった。


・・・・・・これも黒幕達の作戦の内とかそう言う事は考えたくない。


「と言う事で現在ラルーガンが安全に花を咲かせ実を付けれるのは人が殆どよりつかない島周辺だけなんです」

「それなのに今年無事10年目を迎えたラルーガンが生える場所が分かったのか?

誰かから聞いたならそいつがラルーガンを傷つけてるかもしれないだろう?

本当に今年その場所に実が生るのか?」

「あ、いえ。人から聞いたんじゃ無いんです。

その年ラルーガンが実を付ける場所は島ワタリ達が教えてくれるんです」

「島ワタリが?」


本当にその場所にラルーガンの実があるのか不安そうに聞くピコンさんに俺はそう言って首を横に振った。


卵白の中のヒヨコの元になる胚盤を雑菌から守る成分の元にラルーガンの実にしか含まれてないナニカが使われていて、孵った後のヒヨコにも免疫力を上げる為にラルーガンの実を与えてる。


そう言う理由で島ワタリ達は卵や雛を無事産み育てる為にラルーガンの実を必要としていて、だから島ワタリ達は本能的にラルーガンの実が生る場所が分かるらしい。

勿論エビと同じ様にラルーガンと島ワタリも共生関係にあるんだ。

子供達の為にラルーガンの実が生る所に巣を毎年作るから、その場所に自分達のエサになる様な物があるか分からない。

だから親鳥達は自分達の為に他の島にエサを捕りに行く訳で、その時フンと一緒にラルーガンの種が落ちるからラルーガンは生息範囲を広められるんだ。


「現在島ワタリ達が巣を作ってるのはアルバ島の東側の沖合に在る小島だそうです。

明日はそこに向かいたいんですが・・・・・・」

「それなら何の問題もなく明日もまた別行動で大丈夫だね」

「明日も?そちらの方では何が分かったんですか?」

「実は・・・

ラルーガンの実がマリブパイン島のカジノの景品にされてるらしいんだ」

「え!?カジノ!!?何でまた・・・・・・」


理解出来ないと目を白黒させる俺にジェイクさんが苦笑いで教えてくれる。

どうも数年前偶然花や実を付けたラルーガンを見つけた人が居たらしい。

その人はギャンブルで負った借金の代わりにそれを渡した様で、魔法道具を使って今もそれは保存されている様だ。

そしてそれが見た事ない珍しい物だからって理由で流れ流れて今はマリブパイン島最大のカジノのVIP専用のゲームの景品にされているらしい。


「そこ、年齢制限も有ってね?

マシロ達3人はどう誤魔化しても入れそうに無いんだよ」

「だからまた二手にって事ですか」

「うん」


ラルーガンの花と実が景品にされてるカジノは格式高い老舗のカジノでもあるらしく、『レジスタンス』に協力してくれてるマリブサーフ列島国の王族の人達の協力が有っても俺とルグ、マシロは入る事が出来ないそうだ。

ゲームに一切参加せず高貴な身分の人に使える超優秀な専属の使用人の1人と言う感じでギリギリ更に大人びた感じに変装したピコンさんが入れるって言うんだから絶対俺達は無理だろう。

と言う事でそっちは大人組に任せるしかない。

任せるしかないけど、態々カジノに行く必要あるか?


「態々破産する可能性のあるカジノに行かなくても・・・・・・

全員でアルバ島の方に行きませんか?」

「そうしたいのは山々なんだけどね?

協力者達からの依頼もあるからついでにそっちも取って来ようと思って」

「協力・・・詳しく聞かない方が良い話ですか?」

「いや、大丈夫。寧ろこっちがメインまであるな」


そう言ってついでだと言ったジェイクさんの言葉に真剣な表情を浮かべたピコンさんが続く。


どうも最近、件の黒髪の男や英勇宗信者がそのカジノに良く入り浸ってる様なんだ。


狙いは同じくVIPルームの景品にされてるあるアイテム。

アイテムに関しては高橋の刀の様な伝説上のスッゴイ武器って事以外詳しくは言えないけど、もしソレが本物ならソレを黒髪の男や魔女達側が手に入れると非常に厄介な事になる。

だから先にクエイさん達が手に入れる事で邪魔して、更に出来る事なら黒髪の男を捕まえる様クエイさん達はアルさん経由で依頼されたらしい。


俺達は黒髪の男の方には基本関わらないって最初の指示がこうも簡単に覆される位、今回とんでもなく厄介な事が起きてるって事だよな。


これ、本当に二手に分かれて。

俺達3人も手伝わなくて、本当に大丈夫なのか?

そう一瞬思ったけどその考えはジェイクさん達4人の表情とその奥の鋭く真剣な目を見て直ぐに消え去った。

どうやら逆に俺達は関わらない方が良いらしい。

やっぱりカジノって言うちょっと教育上あまりよろしくない場所にマシロを関わらせたくないのかな?

船での賭け事から1番遠ざけられてたのもマシロだったし。


「なるほど。

武器の入手を邪魔できれば相手の戦力を削れますし、そこまで大金つぎ込んでまで手に入れようとしてるならいいエサにもなりますね。

確かにそう言う事なら二手に分かれるしかないですね」

「別にそこまでハッキリ分かれなくても良いんじゃないかな?

正面から入れなくても私達も何か手伝えるかもしれないし、一緒にマリブパイン島の方行ってその後アルバ島に行くんじゃダメなの?」

「それは・・・・・・」

「何ならオイラが裏からコッソリ盗んでこようか?

良く出来た偽物と入れ替える感じでさ。

その方が確実に手に入るだろう?」

「あっ!

その前にこの国の王様が命令して回収すればいいんじゃないかな?

何なら私からもコロナちゃんにどうにか出来ないか聞いてみるよ?」

「エド、マシロ。

それが出来ない事情があるから海外から来たクエイさん達に『敢えて』依頼してるんだと思うよ。

セキュリティの問題とか、秘密裏に事を運びたいとか、ローズ姫側に着いてる王族や貴族関係者へのアレコレとか」


手っ取り早く確実に目的を果たせる方法を何故取らないのか?

そう言う顔にデカデカと書いたルグとマシロに俺は事情があるんだろうと言ってチラリとジェイクさん達の方を見た。

その誤魔化してそうな無言の笑顔的に、何か事情があるのは間違いないだろう。

もしかしたらルグやマシロが言ったような方法を実行する班も居て、クエイさん達は囮兼他の作戦が失敗した時の保険要員なのかもしれない。


取り敢えず、ジェイクさんがこの作戦に間違いなく俺達を。

いや、マシロを関わらせたくないと思ってるのはその視線と態度から更に良く分かった。


俺の予想通り教育上よろしくない場所に行かせたくないってのもあるだろうけど、多分1番の理由は違う。

それが何か分からないけど、その表情や雰囲気的に1番の深い理由はもっと別にあるはずだ。

もしかしたらその武器にディアプリズムが残酷な方法で使われていて、武器事態にマシロを関わらせたくないのかもしれない。

そう考えるとルグとマシロの意見に圧し負けて下手にその作戦に参加するとも言えないんだよなぁ。

ここは大人しくアルバ島に行く様2人を説得しよう。


「うーん・・・うん。

やっぱり俺達はアルバ島の方に行こう?

アルバ島の方は野生に生えてる物だから何時まで生えててくれるか分からないし、島ワタリ達もバクバク食べてる訳だし。

またダグブランの様になっても嫌だし、両方出来るだけ早く行った方が良いと思うんだ。

それに次の国に着いたら直ぐにナト達を連れ帰れるかもしれないんだよ?

ナト達が遠くに行き過ぎる前にフェニックスの苔も集めなきゃ」

「確かにそう考えるとそんなに時間が無いのかぁ。

だったらオイラ達はアルバ島に行くべき?」

「だと俺は思うけど・・・・・・

マシロもそれでいい?」

「そう言う事なら・・・・・・」


意外と時間がそんなに無いと説得すれば少し渋々と言った感じでルグとマシロも納得してくれた。

それに視界の端で軽くホッとジェイクさんが息を吐いたのは気のせいじゃ無いだろう。

そんな感じで無事明日の予定が決まった俺達は夕飯に向かった。


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